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自称前世の夫が急に現れて求婚してくるのでどうにかしてください

アカイリツ

14:デート日和



「まさか、彼が犯人だなんて思わなかったわ…」
「あぁ、俺もだ。よく出来たシナリオだった」
「お待たせいたしました〜」

注文したトマトパスタとベジタブルピッツァが運ばれ、取り分けたパスタを向かいに座る男へと差し出した。

「はい」
「ありがとう」

いただきますと手を合わせ、先ほどの映画の感想を言い合う。


どうしよう…


………これは紛れもないデートだわ!!!!!


いや、私が要求したのだけれど。
まさかこんな王道的なデートが実現するだなんて誰が想像しただろうか!

休日のカフェは、カップルも多く、私達もその一部と見られているのかもしれない。
…恋人のデートと、見られて…
待って、そもそもデートなんてもの自体が久しぶりだ。
デートってなにするんだっけ…?

何かお手本になるものがいないかと辺りを見渡すと、明らかにカップルですと言った男女が近くにいるではないですか。
けれど聞き耳を立てた瞬間にその事を後悔した。

「はい、まーくん。あーんして❤︎」
「もう、ちよりんはこんなところで恥ずかしいなぁ〜、あ〜ん❤︎」

これはお手本どころか視界にいれるのもちょっとキツいタイプのカップルだ。

「………」
「…?どうかしたか?」
「ううん、…美味しいなって思って」

ダメだ、私にはハードルが高すぎる!!!
っていうか私たち別に恋人じゃないしね!
デートしてるからって恋人とは限らないわけだし!

「そうか?柊の飯の方が美味いな。なんでこんな店が並んでるのかわからん」

おい、隣のカップルの顔引きつりましたよ。

確かに柊さんのご飯は美味しい。
でもあれはもう旅館やホテルで出てくるレベルのものであって、雰囲気カフェとして売り出しているカップル向け空間と比べてはいけない。
ここは雰囲気を楽しみ、酔う場所だ。

「ま、まーくん、何かデザート頼もうよぉ❤︎」
「そ、そうだな!3種のベリーパンケーキ・バニラアイス添え、これにしようぜ❤︎」
「流石まーくん!チョイス完璧〜❤︎」

そうそう、そしてイチオシはデザート系。
パンケーキなんて何であんなに並んでまで食べたいのかは分からんが、ここの名物だと言われると食べてみたいという気持ちも湧いてくるものだ。

「何か甘いもの食べたい?」
「甘いものか…二条がここのパンケーキを頼めば女はイチコロだと言っていた。全く、そんなものでころっといく軽い女なんてどこがいいのか。そもそもパンケーキって、ホットケーキと何が違うんだ?」

ちょっと!!
また隣のカップルの会話止まった!!!
お前のせいだよ!

「まあ、お前が食べたいと言うなら俺は特に止めはしない。 食べたいやつを頼、」
「ごちそうさまでした!」
「ありがとうございました〜」

首根っこを掴み外へと飛び出した。





*****





「あんた全国のカップル敵にまわすつもり?」
「なんの事だ?」

女心がまるでわかってなさそうなこの男は、デート経験も少ないだろう。
「今までもそうやって、デート相手困らせてきたわけ?」

こいつならきっと相手を怒らせた最悪な思い出があるのではないか。
そう思って興味本位で聞いてみると、腕を組み記憶を探り出してきた回答は、そんなものはない、だった。

「確かに、お前はいつもあーだーこーだ文句を言ってたな。どれもかわいい文句だったが」
「かわ…!」

不覚にもかわいいに反応してしまったが、違うこれは私ではない、この男の探ってるのは記憶ではなく脳内設定だ。

「そうじゃなくて!私以外にもデートしたことあるでしょう?それを聞いてんの!」
「お前以外と…なんだ、急に、浮気でも疑ってるのか?」

ダメだこいつ。
私とのデート?
今日が初めてです。
浮気?
そもそも付き合ってませんけど…!

「安心しろ、お前を探している間、現世で女とデートした事はない」
「……は?」
「だから、お前以外にデートした女はいない」
「そんなわけないでしょう?何平然と嘘ついてんの?バカにしてんの?」

会社でモテている話は既に聞いている。
あの東雲さんとどうやって仲良くなったの?と隣の部署の人にまで聞かれたんだから。
今までチャンスがなかった?嘘も大概にしろ!

