太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

35,持ってて良かった枯れ木

「つまりだな、あいつらにはボスがいて、そのボスの指示でここを襲ったんだと。理由は詳しくは教えて貰ってないらしいが、まぁ恐らくこの大陸の支配者どもへ復讐するのが目的だな」
「ふむふむ……やっと分かった」
「本当か? 今ので13回目だぞ? いいか?」
「ようするにあれだ、そのボスを倒せばいいんだ」
「うんー? まぁそれでいいっちゃいいのか?」


 タマが唸る。
 え、間違ってないでしょ?


「でも、なんで復讐?」


 アンナが問いかける。


「さぁな。こんな下っ端にそんな情報教えやしないだろ」


 言うねぇ。
 つまり、アンナレベルでも下っ端か。
 うーん? 3人でアンナと同程度だからやっぱ違うのか?


「そのボスはどこにいるって?」
「ん? ああ、こいつらの根城は掴んだが、どうにもそこにはいないらしい。支部みたいなもんか? まぁとりあえずそこに行くしかないな」
「で? どこ?」
「ここから南、人族の領土と大魔女の領土の間付近だな。ここが人族の領土と大聖女の領土の間だから、普通に行けばざっと数年はかかるだろうな」


 げぇ…そんなに歩くの嫌だなー。


「僕はパスで、アンナもめんどいだろ?」
「はぁ?」


 え、違った!?
 物凄い形相で睨んでくる!
 怖いっ! 殺られるぅ!


「行くに決まってる、でしょ?」
「は、はい」
「よぉーし、分かった。それなら最初の目的地はギリュアリュだな」
「え? なんで? 直で行けば良いじゃない」


 ……ギリュアリュってなに。


「甘いなアンナくん。直で行くよりもあそこの乗り物に乗った方が早いと思わないかい?」
「……!!!」


 ……!!! じゃなくて、教えて貰えると有難いかなーなんて。


─ギリュアリュはこのウルメリア大陸の中央に位置する超巨大都市─


 君はなんで知ってるの?


─アレンの記憶から見つけてきた─


 ……てことは僕も知ってたのか。
 この僕が……忘れていた…だと!?
 まぁ普通か。


 それで、なんでこの子達はそのアジトに直行せずに寄り道するの?


─さぁ、それは知らない─


 むぅ。


「あ、あの……ギリュアリュに向かわれるのですか?」
「お? その通りだが、なんでしょう村長殿?」
「いえ、でしたら我々にもサポート出来ないかなと」


 えらく気前のいい村長さんだな。
 ガスティグ村の村長ことお義父さんはこんなにいい人じゃないぞ!


─そんな事言わない─


 はい。冗談です。


「……サポートとは?」
「なに、ただ馬か何かを用意させようかと。と言っても、そちらの方には要らなさそうですが」
「なるほど。アレン、どうだ?」


 僕?
 あー、ルビアスがいるからか。
 お前って、もう僕を運べるのか?


─試してみないと分からない─


 出来ないって断定しないってことは多分行けるな。


 大丈夫の意味で首を縦にふる。


「そうだな。あいつは大丈夫みたいだ」
「分かりました。では二人分用意させていただきます」


 ……タマが人化しなければ一人分でいい気がするんなだけどなー。


「しかし、いいのか?」
「えぇ! 先程の話からして恐らく、もう少しでも貴方様方の到着が遅かったら、我々はこの村どころか命すら危うかった。そこを助けられたのです。そしてこれだけ沢山の枯れ木があれば数ヶ月は暖を取るのに困りません。それだけの日数があれば、国へと通達が出来るでしょうし、そうすればまたこの村を再建できるはず」
「……だが、馬を持って行っては」
「構いませんよ。少し待てば商人たちの団体がここを通りますから」
「そうか」


 タマは暫く考え込み、最終的には渋々という感じで村長からの提案を承諾した。
 ……なにはともあれ、僕の拾った木が役立ったな!
 でも本当に大丈夫か?
 暖を取るだけとか。狩人の人がいる訳でも無さそうだし、何か引っかかる。


「タマさん、話はまとまった?」
「そうだが」
「じゃあ今すぐにでも行きましょう! ほら早く!」
「お、落ち着け!」
「これが落ち着いていられるか!」
「いや、ほんと落ち着けアンナ」


 え、アンナさんどうした?


「そ、そうね」


 そうは言うものの、まだ焦りが見て取れる。
 そこで、ふとタマが合点がいったというように片眉を上げた。


「はっはーん。アンナ安心しろ。そう簡単にあいつはやられんぞ。寧ろ、なんであいつの強さを知っているはずのお前がそこまで焦ってる?」
「……!!」


 おい、デジャヴだ。
 僕も仲間に……!


「だから大丈夫だ。まぁ急いだ方がいいのも事実だろうし、明日の早朝には出発だな。村長殿、頼みます」
「分かりました」


 わかってねぇよォおぉおおお!!!!


─うるさい─


 はい。

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