太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜
洞窟内探検②
ガキンッ!
鎌を狙って剣を振るうが弾かれてしまう。
「硬い……!」
「勇者様、ここは私に!」
ニーマスさんが前に出る。
「虫型の魔物には火が1番です。炎風!」
ニーマスさんの杖から出た炎の風が蟷螂型の魔物、ナイファースイプに襲いかかる。ここまで感じる熱気だ。苦しいのか、ナイファースイプがのたうち回っている。
効いてる! 行けるぞ!
「流石です! ニーマスさん!」
「では私も火属性の魔法で攻撃しましょう! 敵を穿て、火弾!」
先生は剣士で魔法は苦手のはずだが、簡単なものは使えたようだ。火の玉が火球よりも速い速度でナイファースイプに向かう。が、
「な、斬った!?」
炎に包まれた状態のナイファースイプが迫り来る先生の魔法を文字通り斬った。
「やはり危険度4ということか……」
「では、私が剣に炎を付与します。維持は大変ですが、これで剣も有効になるはずです!」
ニーマスさんが僕と先生の剣に魔法をかけると、剣から青い炎が発生した。
これが空間魔法を使える人の実力、他の魔法も凄い!
「有難い。では……!」
先生が駆ける。
未だにナイファースイプは炎を纏って辛そうだが、僕達を脅威とみなしたのかこちらを向き構えている。
先生が跳ぶ。
ナイファースイプは魔物としての本能か先生の対処を優先した。空中では大きな動きはできない。
「神よ、我に世界を創る力の欠片をお与えください。空面!」
ニーマスさんが宙に足場を作り、先生がそれを蹴ってナイファースイプへと飛び込む。
上級者2人のタッグプレイだ。打ち合わせ無しの動き。それなのに今の動きは2人が互いに相手を信じている雰囲気だった。まるで、数多の戦を2人でくぐり抜けたかのように。……もしや2人は
「はぁぁぁあ!!」
ナイファースイプは驚いたのか、動かない。
ビュン
違う! 完全に先生を捉えていたんだ!
鎌が、常人が認識できない速度で先生に迫る!
「あ」
危ない!そう言おうとしたが止めた。
先生がニヤリと笑ったのが見えたからだ。
「炎斬!」
ナイファースイプの鎌を焼き斬り、そのままの勢いで首を落とす。
コロン
「すごい……」
2人で倒してしまった。
危険度4を……そして、僕は何も出来なかった。
させてくれなかった。
これじゃ、いけない! 僕は勇者なんだ!
「ニーマスさん、先生。次は僕も戦います!」
僕の決意に満ちた目に2人は頷いてくれた。
「もちろんですよ。さあ、先に行きましょう」
「ええ、頼りにしてます」
この場をあとにし、更に奥へと進む。
─────────────────────────
(おや? なかなかあの2人やるんだねぇ。次で1人脱落させようか。特に魔法使いが厄介かね。ん? また変なのが潜ってき……!!! ついに来たか! アハハハハ! 計画変更だね。勇者はともかく他は邪魔だ。勇者には可哀想だが。)
─────────────────────────
「こいつは……?」
隠れながら魔物を見る。蜘蛛型の魔物、だが驚くべきはその体躯だ。10……いや12mはあるだろうか。
「クァクァと呼ばれる蜘蛛型の魔物で成長するほどに脅威度が増す魔物……ですが」
「この大きさはハイクァクァ……いやアーククァクァかもしれません」
「危険度は……?」
「ハイなら危険度5、アークなら危険度6に」
危険度6……絶望的だ。
「危険度6は久々ですね」
「ええ、まさかまた相手することになるとは」
「え? 2人は危険度6と戦ったことが? いや、そもそも2人の関係は」
「昔、若かった頃に2人で冒険者をしてまして……2人ともA級まで登り詰めました」
「その後すぐに、2人ともにスカウトが入ってしまい冒険者はやめてしまったんですがね」
「その時に危険度6とも何度かやったことがあるんですよ。アーククァクァとも戦いましたね」
やっぱりこの2人、元々タッグを組んでいたんだ。じゃなきゃあそこまで綺麗な連携は出来ないだろう。
「今回は勇者様もいますし、他にもやりようがありそうですね。とりあえずまた剣に炎を付与します。他にも補助魔法を少し」
「いいですか、アーククァクァはあの巨体でとても素早いです。その機動力を無くすためにまずは脚を狙います。奴の攻撃手段はあの牙と毒。それさえ気をつければ大丈夫です。では、行きますよ!」
伝えるべきことを淡々と告げられ、先生はそのまま飛び出す。
僕も続く。体がいつもより幾分か軽い。ニーマスさんの補助魔法のおかげだろう。
「せいっ!」
先生の刃がアーククァクァの脚に触れ、そのまま切断する。かに思えた。
「な!? 硬い!」
アーククァクァは今の一撃で先生に気づいたらしい。その8つの瞳を先生に向ける。
そして八本の足とは別に二本の鎌が現れた。小さいものの、ナイファースイプよりも鋭利に見える。
「あの鎌は……いけない!」
ニーマスさんが声を上げ、駆け寄ろうとする。
「え」
その時、僕は何が起きたのか分からなかった。
理解したくなかった。
支えを無くした先生が目の前に倒れている。
真っ赤な液体が先生の周りに広がっていく。
「あ……ああ……」
近くまで来ていたニーマスさんが目を見開いて震えている。
ニーマスさんの表情が険しく、赤くなっていく。
止めないと。止めなくちゃ。
「よ、くも……よくも俺の心友を……クードを……!!!」
いけない。アレには勝てない。
このままじゃニーマスさんまで。
ニーマスさんまで? なんだ?
