リアル乙女ゲームは、悪役さえも付いていない、ただの令嬢だった。~40オーバーおばさんの乙女ゲーム初デビュー~

ノベルバユーザー417511

アンリ編2

 アンリが帰ってから、ほっとするのもつかの間、毎日アンリが遊びに来るようになる。流石の桜も、二週間も続くと、お疲れMAXになり、
懐いてくれるのは、嬉しいんだよ。嬉しいけどさ、流石におばちゃん、くたびれて来ちまったよ.....
心の声が出そうになってしまう。

突如、バンっと扉が開くと、
「リズっ、来たわよっ!」
最近は、呼び捨てにするどころか、勝手に部屋に入って来る。
「アンリ様、いらっしゃい.....」疲れが顔に出ているのか
「リズ、どうしたの?目の下にクマが出来てるわよ?」無邪気なアンリは疲れ知らずな小学生のようだ。桜はこの状況をなんとかせねば、と思い
「アンリ様、あまりこちらに通われますと、ランバード王子も焼きもちを焼かれるのではないですか?」
「ランバード?そうだった。婚約してるんだものね」あれっ?大好きじゃ無かったの?
「それより、リズっ」軽く話しを流される。桜も必死だ。もういっそ、アンリをランバードに押し付けたい....そして、二人ラブラブになってくれ。ソフィは他の王子ルートもあるんだから、誰でもいいだろ。なかばやけくそである。

「リズ、もしかしてランバード王子が好きなの?」
何でそうなる?と思っていると、久しぶりに選択肢が現れる。ここ重要なの?
A.私も好きなのと答える。B.何も答えない。
桜はCくれよ。好きじゃないって選択肢を出せよ~。と暴言を呟く。もう知~らね。と、Bを選択する。
するとアンリが
「何も答えないって事は....まさかっ」
ねっそうなるよね。普通。
「私が、ランバード王子とライバルな訳ね....」
え~、どういう事~。桜が驚いて
「違いますわよ」好きじゃないと言いたいのに、制御がかかっているようで、否定をさせてくれない。
「いいのよ。リズ。何も言わないで。これはランバード王子と私の戦いなのだから」
どんなルート入ったん?よく分からないが、死ななかっただけ良しとしよう。それからというもの、アンリはリズにベッタリと引っ付き離れようとしない。
これはこれで大変困ります。やっぱり、ランバードと引っ付いて貰おう。目ぼしいイベントないんかい。と思っていると、
「そうだわ。明日また私の屋敷でお茶会を開くの。私はお茶会より、リズといるほうがいいのだけど。お父様がうるさいのよ。ランバード王子とはどうなっているのかって」
「そ、そうですわよ。やっぱり大好きなランバード王子と仲良くする方がいいですわよ?」
「えっ、嫌よ。ランバード王子なんて私の事、大切になんてしてくれないもの。だから、リズあんなやつ好きになってもしょうがないわよ」まだ勘違いしたままだ。

でも分かってきたぞ。ランバードはアンリを放置してるんだな。もとはと言えば全部ランバードが悪いんじゃないかっ!桜はだんだんと腹がたってくる。お茶会なんて、面倒だから行きたくなかったけど、背に腹は変えられない。なんとかしなければ、このまま百合ルートに入ってしまう!

「アンリ様のお父様も心配なさいますわよ。それにランバード王子だって、これから、アンリ様の事大切にされるかもしれませんよ?今のアンリ様はとても、可愛いらしいですもの」
「本当っ?嬉しい。リズが可愛いなんて言ってくれるなんて」おい、おい、その言葉だけ拾わないでくれよ。
「ええ....」桜はひきつりながら笑う。アンリは気分を良くしたのか、
「明日お茶会ですものね。今日は早目に帰るわ。リズの好きなお菓子とお茶用意しなくちゃっ。明日は迎えに来るわ」
「だ、大丈夫ですわよ。明日、必ず伺いますから」
「絶対よっ」と言うとウキウキしながら帰っていった。アンリが帰るのを確認すると、どっと疲れが襲う。メアリが心配そうに、部屋へやってくる。
「リズお嬢様、大丈夫ですか?」
「うん。なんとかね。メアリにも迷惑かけたね。毎日大変だったでしょう?」
「いいえ、私なんかより、お嬢様が心配で。アンリ様リズお嬢様に心酔なさってるようですから」
「あの年頃の子はね、よくあるのよ。付き合ってる男も未熟だから、優しくしてくれる人を盲目的に好きになっちゃうのよ。それが私だっただけなんだけどね」
「まあ、お嬢様も同じくらいの年頃なのに、よくお分かりで」
「ま、まあね...勘よ。勘。それより明日お茶会だから、メアリ用意をしておいて」
「かしこまりました」と言うとメアリがワインとつまみを置いて、部屋から出ていく。
「メアリ、私はあんたと結婚したいよ.....」桜はつまみ片手にワインを飲み始める。精神的疲労もあってなのか、今日は酒がまわるのが早い。
「でへ、でへへ、何がなんプリだよっ」と愚痴をこぼしながら、ワインを一本空けると、
「もう、飲めね~っ」と言って、ベッドに潜り込む。桜は秒速で、いびきをかきながら、眠りに落ちた。

桜は、眠りから、目を覚ます。
「あ~、良く寝た~スッキリしたっ.....んっ?」窓の外を見ると、太陽が眩しいくらい、照っている。
「この、スッキリとした感覚、経験上、間違いなく寝坊だ。やばっ、今何時なの?アンリが乗り込んで来るわっ」メアリが部屋へ来る。
「ちょっと~、メアリ、何で起こしてくれないのよっ」
「リズお嬢様は、連日お疲れでしたので、少しくらいお茶会に遅れましても平気です。と判断いたしました」
「メアリって、怖いくらい優秀よね」
桜は急いで支度を始めると、5分もかからず支度が終わる。
「さっ、メアリ急ぐわよ。これ以上遅れると、アンリ様が暴走しても困るからね」と言うと、リズとメアリは、馬車に乗り込みアンリの館へ向かうのだった。

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