「嘘ついてどうするんだ、世の中の女はお前と比べたらゴミと同じだ」

ゴっ、……
言い方は物凄くアレだが、ここまで言ってくれる男に言い寄られて、不満はない。
けれど、せっかくいい雰囲気のように思えたのに、こいつの脳内設定で全てが台無しだ。

「もう、今日ぐらい普通に出来ないわけ!?」
「普通?」
「折角の初デートなのよ?」
「お前とは何度もデートした」
「だーーからぁ!!それはあんたの頭の中だけだって言ってんでしょ!!」
「お前が覚えていないだけで事実だ。それよりも、お前は俺以外にもデートした事があるような言い振りだな」
「当たり前でしょう!?もういい歳なのよ、デートどころか結婚しようと思った相手だってそれなりにいた、…」
「!!!?」
「え、ちょ、いたっ!痛い!」

腕を引っ張られ振り返ると、これまた不機嫌真っ只中の男が私を見下ろしている。
無駄に背が高いのがまた威圧感をプラスしている。

「記憶がないとは言え、お前には俺を想う気持ちが足りない!」
「ちょっと、叫ばないでようるさいでしょ!」
「俺はこんなにもお前を想っているというのに。そういえば俺のこともどっかのちゃらんぽらん野郎と間違えていたな…」
「だからあれは、」
「……お前は本当に、俺の事なんてどうでも良くなってしまったんだな」
「……っ」

とても悲しそうな顔をするものだから。

胸の奥がギュッと痛むのが、一体どういう意味なのかがまだ分からない。

私が黙ってしまったのを見ると、彼は頭を冷やしてくると言って何処かへ行ってしまった。
さっきまで掴まれていた腕が、なんだか寂しく感じた。





*****






何よ、記憶がなくても責めるつもりはないとか言ってなかったっけ。
あるわけがない、そんな奴の作った設定が私の頭の中に存在するわけがない。

「……馬鹿」

状況はおかしい。
何度もそう思っている。
私は何だかよくわからないものに巻き込まれ、一方的に言い寄られている側だ。
それがどうしてあんな言われをしなければいけないのか。

…なのに。
この何だかよくわからない感情は、何故か彼と話すたびに大きく広がって、いつか私を支配してしまいそうだ。

「こんなところにいたのか」

公園のベンチに体育座りをしていた私に、紙袋が渡された。

「…ベビーカステラ?」
「そこで売ってた。…その、さっきは取り乱してすまなかった」

図体のでかいその男は私に向かって弱々しく声を出した。

「…我慢しなければならないのは分かっている。分かってはいるんだ、だが、蓮子が俺以外の男といるなんて想像するだけで発狂しそうだ」
「……」
「お前の記憶が戻るまでは、俺もきちんと感情をコントロールする術をだな、」
「……」

ああ、なんか少しわかった気がする。

こんなにも好意を伝えてくるのに、素直に頷きたくない理由が。

「…ねぇ、もし私が思い出さなかったらどうするの?」

勿論、全てはこいつの想像上の設定なので私が思い出すわけがない。
でも、思い出さなかったとして、彼が私を前世の妻だという設定から外して見てくれることはあるのだろうか。

「そうだな…そこは特に気にしたことがなかった。どちらでもいい」
「はぁ?あんた、これだけ前世がどうのって言っておいて、」
「そりゃお前との思い出だからな。言いたくて当然だろう。 だが、記憶なんて大した問題じゃない。
 愛してる、蓮子。今も昔も、何も変わらず。記憶がなかろうと、お前もまた俺を愛してくれると信じている」
「……っ」

ああ、もう…!!
不覚にもときめいた胸はついに少しこの感情に名前をつけ始めてしまいそうで。

「帰るわよ、虎!」
「もうデートはいいのか?ディナーにって行きたいところあったんじゃ、……ん?今、名前、」
「私も柊さんのご飯が美味しいって思うから。…ベビーカステラもあるし。パンケーキより好き」
「……ふっ、そうか、じゃあ帰ろう」

伸ばした手は優しく握られ、目が合った事に心が跳ねた。


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