太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

20,おかしいでしょ!?

「タマ……さん? この炎は?」


 タマさんは私を連れてきた、誘拐してきた魔法猫。
 最初はカーバンクルの件もあったからビクビクしてたけど、特になにかされる訳でもなかったから少しずつ打ち解けた。
 そこで、目的地とかおっちょこちょいな男の子の話とかは聞いてたけど……
 今、私の目の前に浮かんでいる?のは虹色の炎。
 しかもだいぶ大きくないかしら。


 不思議に思って鑑定眼でよく見てみる。


 なにこの魔力量に質……
 聖気もおかしいわね。
 私の眼が悪くなったようだわ。
 凄い凄いと思っていたタマさんを上回ってるわよ?


「この方は、虹炎鳥 ルイフ様だ」


 ルイフ様?
 虹炎鳥?
 って……【王種】じゃないかしら!?
 どういうこと!?


(あなたがそうですか。名前は……アンナですか。)


 なっ!
 念話なんてものは予想してたけど……名前なんて考えてもなかったし言ってもないわ。
 タマさん経由で?


(何を驚かれているのです? 鑑定眼を持っているのであれば分かるはずですよ?)


 いや……知らない。
 鑑定眼は相手の魔力や聖気の量と質を推し量るもの。
 名前まで分かるはずない!


(分かりますよ。名前の他に、種族,年齢,性別,使える技、また魔力や聖気の量や質,身体能力などは数値で表れますし。)


 なにそれ、卑怯過ぎない?
 相手の強さや弱点を見て戦い方を変えたり、そもそも戦いを避けることも出来るってことでしょ?


(その通りです。ですが、その様子だと貴方は……いやこの文明の方々はそこまでのレベルには達してないと言うことですね。)


 なんか文明とかすごい話してるわね。
 まぁ聞いたことないし、その通りなんでしょうけど。


(鍛え甲斐が有りますね。アレン様と一緒に修行しましょうか。あまり時間はありませんが。)


「時間が無い、ねぇ」


(……あとでお話しましょうか。)


「いえ、済みません」


 タマさんがあんな真剣に謝っている姿って初めて見たわ。
 それほど長く一緒にいる訳では無いけど、大抵笑いながらだものね。


「それで、そのアレン様ってのは?」
「あぁ、前話してたおっちょこちょいの馬鹿野郎のことだ」


(はぁ、まぁ私よりも古くからの付き合いですし目を瞑りましょう。)


 え、そんなおっちょこちょいさんが【王種】から様付けされてるの?
 なんで!?


(ちょうどこれからお稽古なので、見に来てください。最初は隠れて見ていてくださいね。)


「は、はい」


 少し行くと1人の少年の姿が見えてきた。
 あの子がアレン様って子かしら?


(ではここで。)


 ルイフが飛んでいく。
 さて、じゃあ【王種】が様付けする彼の魔力量を見てみますか。


 ……あれ?
 見えない。
 うそ、こんなの初めて。
 何かに覆われているような。


 もう一度、眼にさっきよりも力を込めて見る。


 ─だれ?─


 え?


 ─アレンに危害を加えるつもりなら、許さないよ?─


「ふぐっ!」


 痛い!
 頭が……!
 苦しい!
 息が、できない……!


(!!! ルビアス様!?)


「ルビアス!? 何してんだ!?」
「え? ルビアス様がなんだ?」




 ───────────────────




 ルビアス?


 ─これアレンのことを調べてた。何か危害を加えようとしていると思って─


 そうか、大丈夫だからまだそこで隠れててな?


 ─分かった─


 心配してくれてありがとな。


 ─うん─


「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
「えーと、君は?」


 金色の長髪に紺の目をしている少女。
 紺の目? 眼?
 んー?
 頭横からは後ろに向かって角みたいなのが生えている。
 この特徴的な角は魔人族か。
 なんでこんなとこに。


(彼女の名前はアンナ。カーバンクルを攫った犯人を雇った方です。魔法猫に連れてきてもらいました。最も、更に上がいるようですが。)


「へ、へぇー」


 あらあら可哀想に。
 見た感じ強くなさそうなのに、タマとかいう魔法に長けた種族である魔法猫にやられ、その後にルイフとかいう王種にも怖い目に遭わされる。
 なんて可哀想な子だろう。
 あとルビアスもか。


(私は何もしていませんよ。)


 あーはいはい。
 とりあえず大丈夫か? この子。


「生きてるかー?」
「……生き……てる……」


 お、良かった。
 生きてるらしい。
 あやうくルビアスが無実な人を殺ってしまうとこだった。


 ─良かった─


「ルイフ、どうしてそんな子がここにいるんだ?」


(あぁそれは、一緒に修行してもらおうと思いまして。)


 え? なんで?


(簡単に言えば旅のお供ですね。鑑定眼も持っていますし、魔人で魔力量も多く、高位の魔女で知識も豊富。こんな良い人材なかなかいませんよ。)


「ルイフは一緒に来ないのか?」


(私は別にやることがありますし。)


「そうか」
「ちょっ……ちょっと! そんな話聞いてない……わ!」


(えぇ、今言いましたし。)


「そんな!」
「え……俺はダメなのにこの子はいいんですか!?」


(貴方は……はい。それだけ鑑定眼が重宝されるよですよ。)


「それなら仕方ありませんね……」


 村長、引くの早いな。
 しかし鑑定眼かー。
 あ……紺の目ってそゆことかな。


(ご名答です。ですが、今の彼女は相手の魔力と聖気の量や質のみしか推し量ることが出来ません。ですので、鑑定眼の正しい使い方を教えていこうと思っています。魔法の知識はそれなりにあるので十分自分の身は守れるでしょうし。)


 アンナ! 頑張ってな!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品