狂った世界にクルクル廻され

6羽 まろく

全滅しました

人々の世界に天使達がやって来ました。その日が1日目です。そして、天使達と人間はお互いに仲が良くなり、助け合って生きていました。
天使達がやって来て500年後、今度は魔王がこの世界にやって来たのです。魔王は言いました。「今度は逃がさない」と、魔王は悪魔、魔族、獣や精霊を連れて攻めてきたのです。
人間達は必至に抵抗しました。天使達と協力し、悪魔達を追い返したのです。しかし、それでも魔王は諦めませんでした。何度も何度も繰り返し攻めてきたのです。しかしある時、ピタリと攻撃が止んだのです。300年続いた戦いは、人間と天使が勝利したのです。
今まで世界には4つの国がありました。エスト、ウィースター、サウサス、ノス。ある国の王様は言いました。「勝利を祝して、もう1つ国を作ろう」他の王様は言いました。「反対だ」他の2人の王様もそれに頷きました。でも、何度も話し合ううちに王様達の考えは変わって行きました。みんな夢を持ち始めたのです。今度は攻められても動じない強い国が欲しいと、そうして、4人の王様は力を合わせて一つの国を作りました。
4つの国はそれぞれ大陸です。1つは技術を、1つは自然を、1つは魔法を、1つは土地をそうして大きな国が出来ました。名前を「センタル」といいます。
そして、時が経ち、今度は人間達が魔王を倒そうと拳をあげたのです。





僕らは今、魔王と対峙している。天歴3500年の冬。魔界の奥の奥の奥の奥の「カナン」という地に存在する魔王の城、その門の前で既に魔王は待ち構えていた。巨大で光を濁す漆黒の体。二本の歪曲した角を生やしたそれは、岩のように静かに、巨大な椅子に腰を下ろし門を塞ぐようにして勇者達を見下ろしていた。


剣の技量、精霊からの加護、天使からの祝福、それら様々な要因と数多くの功績が認められ勇者と呼ばれるようになった。

5人の仲間と出会い、村を救い街を救い、数多のダンジョンや遺跡を踏破し、様々な苦難を乗り越えてきた。その物語の最後に魔王を倒して人類を救う役目が終われば、エンドロールの最後に共に旅をしてきたミーティアに好きだと、思いを伝えようと、そう思っていた。

・・・・・・・・・・・・


僕らの冒険は終了した。


世界はそれほど甘くはない。魔王は今まで戦ってきたどの魔族とも比べ物にならないくらいの暴悪な強さを誇っていた。あまりの力の差は暴力となり勇者のチームを襲う。その魔王の猛攻に耐えきれず、初めにタンクのハヴィが腹を裂かれ血を吐き倒れ起き上がらなくなった。


ハヴィは2mを超える巨漢を活かし敵の注意を集め、巨大な盾でその攻撃を防いできた。禿頭の頭と強面の顔から初対面の相手には恐怖を与える印象だが、面倒みが良く人情が厚く優しい奴だった。


タンクを失った後は悲惨なものだった。

僕と魔法戦士のミハはエンチャンターのミーティアからの身体強化支援の魔法を受け魔王に切りかかるが攻撃が届くことは無く、魔王の攻撃を塞ぎきれず勇者の剣は中心で折れ、ミハの手に持つ短剣は砕け、魔導書は魔法の酷使によりボロボロになっていた。

ミハは右手に短剣左手に魔導書を持つスタイルで戦闘を熟す魔法戦士職で魔法ののった短剣の攻撃は鮮やかで今まで苦戦を強いられる事はほとんどなかった。男性だが顔立ちは中性的で美しく、自分でもそれを理解してか後ろで結んだ金髪のせいなのか本当に女性にみえてしまう時もある。しかし今は戦況からかなり苦しい顔をしている。


2人の攻撃は無駄ではなく、直後赤と黒の光を放つ巨大な魔法陣が3つづつ展開された。マジックキャスターのシエルが自分の命と引き換えに禁忌の魔法を発動させるが、灼熱の炎は魔王に届くことなく当たる直前でマッチの火が消えるようにスッと消えてしまう。本来なら燃焼する物体が燃え尽きても永遠に赤黒い地獄の炎を揺らし続けるはずの炎は虚無に消えていく。


