採集者の役得

赤猪千兎

発掘者の死闘③

それは六歳の頃、時計の針がお昼を回ったころの話だった。
その時間帯は子供たちのお世話をしていた修道女もお昼の用意に勤しんでおり、子供たちは普段修道院の広場で遊ぶのだが、その日は子供特有の冒険心が最も働いたのだろう、誰が提案したのか「町を抜け出そう」と言い、皆がそれに賛同した。
ローグも共にその集団についていった。その頃のローグは病んでいたからか、同年代と言えど中々心を開かなかった。というよりもどうやって話したらいいのかも分からなかった。
子供たちはうまく修道女たちの監視の目を潜り抜け、冒険心一つで外に駆けだした。
町の外に行くには門番を潜り抜けないといけないのだが、また誰かが言ったのか町を囲む防壁の一辺に子供一人が通れるような穴が開いてると発言し、その子供に従い無事穴から町の外へ行けた。

「やったー!たどり着いたぁ!」

「何して遊ぼうか」

子供たちは話し合った結果、定番の鬼ごっこをすることにした。
じゃんけんで誰が鬼か、誰が逃げたが覚えていないがローグが鬼の役割にあたったということは覚えている。
皆が森や畑に隠れるなか、ローグはしっかりと目隠しして数を数える。そして探し始める。
ローグはセンスがあったのか順調に隠れた子供たちを見つけていった。
そして最後の一人となったのだが、その子の姿は全く見つけることが出来なかった。
記憶が確かなら、その少女は町長の娘でアンリと呼ばれていた。
ローグ以外の子供は帰ったり、野原で遊んだりしていて未だ見つからぬアンリの事に気を向けていなかった。ローグ以外は。
鬼であったローグは、最後まで探していなかった森の奥へ探しに行くことにした。
すると、微かに子供の泣きぐする声が聞こえてくる。その方へ向かうと、そこには恐怖で泣くアンリと、それを襲うと狙っている小型の野犬がいた。

「うえぇぇん、んぐ、うえぇえん!誰か助けてぇ!」

グルグルグルグルッ!
威嚇する野犬に怯え、後ずさりしながら泣いて助けを叫ぶ。
一方ローグはそれを物陰から隠れて見ていた。
ローグは考えた。このまま助けに行ってもきっと野犬に襲われるだけだ。逃げた方が身の安全は保たれる。そもそもアンリが自分に何かしたのか、自分はアンリを助ける義理はあるのか。
子供らしからぬ考えをしたローグの決断は「逃げる」だった。
ローグがアンリからも野犬からも見つからないように後ろへ逃げようと足を運んだその時だった。

「助けてっ!」

野犬がアンリに噛みつこうと突進するのに対し、アンリは最後の助けを叫んだ。
だが、野犬の牙がしっかりと噛みついたのは、ローグの体だった。

「うぐっ!」

庇う形でアンリの前に立ったローグに野犬は容赦なく噛みつく。
痛い、痛い、痛い。
その痛みは予想をはるかに上回ってた。
なぜ、そのまま逃げなかったのか、なぜアリンを助けたのか。それは今となっても分からない。
だが、アリンの叫びが聞こえた刹那。「助けなければ」と確かにそう思った。
そして、ローグはその痛みに耐えきれず気を失った。
話によると、そのあと町の憲兵の方々がローグが気を失った後すぐに助けに来たという。
目が覚めた時ローグはベットの上に寝かされていて、体は包帯で厳重に巻かれていた。意識が戻ったとしると次々にローグのもとに感謝や敬意が示された。
それはローグが初めて感じるものだった。
そして、一番ローグの心を変えたひと言は抱き着いてきたアリンの感謝の言葉だった。

「助けてくれてありがとう。私の『勇者』様!」

人のために何かをする。困っている人を助ける。それは自分に存在価値を証明することだと知った。
ローグはその頃から皆のために動く英雄『勇者』に憧れるのだった。

そう、『勇者』に。



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