月に水まんじゅう
12 内田和弘
『アンダーフロンティア』のメンバーでオフ会が行われる。星奈も勿論誘われたが、場所が横浜で夕方から夜にかけて行われるため、行くのはやめた。
片道三時間弱ではあるが出歩き慣れていないのと、恐らく男しか来ないだろうことも不参加の理由だ。
月姫とミストに会ってみたい好奇心があったが、さほど強い感情でもない。後で月姫にどうだったか様子を聞いてみようと思うくらいだった。
今日は授業の大根の桂剥きで、うっかり包丁を滑らし、指先を切ってしまった。大した傷でなく、すぐに絆創膏をはって作業をしたが、テープ一枚が指先の皮膚の感覚を奪い、瞬く間に桂剥きの精度は落ちてしまっていた。
一緒にグループ活動をしている、同期生の内田和弘が心配そうに覗き込んだ。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと切れただけ。すぐ血も止まってるから」
「そうか」
和弘は浅黒い気の良さそうな笑顔で頷いた。
「帰りに、石丸亭寄ってかないか?」
「いいねー。あっ。今日、友達が京都から帰ってくるんだった」
「ああ。和菓子の?」
「そうそう。良かったらさ、一緒にごはんしない?一人だとコンビニ寄っちゃうでしょ?」
和弘とは専門学校に入って仲良くなった。同じ県内だが、彼はこの学校まで一時間半かけて通っている。まだまだ二十歳の青年は育ち盛りで、帰宅まで何かしら買い食いをしてしまうのだ。
駅が見えてくると、ちょうどこちらへ向かってくる小柄な美優が見えた。彼女も気づいたらしく手を振ってかけてきた。
「ほしなー」
「おかえりー」
小柄な美優は、星奈よりも頭一つ分小さく、手に持った荷物はとても重そうに見えた。
和弘に気づき、美優は「カレシ?」と星奈に聞いた。
「違うよ。専門のともだち。ごはん仲間」
「そうなんだ。こんにちわ。新田美優です」
「は、はじめまして。内田和弘です」
和弘は浅黒い肌を朱に染めている。そして「俺、もつよ」と美優のボストンバッグに手を差し出した。
「あ、ありがと」
星奈は、ははーんと和弘の態度を見て感づいた。美優のことが気に入ったのだ。和弘は身長が百八十五センチあり、珍しく星奈と釣り合う身長だ。しかし友達以上の感情を持つことはお互いになかった。
気が合う異性はなかなかいないのに残念だな、と大きな和弘と小さな美優の並んだ影を見て思った。
片道三時間弱ではあるが出歩き慣れていないのと、恐らく男しか来ないだろうことも不参加の理由だ。
月姫とミストに会ってみたい好奇心があったが、さほど強い感情でもない。後で月姫にどうだったか様子を聞いてみようと思うくらいだった。
今日は授業の大根の桂剥きで、うっかり包丁を滑らし、指先を切ってしまった。大した傷でなく、すぐに絆創膏をはって作業をしたが、テープ一枚が指先の皮膚の感覚を奪い、瞬く間に桂剥きの精度は落ちてしまっていた。
一緒にグループ活動をしている、同期生の内田和弘が心配そうに覗き込んだ。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと切れただけ。すぐ血も止まってるから」
「そうか」
和弘は浅黒い気の良さそうな笑顔で頷いた。
「帰りに、石丸亭寄ってかないか?」
「いいねー。あっ。今日、友達が京都から帰ってくるんだった」
「ああ。和菓子の?」
「そうそう。良かったらさ、一緒にごはんしない?一人だとコンビニ寄っちゃうでしょ?」
和弘とは専門学校に入って仲良くなった。同じ県内だが、彼はこの学校まで一時間半かけて通っている。まだまだ二十歳の青年は育ち盛りで、帰宅まで何かしら買い食いをしてしまうのだ。
駅が見えてくると、ちょうどこちらへ向かってくる小柄な美優が見えた。彼女も気づいたらしく手を振ってかけてきた。
「ほしなー」
「おかえりー」
小柄な美優は、星奈よりも頭一つ分小さく、手に持った荷物はとても重そうに見えた。
和弘に気づき、美優は「カレシ?」と星奈に聞いた。
「違うよ。専門のともだち。ごはん仲間」
「そうなんだ。こんにちわ。新田美優です」
「は、はじめまして。内田和弘です」
和弘は浅黒い肌を朱に染めている。そして「俺、もつよ」と美優のボストンバッグに手を差し出した。
「あ、ありがと」
星奈は、ははーんと和弘の態度を見て感づいた。美優のことが気に入ったのだ。和弘は身長が百八十五センチあり、珍しく星奈と釣り合う身長だ。しかし友達以上の感情を持つことはお互いになかった。
気が合う異性はなかなかいないのに残念だな、と大きな和弘と小さな美優の並んだ影を見て思った。
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