太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

10,王種からの説明②

(いやぁ、恐ろしいですね。)


 全くもって。
 てかみんな静かだね。
 なんかあったの? あぁ、【王種】はいるけどね。
 ……逆に落ち着いてる僕がおかしかったりするのか?
 え? する?
 やめろ! 言うな!


(1人で何をしているんです?)


「いや〜、なにも〜。ただみんなが静かだなーって」


(静か……あっ、そうでした。)


「ん?」


(威圧を消すの忘れてました。魔物達の相手をいちいちするのがめんどくさいので、いつもほんの少し威圧を放ってるんですよね。)


 おい。少しっていってもカーバンクルさんも黙ってるぞ!
 さっきまでガンガンきてたのに!


(消しました。)


「ぷはっ。」
「はぁ……はぁ……」


(す、凄まじい……)


 あぁあぁ、みんな震えちゃって。
 可哀想に。
 僕? 僕は何も感じないよ?
 これもルビアスのおかげかな?
 きっとそうだな。


(すみません。)


「まぁ大丈夫じゃない? それで、話の続きは?」


(はい。ひとつは今言ったように私がここの守り神であったから。そして、もうひとつは。)


「もうひとつは」


(私は普段、この村にはいません。それが数ヶ月前、竜様の気配を察知しました。一体何事かと思って、戻ってきたのです。)


「そう。そしてこの前こやつらが行方不明になった晩、ルイフ様に呼ばれて、その話をしていたのじゃ」
「そうだったのか。それであの時長老青ざめてたんだねー」
「突然の事だったからな。俺もそれを聞いて焦った」
「ふーん。そういうこと」


(理由はまだあります。)


「ほう、なにかね?」


(カテュラ、あなた達カーバンクルにも関わることです。)
(まさか……!)
(そう、あなたが探していた、カーバンクルの子供を攫った犯人。そいつを消しにいくためです。)


 怖!
 【王種】が襲ってくるとか、怖すぎだろ! 


「同情するぜ犯人……」


(同情しないでください。)(同情するな。)


「あい」


(それで、どうなったのですか?)
(ええ。無事に救い出しました。ただ……)
(ただ?)
(捕まえることは出来ませんでした。目的も、黒幕が誰がかもわからずじまいです……)
(……そうですか。ですが、救い出してくださったこと、心より感謝申し上げます。)
(いえ、これぐらいのこと。)
(そうは言っても、我らにはどうすることも出来なかったでしょう。ルイフ様の御力添えがあってこそです。)
(それならば良かったです。今後はより警戒してください。)
(はい。)


 ほほーん。なるほどなるほど。
 つまりそいつらを捕まえてこいと言うことですね?
 了解! ルビアス行くぞ!


 ─アレン、まだ話終わってない─


 えー。
 でも絶対言うでしょー。
 それなら早いうちにいって終わらせた方が良くない?


(私がアレン様にそんなお手数をおかけすることはありません。)


「え? 違うの?」


(行きたいのですか?)


「いや、絶対嫌だ」


 だってどう考えても強いでしょ。


(ですよね。)


 うん。


(正直、私からお教えすることなどあまりありません。アレン様から聞きたいことがあれば、答えられる範囲の受け答えはしますが。)


「あぁそう? じゃあまず、なんで僕が選ばれた?」


 他にも候補ならあったはず、だって強さだったらリアなんかの方がよっぽどあるし。


(それは私には分かりません。竜様にしか。)


 ─アレン、君は魔力マター聖気オリジンソウルともに皆無だった。だから、私との適性が良かった─


 なんか知りたくない情報だなー。
 つまり?


 ─君は自分の魔力等がないわりに、器が大きい。そこに私のエネルギーを注いだ─


(ふむ、何も持たないのがかえって良かったのですね。)


 そこ、強調しないでください。


 よく分からんが、普通はコップ1杯満杯に水が入ってるから注いでも零れちゃうけど、僕は容量バケツのくせに水が1滴も入ってないからどぶどぶと入れれちゃうと。
 そういうことかね?


 ─そう─


(先程アレン様がカテュラに治療したのは聖術の方ですね。そして《竜力纏》を使っておいででした。)


 あれが聖術かぁ。
 竜力纏?


(相棒となる竜とひとつになり、力を借用する技です。)


「ほう。なにやら難しそうだね」


(ええ難しいです。成り立てではまず、出来ませんよ。)


 なんとなく言ったけど実際難易度は高かったらしい。
 マジか。すごいことしてたのか。
 やったな!


(失敗すれば、戻れなくなりますけど。)


 マジか。やばいことしてたのか。
 あっぶね!


(竜様、それで……)


 ─竜と呼ぶな。ルビアスと呼べ─


 ルビアスが歯をむき出して威嚇する。


 ちょっと怖い。


(失礼しました。ルビアス様、それで何が起こるのです?)


「ん? 何か起こるの?」


 ふとタマの言葉を思い出す。


 あぁとんでもない災禍、ね。
 忘れてた……死ぬかもしれないやつだ……


 ─知らない─


 知らないの?


 ─そう、知らない─


 そっか


(やはりそうですか。)


 知ってたんかい!


(いや、もしかしたらと……エイディンになる竜様方は、各々そうすべきと判断して行われます。そこに なにが や どうして は含ませません。一種の勘です。)


 確かに、何億年もの間起きたことの無いほどの災禍があるとしたら……知りたくもなるか。


(他に聞きたいことはありますか?)


「んーと、じゃあ過去に竜に選ばれた者達ってどんなふうなの? 詳しく知らないからさ。」


 それを聞けば何らかのヒントが得られるかもしれない。これから起こるだろう災禍について。


(そうですね。では、竜に選ばれた者達について話しましょう。)


「頼む」


(竜というのは生物を超越した存在であり、この世界にはルビアス様を除き、七星の竜が存在します。彼等については特にないので省きます。)


 あれま。


(竜は、何かが起ころうとするとき、エイディンとなり相棒を待ちます。そして、相棒に選ばれた者は、ほぼ不老不死の存在となります。)


 ん? なんて?
 不老不死……?


(そして、竜との繋がりが強ければ強いほど、調和率は上がっていき、世の理から外れた存在にまで強くなれます。)


「とばすな! 不老不死とかめっちゃ重要だろ! それで、世の理から外れた強さってなんだ!」


 どーなってんだー! こんちくしょう!


(え? あぁ、ほぼ不老不死ですよ? ほぼです。)


 いや、ほぼって言ってもねぇ。
 死なないってのは1種の呪いだ。吸血鬼ヴァンパイアも不死の象徴とされているけど、太陽に焼かれたら消滅する。でも、それでも呪われた者達って言われてるんだ。


(だって、相棒が死なないと両方、死にませんもの。不可能でしょう? 竜を殺すなんて。)


 んー、まぁ確かにそうだと思うけど……


(つまりそういうことです。)


「じゃあ世の理を外れるってのは?」


(それは単純に、時が経つにつれ竜の方から引き出せる力が増えていくからと、竜自身が成長とともに強くなっていくからです。)


 んー、イマイチわからん。


(先程言いましたように、竜は不老不死です。そして、時が経つほど強くなる。分かりましたか?)


「……なにそれ最強じゃん」


(そこまでしないと災禍には抗えませんから。)


 災禍怖すぎ!


 「ん? 不老不死なら、ルビアスの親とか、今まで選ばれたやつらは今どこに?」


 生きてるってことだよな。


(分かりません。)


 え?


(分からないのです。)
 

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