レジット

Noir

ハク

謎の赤い液体が入った水をかけた86は激しい光に包まれたあと、突然光がおさまった。
裕哉が目を開くと、86は消えていて、そこには白いワンピースを着た、胸が大きく、尻まである長い黒髪をした、つり目の高校生ぐらいの女の子が立っていた。
裕哉はキョトンとした。
すると充造が一歩前に出た。
「おぉ、成功だな。これで直すのも大変じゃないぞ!」
そう言って充造は強引に女の子の手を引っ張ってガレージの隣の建物に入って行った。
裕哉も慌てて充造のあとを追った。
建物の中に入ると充造は棚をあさりはじめた。女の子はどこかをぼーっと見つめていた。
「あの…これが俺の86ですか?」
裕哉は女の子を指差して充造にたずねた。
「あぁ、そうだよ。」
充造は棚から白いチューブを取り出した。
そのチューブから白いクリーム状のもをゆびに取って女の子の頬に塗った。
「お嬢ちゃん。これはよく効く薬だ。左頬の腫れはじきに治る。内出血もじきに引いてくるから安心しな」
充造は柔らかな声と表情で女の子に語りかけていた。
裕哉はその光景をただじっと見ているだけだった。
「裕哉。」
充造は表情を一変させた。
「この86(女の子)に名前をつけてやれ」
裕哉は目を見開いた。
「名前ですか?!急に言われても…」
「車の主が名前をつけてやらないとこの子は感情を宿さない。せっかく擬人化したんだから、修理だけでは済ませたくないだろ?」
充造は86の頭を撫でながらそういった。
裕哉は腕を組み、しばらく考えたあと口を開いた。
「ハク…」
すると86は裕哉を不思議そうな目で見つめた。

















つづく

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