シエルは攻撃魔法を極めてきた。世界中の多種多様な魔法を覚え、使いこなし、自分の身長より長いロッドをいつも自慢げに掲げていた。先の尖った帽子や魔力を高める長いローブも、全て自分で作り上げる天才、整った顔立ちで、腰の程まである長いブロンズの髪は先まで手入れされておりとても綺麗にしあがっている。気の強い所もあるが、それも含めて彼女の魅力なのだろう。

その後、魔王はあてつけのように同じ魔法を使い既に気を失い倒れ込んでいるシエルを消し飛ばした。それでも魔王の炎は止まらずは後方で巨大な火柱が立ち上った。本来なら発動者も命を落とすはずの禁忌魔法だが、当然のように魔王には何もおこらず、次の攻撃の準備をはじめていた。


僕とミハはミーティアに回復と活性化の魔法をかけてもらい何とか立ち上がれるまで回復したが次の魔王の魔法でミハは右半身を、ミーティアは魔法の軌道上にいた僕を突き飛ばし、全身を消滅させた。それでも魔法は止まらず遥か後方で2本目の炎の柱を天にのぼらせる。

最後に何か言おうとしていた。

「生きて,ーーーー

押された瞬間に見た彼女の顔はいつもの優しい笑顔で、口元から零れかけた言葉は聞き取れなかったのか、発せられる前に消し飛ばされたのか、それでも何を言おうとしたのかは分からない。


ミーティアは天才的なエンチャンターで武器や身体の強化、回復まで1人でこなし何度もチームの危機を救ってきた。精霊の加護が最も強い彼女は自己回復の力が強く、致命傷をおわない限り直ぐに傷が塞がるらしい、壊滅状態になった時も一人で治療を行いチーム全員を戦闘に復帰させた。白い法衣に身を包み、小さめの身長と短く切りそろえられた白金色の髪、コロコロ変わるその表情とが相まって可愛らしさを持っていた。



魔王は深淵のように暗い瞳で倒れたまま起き上がらない勇者を見つめる。戦闘の最中少しの間気味の悪い沈黙の時間が流れた


「お前たちは何故私と戦う?」


唐突に魔王は口を開いた


「勇者よ、疑問に思ったことないか?魔族と天使と人間の関係に」


「…」


言葉は独り言のように消えてゆく

僕は転んだままで顔を上げ、魔王を睨みつける。仲間を殺され、恋した人を殺した相手が放つ言葉が、すぐに飲み込めないで頭の中でグルグルと回っている。


「…何…を?」


「どうなんだ?世界を疑ったことは?あるのか?」


ようやく言葉が自分に向けられていることを理解したが、内容が理解できない。人間が魔王を倒そうとするのは当たり前の事で、天使を支持するのは当然の事だと思っていた。疑問など持つはずもなく必然的な事だと考えもしなかったからだ。しかし、1度疑問に思うと止まらなかった。魔王の言葉が頭の中で反復して答えが出せないで沈黙していると


「そうか、お前もか」


魔王はため息を着くように言葉を発した


「1000年たったがダメだった…これ以上は待てないか」


言葉を区切り少し間を置おいて


「勇者よ、もうこの一度世界を見てまわれ、そうして次会う時、どこまでたどり着いたか聞かせてくれ」


そう言うと魔王は突然自分の左腕を切りおとし、そこから流れ落ちた黒い血が地面に溜まっていく。落ちた腕は溶けて液体となり、液体は空中に集まり黒い球になって浮遊している。腕から流れた血は何かの意思に沿う形で何重にもかさなる円を描くように変形し、6つの陣で奇妙な模様を形成する。円の最後がつながった瞬間、黒い血の陣から赤や紫の細い腕のような触手が無数に伸び出し、空中の球を掴み、その中の1本が球の中から小さな懐中時計を摘み出した。懐中時計には長針しか着いておらず秒針と短針は初めから着いて居ないようだった。その時計の針を少しだけ回し地面におとした。すると地面につく直前で真っ白の光が時計から発せられ魔王を、勇者を、世界を包み込むように強く大きくなってゆく。そして世界は動きを止めた。

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