採集者の役得

赤猪千兎

採集者の悲劇①

この世界では、人それぞれ神から受けた『天職』に従い生きている。
例えば、『戦士』の天職に就けば、モンスターを倒せる力を得ることができる。
『歌姫』の天職に就けば、万人を魅了する歌声を出すことが出来る。
『薬師』の天職に就けば、幾千の病を治す薬を作ることが出来る。
このように、様々な天職が世界には存在している。
そんな中、最も強く、最も気高い天職がある。その名も『勇者』。
これまで『勇者』に就いたものは、魔王や災害ランクのモンスターを幾度となく倒し、人類を救ってきた。それは伝説となり、物語として受け継がれてきた。
そして、その『勇者』に憧れた青年がいた。




俺は勇者になりたかった。人々をモンスターから守り、称えられ、伝説となりたかった。
そう、それらは過去の話である。
決して叶う事のない夢の話である。

少年ローグは『勇者』になることを夢見ていた。
物語で幾度と人類を魔の手から救うヒーローとして描かれた『勇者』に対し、尊敬と憧憬の念を抱いていた。
そんな少年も青年となり、成人となる十五歳を迎えていた。
この世界では成人を迎えると同時に神からの啓示『天職』が与えられる。
それはロードが最も待ち遠しにしていたイベントでもあった。

「おい、速く来いよアリン!」

「待ってよロード!」

先頭を走るロードが呼ぶ可愛らしい娘は、この町の長の娘であり、ロードの長馴染みのアリンという少女だ。アリンもロードと同じく成人、十五歳を迎える。
二人が向かっているのは、この町の中心部に建っている教会である。神からの啓示である手前、教会から自らの『天職』を教えてもらうのが道理なのだろう。
神の存在をあまり信じていないロードからして、そのようなことどうでもいいのだが。

「なんだって今日は、俺が神様から『勇者』の天職を授けられる記念すべき旅立ちの日なんだからさ。待ってられないぜ!」

「はいはい。あんたが『勇者』になれる訳ないでしょ!良くても『戦士』か『タイタン』とかでしょ」

「まぁ、見てろって!俺が『勇者』に選ばれる決定的瞬間をさ!」

『タイタン』とは、『戦士』同様モンスターを倒せる力を持ちながらも、攻撃に耐える防御力が高い天職である。天職としては人気の高いものだが、『勇者』にしか目が無いローグに対しては取るに足らない天職であった。
そう、ローグとアリンが会話を交わしながら走っていると、教会に到着した。



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