狂った世界にクルクル廻され

6羽 まろく

名前を貰ったのです

違う。許されてなんかいない。目の前でミーティアを殺されてしまったんだ。仲間を殺されてしまったんだ。早くもどらないと、許されてなんかいないんだから、早く


「お兄さん…どうしたの?なんかへんだよ?紅茶美味しくなかった?」


「ここはどこなんだ?地獄なのか?」


口に出して思ったが、自分が死んでいるという感じは全くしない。いや、死んだことがある訳ではないのでハッキリとは分からないのだが


「えーっとね、その…地獄とか天国とかそういう所とは違うんだよ」


違うというのはこの子は死語の世界を信じているのだろうか


「ここは、私たちの秘密基地みたいなとこなの!お父様とかお姉様とかが遊びにくるんだよ!」


「???…えーと、どういうこと?」


何を言ってるのかさっぱり分からない。


「じゃあお父様に会うことって出来るかな?」


「さっき呼んだからもうすぐ来るとおもうよ?それまでお話しよ?私、二ーファって名前なの、お兄さんは?」


「…分からな…い?」


思い出せない。

なぜ?…今までのことは覚えてる。誰かに呼ばれた記憶はあるし、会話の前後も思い出せるのに、自分の名前だけがノイズが走り出てこない。


「お兄さん名前無いの?私が付けてあげよっか?すっごく良いのおもいついたの!」


「あ、あぁ、お願いするよ」


「リトってどう?呼びやすいし、カッコイイ名前じゃない?どーお?」


『リト』、良いかもしれない。自分の名前が思い出せないのは悲しい事だが、『リト』という名前がすごくすんなり受け入れられる気がした。もしかしたら、本当の名前も『リト』だったのかもしれない。そんな事を考えてるとニーファもこちらを見てニコニコしている。自分の考えた名前に対する評価がいかがなものだったのかソワソワと気になっている様子である。

ところで、この二ーファという女の子、だんだんと言葉遣いが軽くなってきた気がする。初めは緊張してたのか自信がないような感じがしたがそれも無くなってきている。でも、初対面の相手を警戒しないのはどうなのだろうか。


「綺麗だ…何て言うか…凄い嬉しいよ」


「ありがとう!リトなら喜んでくれると思ってたよ!」


ニーファは机に手をついて椅子の上でぴょんぴょんと跳ねて無邪気に喜んでいる。跳ねる度に揺れる熱い紅茶も楽しそうだ。


「ところでなんだけど」


これは聞いていいのか分からず少し躊躇いの気持ちがあるが、ずっと気になっていたことがあったのだ


「何で裸だったの?」


「!」


顔が真っ赤になってしまった。

頭から煙まで出そうなくらい熱そうだ。白い髪と赤い顔で綺麗なコントラストになっている


「そ、それは、あの、その、ですね、いつもは誰もこなくて、最後にお父様がきたのなんて30年まえで、自由だなぁーって、開放的だなぁーって思ってたらその、」


誤魔化すように、二ーファは手元の紅茶を一気に飲むが、淹れたての紅茶で火傷したのか、顔の紅さがましたようにもおもえる。

確かに誰も見てないならしてはいけない事をしたくなる気持ちは分からなくもないが、裸になるのは女の子としてどうなのだろうか、それ以前に…


「ま、まぁ分かるよ、うん、わかるわかる」


「ホントですか?」


舌を火傷したのか恥ずかしさからなのか涙目で訴えかけるようにこちらを見る仕草がとても可愛らしく見える


「ところでいつも他の人はいないの?お父様とかは?」


「お父様達は忙しいのです。偶に会いに来てくれるんですけど、たまにです」


寂しそうな声に反応するように入ってきた扉が開き、白い衣装に身をつつんだ髭の長い老人が姿を表した


「二ーファ!元気だったか?会いたかったぞー!」


「あ!お父さまー!」


「やっほー僕も来たよー」


「カルも来たの?久しぶりだね!」


老人のうしろから薄い緑の髪をした気だるそうな表情の青年が顔を覗かせて手をヒラヒラふっている


「おや?そこの者が訪問者かい、こりゃ色々絡まっておるのぉ〜」


「リトっていうんだよ!私がつけたの!」


家族の会話に水を刺さぬよう「お邪魔してます」軽く会釈をして答える


「二ーファが名前をつけたの?アハハこりゃ更にややこしく絡まるだろうね」


カルと呼ばれた青年は楽しそうに笑っている


「どういうことですか?」


二ーファはキョトンとしてるし、さすがに話についていけず声が漏れてしまった。

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