「我、火の精霊との魂の契約により、大いなる炎神の化身と化し、敵を討ち滅ぼさん……! 炎鎧!!!」
ニーマスさんの魔力が極限まで高まり、その身を炎が包んでいく。
「あぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
アレがニーマスさんを一瞥する。
次に僕が瞬きした時、アレは消えていた。
代わりに鈍い音がした。それは何かが落ちた音。
音を出した物体は転がって、僕の足にぶつかる。
音のした方向はさっき、ニーマスさんがいた所だ。音がしてから、さっきまで異様なほど高まっていた魔力が嘘のように感じない。
見たくない。見たくない。見たくない。
体が固まる。声すら上げられない。
苦しい。恐怖で呼吸の仕方すら忘れてしまった。
「た……す……だれ……か」
途切れ途切れで、ようやく声を発した。
アレの姿が見えない。去ったのか。
いや、いる。後ろから、見られている。
あの8つの瞳で僕を舐めまわすように見ている。
死ぬ。
「「「「「「「炎風!!!!!!!」」」」」」」
突然背後から声が聞こえた。
「…………安心しろ……助けてやる」
鎌を狙って剣を振るうが弾かれてしまう。
「硬い……!」
「勇者様、ここは私に!」
ニーマスさんが前に出る。
「虫型の魔物には火が1番です。炎風!」
ニーマスさんの杖から出た炎の風が蟷螂型の魔物、ナイファースイプに襲いかかる。ここまで感じる熱気だ。苦しいのか、ナイファースイプがのたうち回っている。
効いてる! 行けるぞ!
「流石です! ニーマスさん!」
「では私も火属性の魔法で攻撃しましょう! 敵を穿て、火弾!」
先生は剣士で魔法は苦手のはずだが、簡単なものは使えたようだ。火の玉が火球よりも速い速度でナイファースイプに向かう。が、
「な、斬った!?」
炎に包まれた状態のナイファースイプが迫り来る先生の魔法を文字通り斬った。
「やはり危険度4ということか……」
「では、私が剣に炎を付与します。維持は大変ですが、これで剣も有効になるはずです!」
ニーマスさんが僕と先生の剣に魔法をかけると、剣から青い炎が発生した。
これが空間魔法を使える人の実力、他の魔法も凄い!
「有難い。では……!」
先生が駆ける。
未だにナイファースイプは炎を纏って辛そうだが、僕達を脅威とみなしたのかこちらを向き構えている。
先生が跳ぶ。
ナイファースイプは魔物としての本能か先生の対処を優先した。空中では大きな動きはできない。
「神よ、我に世界を創る力の欠片をお与えください。空面!」
ニーマスさんが宙に足場を作り、先生がそれを蹴ってナイファースイプへと飛び込む。
上級者2人のタッグプレイだ。打ち合わせ無しの動き。それなのに今の動きは2人が互いに相手を信じている雰囲気だった。まるで、数多の戦を2人でくぐり抜けたかのように。……もしや2人は
「はぁぁぁあ!!」
ナイファースイプは驚いたのか、動かない。
ビュン
違う! 完全に先生を捉えていたんだ!
鎌が、常人が認識できない速度で先生に迫る!
