太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

45.登録

 もう1人の方は……龍人族だ!
 ポニーテールにした黄緑色の髪からほんとに小さなツノが2本、ちょこっと出ている。そして小さな蝙蝠のような翼が一対、腕にも薄らと鱗がある。犬歯も少し長いかな? でも牙、とまでは言えないぐらい。
 女の人で見た目若そうだけど、こっちも龍人族だからね。不老不死ではないにしろそれなりに長命だから実年齢はわからないな。


(もう1人は龍人族か。)
(そう、だが。あれは人族とのハーフだろうな。龍の特徴がそれほど強くない。もちろん個人差はあるが。)


 とのこと。
 確かに、あの小さな翼で飛べるとは思えないし。見た目だけなのかな? 逆に邪魔なんじゃ……
 魔人族の角は魔力を貯めることが出来たり、制御する時に役立つらしい。本人から聞いた。


(魔法使いかな?)


 それは、彼女の見た目が華奢な方だったから出た質問だったが、


(いや、わからんぞ。少なくとも龍人族は魔力もそこそこだが身体能力も獣人並に優れているからな。流石にエルフや吸血鬼ヴァンパイアとまではいかないが。)
(じゃあ剣士とかの可能性もあるのか。)
(どうだろうな。ま、やり合うわけじゃないんだ。気にしなくてもいいだろ。)
(そうだね。)


「1127番の方、24番テーブルへお越しください」
「呼ばれたな。行くぞ」
「なんてタイミングのいい」


 ちょうど話し終えたところで受付の人に呼ばれた。
 言われた番号の書いてあるテーブル?へ向かい、受付の人に促されて椅子に座る。


「ルドルフ様、依頼の報告と報酬について、25番テーブルへお越しください」


 え?
 さっきの吸血鬼の子が隣に座った。


(アレン、別に気にするな。)
(あ、うん。)


「では、身分証の登録ですね。登録する方のお名前と年齢、性別、種族、特技などをご記入下さい。尚、特技に関しては無ければ『ない』と記入してくださって構いません。それではなにか困ったことがあったり、書き終わりましたらまたお呼びください」
「はい」


 それだけ行って他の人の対応に移ってしまった。
 ふと思ったけど、これ先に書いて待ってもらえればいいんじゃ?


「なあタマ。なんでこれさっきの時渡さなかったんだ? 時間節約できるのに」
「ん? ああ、そりゃあ周りに人がいるからだな。誰かには情報を見せたくないって奴がいるからこうしてるんだ」
「なるほど」


 特技以外をササッと書いてしまう。
 やっぱ読み書きって大事だよな。できない人はどうするんだろ? さっきの人に代わりに書いてもらったりするのかな。


「特技ねぇ」
「なんかあるだろ? というか沢山ありそうだが」
「いや、そりゃあ魔法とか剣術とかあるけどさ、上には上がいるじゃん」
「……あそこと比べたらだめだろ」
「ちなみにその中にタマもいるね」
「……褒められてるのか分からないな」


 なんかあるかな。
 村長とか長老、ルイフ、タマ……こいつらに勝てるもの。なくね?


「まあ多分だが、剣術でいいんじゃないか?」
「どうして?」
「魔法はルビアス様の魔力を使ってるしな。でも剣術は、昔からやってる自前だろ?」


 言われてみればそうか。
 特技と言っていいのかは分からないけど。


「じゃあ特技は剣術で、と」
「よし、書けたな」


 書き終えたらタマがすぐ受付の人を呼んだ。
 さっきの人が慌てて駆けてくる。
 忙しいんだろうなあ。


「どうなされました?」
「書き終わりました」
「かしこまりました。それでは確認しますね」


 受付の人が一つ一つ丁寧に確かめているけど、項目が少ないからすぐに終わった。


「はい。問題ありません」
「じゃあ」
「ええ、この内容のまま登録しておきますね。カードを作ってくるので暫くお待ちください」
「はい。ありがとうございます」


─数分後─


「それでは、こちら冒険者カードになります。他国へ入国する際も身分証の代わりになります。なくされた場合は再発行になり料金が発生しますのでご了承ください。また、カードの重複は認められていないので、もし仮にそのような事があれば、カードの無効と罰金になります。今はまだFランクですが、一定数の依頼の達成で昇格試験を受けることが可能ですので頑張ってください。」
「……了解しました」


 ま、普通に使ってれば問題ないでしょ。


「それと、」


 まだあるのか……


「剣術が得意とのことですのでこの場で昇格試験を受けることが出来ますが、如何しますか?」
「え、でもさっき……」
「ああ、F~Eは曖昧でな……というか魔法と剣がある程度出来たらその時点でEなんだ。商人とか一般人も冒険者カードは持ってるからそれをハッキリするためのもんだ。だから魔法とか剣術とかが得意ってことならその場で確かめれたらすぐ上がれるってことだ」
「説明ありがとうございます」


 へぇ、でもなんか得することがあるのかな?
 別に冒険者するつもりは無いし。


「ま、やるかやらないは任せるぞ。Dからはともかく、FとEは特に待遇されないしな。なんなら、Eだと滞在している国に何かあれば駆り出されるくらいだ」
「ん? D級からは変わるの?」
「はい。D級からは冒険者ギルドからの補助金に加え、武具屋の紹介や連絡、冒険者ギルドの経営する宿屋の割引などがございます」
「……お金は要らないしな。武器も、あるし」
「B級からは昇格毎にお好きな物をひとつギルドから貰えますし、S+級にまで上がると爵位を各国から授けられるようにもなりますね」


 ……え? 好きな物?


「好きな物って、なんでもいいのか?」
「え? ああ、一応限度はありますが、それなりにはご用意させていただきます」


 ふむ、てことは美食にもありつけるか。
 タフゴープナの肉でタマに料理してもらわないといけないしな。


「よし、受けます!」
「あ、はい。ではこちらへ」

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