採集者の役得

赤猪千兎

採集者の探索②

洞窟の中は、外から入り口を見た感じからは想像も出来ないほど広かった。
案の定、足場はぬかるんでいて視界が暗い。
「そんな時は……」と、バックから道具を取り出した。
これは『魔道具』といい先ほどの『魔剣』とは劣るが魔石を使った道具で、魔力を込めることでその機能が発揮される。
ローグが道具に魔力を込めると同時にその魔道具は淡い光を放った。
この魔道具の効果は込める魔力の量に応じた光量の光を放つもので、この光量から察するにローグの魔力の少なさが分かる。ローグ自身もそれは渋々自覚しているつもりである。
ちなみに魔力は個人差があるがレベルが上がると同時に魔力量も増える。

「モンスターは……見当たらないな。というかまだ奥があるのか……」

慎重に慎重に洞窟攻略を進めるローグは、モンスターが居ないことに対しての安心感と終わりの見えない洞窟の長さに唾をのむ。
しかし、その不安は解決されることになる。恐怖という名の下に。

「な…なんだよ、これは……」

順調に進んでいた足が、その光景を見て唖然として止まった。
それは物語上の存在だと思っていた。実在するとは思っていなかった。
深淵のような黒さの鱗に、飛び出た鋭い大棘、その翼や尻尾は建物を覆う大きさ、泣く子も黙るその顔。
幾度と物語で勇者と対峙し、かの魔王もその強さ故に避けていたといわれているその存在。
その名も『暗黒龍』ドラゴンである。

「なんでこんな所に……でも……」

暗黒龍の様子は明らかに弱っていた。よくよく目を凝らして観察してみるとその鱗も大棘も所々剥がれ落ちていて、翼も尻尾も傷が複数見られそこから紫色の血が出血していた。
相当なダメージを負っているから故、洞窟の最深地の寝床についている。
微かだが獣身を感じさせるいびきをかいている。熟睡している証拠だ。
普通、弱っている姿をみて相当強い腕利き冒険者なら仕留めるチャンスと言って寝首を掻くだろう。だが、ローグはその考えを捨てて抜き足差し足で帰路に向かっていた。
例え寝首を掻いたとしても、そのダメージは暗黒龍からしたらスズメの涙のようなものだろう。

「やばいやばいやばいやばい」

ローグは小声でそう叫びながら急いで洞窟から抜け出そうとしたその時だった。

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