「あ」
危ない!そう言おうとしたが止めた。
先生がニヤリと笑ったのが見えたからだ。
「炎斬!」
ナイファースイプの鎌を焼き斬り、そのままの勢いで首を落とす。
コロン
「すごい……」
2人で倒してしまった。
危険度4を……そして、僕は何も出来なかった。
させてくれなかった。
これじゃ、いけない! 僕は勇者なんだ!
「ニーマスさん、先生。次は僕も戦います!」
僕の決意に満ちた目に2人は頷いてくれた。
「もちろんですよ。さあ、先に行きましょう」
「ええ、頼りにしてます」
この場をあとにし、更に奥へと進む。
─────────────────────────
(おや? なかなかあの2人やるんだねぇ。次で1人脱落させようか。特に魔法使いが厄介かね。ん? また変なのが潜ってき……!!! ついに来たか! アハハハハ! 計画変更だね。勇者はともかく他は邪魔だ。勇者には可哀想だが。)
─────────────────────────
「こいつは……?」
隠れながら魔物を見る。蜘蛛型の魔物、だが驚くべきはその体躯だ。10……いや12mはあるだろうか。
「クァクァと呼ばれる蜘蛛型の魔物で成長するほどに脅威度が増す魔物……ですが」
「この大きさはハイクァクァ……いやアーククァクァかもしれません」
「危険度は……?」
「ハイなら危険度5、アークなら危険度6に」
危険度6……絶望的だ。
「危険度6は久々ですね」
「ええ、まさかまた相手することになるとは」
「え? 2人は危険度6と戦ったことが? いや、そもそも2人の関係は」
「昔、若かった頃に2人で冒険者をしてまして……2人ともA級まで登り詰めました」
「その後すぐに、2人ともにスカウトが入ってしまい冒険者はやめてしまったんですがね」
「その時に危険度6とも何度かやったことがあるんですよ。アーククァクァとも戦いましたね」
やっぱりこの2人、元々タッグを組んでいたんだ。じゃなきゃあそこまで綺麗な連携は出来ないだろう。
「今回は勇者様もいますし、他にもやりようがありそうですね。とりあえずまた剣に炎を付与します。他にも補助魔法を少し」
「いいですか、アーククァクァはあの巨体でとても素早いです。その機動力を無くすためにまずは脚を狙います。奴の攻撃手段はあの牙と毒。それさえ気をつければ大丈夫です。では、行きますよ!」
伝えるべきことを淡々と告げられ、先生はそのまま飛び出す。
僕も続く。体がいつもより幾分か軽い。ニーマスさんの補助魔法のおかげだろう。
「せいっ!」
先生の刃がアーククァクァの脚に触れ、そのまま切断する。かに思えた。
「な!? 硬い!」
アーククァクァは今の一撃で先生に気づいたらしい。その8つの瞳を先生に向ける。
そして八本の足とは別に二本の鎌が現れた。小さいものの、ナイファースイプよりも鋭利に見える。
「あの鎌は……いけない!」
ニーマスさんが声を上げ、駆け寄ろうとする。
「え」
その時、僕は何が起きたのか分からなかった。
理解したくなかった。
支えを無くした先生が目の前に倒れている。
真っ赤な液体が先生の周りに広がっていく。
「あ……ああ……」
近くまで来ていたニーマスさんが目を見開いて震えている。
ニーマスさんの表情が険しく、赤くなっていく。
止めないと。止めなくちゃ。
「よ、くも……よくも俺の心友を……クードを……!!!」
いけない。アレには勝てない。
このままじゃニーマスさんまで。
ニーマスさんまで? なんだ?
「我、火の精霊との魂の契約により、大いなる炎神の化身と化し、敵を討ち滅ぼさん……! 炎鎧!!!」
ニーマスさんの魔力が極限まで高まり、その身を炎が包んでいく。
「あぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
アレがニーマスさんを一瞥する。
次に僕が瞬きした時、アレは消えていた。
代わりに鈍い音がした。それは何かが落ちた音。
音を出した物体は転がって、僕の足にぶつかる。
音のした方向はさっき、ニーマスさんがいた所だ。音がしてから、さっきまで異様なほど高まっていた魔力が嘘のように感じない。
見たくない。見たくない。見たくない。
体が固まる。声すら上げられない。
苦しい。恐怖で呼吸の仕方すら忘れてしまった。
「た……す……だれ……か」
途切れ途切れで、ようやく声を発した。
アレの姿が見えない。去ったのか。
いや、いる。後ろから、見られている。
あの8つの瞳で僕を舐めまわすように見ている。
死ぬ。
「「「「「「「炎風!!!!!!!」」」」」」」
突然背後から声が聞こえた。
「…………安心しろ……助けてやる」
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