未来飛行

ほたる

未来飛行

女性が小部屋に入ると、前髪をヘアーバンドで上げている少年が前に座って居た。



くっきり二重に大きく潤んだ瞳。


すっと通った小鼻とぷっくりと小さな唇。


それから何より目を引くのが白く透き通るような肌。



女性がその容姿に見とれる程の美男子が居た。




「どうぞ。お掛けになってください。」


テーブルを挟んだ対面の席に促され我に返った。


「早速ですが、どんな未来を視せましょう?」



「あ、ぁの…。…恋人…との、将来がどうなるのか視たくて…。」


頬を赤らめしどろもどろに話す女性。



「…と言いますと。……ご結婚の事ですか?」


「…はい。」



「分かりました。額を失礼します。」


訳が分からず顔を真っ赤にして、戸惑いの声を出す女性の前髪を上げて、女性の額に皐月は額をくっ付けた。




すると女性の脳内に、不思議なビジョンが流れてきた。


自分の未来を客観視しているような感覚。

話し声やその場の風景までがはっきりと伝わって来た。




時間にしたら10分程だろうか。


未来飛行の間、ずっと額をくっ付けたままだった事を思い出し、また赤面していく女性。




「大丈夫ですよ。僕が視せる未来は必ず起きる事ですから。」



「ありがとうございました。」


ホッとした表情で深々と頭を下げ小部屋を出て行った女性。





皐月の顔には少し疲れが見えていた。










未来を視せるこの不思議な力を未来飛行と名付けたのは、確か長男の菖蒲にぃだったかな。


まるで現在から未来に旅をしに行ったように感じるから"未来飛行"だって。


未来飛行は占いの類いだとか言う人もいるけど、占いとは全くの別物だ。

未来飛行で視た未来は、必ず起きる。

自分自身の選択で変えることも変わる事もできない。



だからこそ残酷な未来を視てしまった時は、酷く落ち込んで気分が悪くなる。





兄達は、優しくて頼りになるけど少し過保護な所がある。



菖蒲にぃは、俺と17歳も歳が離れていて今32歳で、兄と言うよりは親に近い感覚だ。

よく相談に乗ってくれるし、1番安心感がある。



兄達はみんな年子で、歳の離れてる俺の面倒をよく見てくれてた。

俺もにぃちゃんっ子で、昔っからよく引っ付いていた。




水蓮にぃは、人が身に纏うオーラが見えるみたいで、この裏メニューって言うのを注文しそうな人が分かるんだって。

俺が未来飛行をして嫌な思いをしなくていいように品定めしてくれてるらしい。





椿にぃは、素っ気なくて口数が少ない。
良いように言うと、クールな性格。

でもファッションセンスは抜群だから、服を買いに行くなら椿にぃと一緒に行くのが1番いい。




楓にぃは、椿にぃと双子なのに全然似てない。
明るくてやんちゃですっごく子供っぽい所がある。

歳が離れてるのに俺によく張り合って来る。

でも1番遊んでくれるのも楓にぃちゃんだ。




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