太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜

日孁

8,竜の目覚め

  ─ルビアス……─


 次の瞬間、体の中になにかが流れ込んできた。
 温かい……
 初めての感覚だけど、違和感はない。それどころか、とても心地がいい。


 ─何億年も待った甲斐があった。アレン……私の相棒グラディアよ─


「おい、アレン?」


 僕は立ち上がり、ゆっくりとカーバンクルの方へ近づいていた。
 今まで動けなかったことが嘘みたいに……


 僕は手を翳し、なにかも分からない未知のエネルギーをカーバンクルへ流し込む。
 やり方を聞いたわけじゃない。
 でも、何故か分かった。


 みるみる傷がふさがりっていく。


 カーバンクルは最初から最後まで、不思議そうにこちらを見ていた。


 よし。これで大丈夫だ。
 もう全部傷は塞がったはず。


(……お前は何者なんだ?)


 何って、ただの無力の凡人です。
 今はなんか出来てるけど……


(何故我を助ける?)


 何故って、助けたいから。
 それ以外に理由はない。


 あれ? これってあっちには聞こえてるのかな?
 聞こえてなかったら何言ってんの僕……


(安心しろ。聞こえてはいる。)


 そっか。良かった。


(理解はできんがな。)


 ひどくね?!


(人間のことなど理解出来ん。我らの宝を奪い、並びに我を殺そうとする。なのに今度は我を助けようとする。理解出来る方がおかしい。)


 あぁそれ。
 宝をって一体なんなの?
 それを奪ったって?


(宝とは、我らの子供たちのこと。それをそやつらが奪ったのだ……!)


 カーバンクルがプルプルと震えている。
 口調は穏やかだが、威圧を放ちブランドンとジョンから視線を外さない。
 今にも飛び掛りそうな勢いだ。


 ブランドンとジョンが……?
 それは本当か?


(嘘を言うメリットがどこにある? 紛うことなき真実だ。)


 そうか。
 すまなかった。


(何故お前が謝る!?)


 だって僕の友達、仲間がしでかしたことだろ?
 だったら、仲間の代わりに僕が謝るのは当然のことだ。


(そうか……それでは、我らの宝を返してもらうぞ。)


 あぁ、少し待っててくれ。
 今話し合ってくる。


(……頼んだ。)


 未だに惚けている村長と長老は置いておいて、ガクガク震えている2人を見る。


「なぁ、二人とも。」
「へっ?」「ア、アレン……?」


 ……気づいてなかったのか。


「お前達、カーバンクルの子供を攫ったのか?」
「なんと!」「それは本当か?!」


 若い2人ではなく、老いた2人が食いついた。


「えっと、何の話だ?」


 本命の2人はよくわかってない様子。


(とぼけるでない!)


 おうおう、カーバンクルさんはそこで休んでて。


(……)


「で? 本当に知らないのか?」
「あ、あぁ! 嘘じゃない!」


 んー。
 わかんないな。
 なにか嘘か見抜く方法……
 あっ、あるじゃん。


 えーい。


 今までは使えなかった魔法。
 今なら使えると思う!
 そんな気がする。


「!!!」


 うん、使えた。
 長老とタマがやっていた人の心を読むやつ、あれで確かめる。


 ……ムズいなコレ。


「アレン……今のは魔法か! 儂は教えておらぬはずじゃが!?」


 やっべ、そいやぁいるの忘れてた!
 もうバレちゃったし……
 仕方ない、話すか。


「……この魔法はタマに教えて貰ったんだ。」


「うむ、タマとは?」


 説明めんD!
 タマはタマだ!
 そんなんもわからんのか!


 ……はい、すみません。


「タマはこの村を代々見守ってきた魔法猫。昔餌付けしたら懐いて」
「餌付け……? ふむ、にしても魔法猫とな?」
(魔法猫だと! 彼等がいるのか!?)


 カーバンクルが異常に反応してきた。
 今度はなによ……


(す、すまん。それで、どうだったのだ?)


 嘘はついていないと思う。
 初めてだから微妙だけど……


(では、一体誰が?!)


 知らない。
 ていうか、この2人が攫ったのを見たってこと?


(いや、匂いだ。)


 え? 匂い?


(我らは普段、人間とは関わらない。だから、匂いがついている時点でそいつらが攫ったのが分かる。)


 そんな匂いするのか?


(人間の嗅覚ではわからんだろう。)


 でも……違うっぽいぞ?


(しかし、匂いは確実にしている。)


 おかしいな……


「あ、あの。」
「ん?」


 ジョンの方からなにかあるらしい。


「カーバンクルの子供かは分からないけど、なにかが昨日ぐらいにじゃれついてきたよ?」


(ナン……ダト!?)
「ナン……ダト!?」
 ナン……ダト!?


 へいへーい。
 カーバンクルさんよォ。
 もしやおたくの方から仕掛けてきて、まさかそれをなすり付けかい?
 どーなってんだー!


(いや、違うのだ!)


 なにが?


(攫われたのは事実なのだ。だから、急いてしまって匂いから2人のことだと……)


 ほーん。
 まぁ仕方なくもあるか。
 だいぶ大事だし、焦りもするわな。
 そこで匂いの付着しているお二人と出逢えば、まぁ間違いないと思っちゃうな。
 違ってたけど。


 ともかく、2人は白だったってことだな!
 いやぁ、良かった良かった。
 一件落着!


(なにもよくないわ!!!)


 まぁカーバンクルさんはそうだな。
 まぁまた探してということで、じゃ!


(ちょっ! おま……!)


 ん?
 なに?
 まだなにかあるのかね?


(……助けてくれるのではなかったのか?!)


 え?
 なんのはなし?


(いや、助けたいとかどうこうって……)


 あぁ、聞いてたの?!
 やっべ! 恥ず!
 どこから!? 全部!?


(い、いや、途中から何故か聞こえなくなってしまったが……)


 あっ、そうなの。
 途中から聞こえなくか……
 あっ、ルビアス?


 ─なに?─


 お、繋がった。
 今どこ?


 ─あなたと共にいる─


 いやそうじゃなくて……


 ─分かっている。でもそういうこと─


 つまり?


 ─今、あなたと私はひとつになっている─


 物理的に?


 ─正確には精神が─


 オー。
 マジカ。


 ─マジダ─


 離れることできる?


 ─どうして?─


 お前の姿を見てみたい。


 ─分かった─


「おわっ!」


 なんか離れた!
 なにこれ!?
 いやルビアスなんだけど……
 あっでも、よく分からないエネルギーはちょっと残ってる。
 ありがたい。


「どうしたのじゃ?」


(今、妨害していたのは何故だ。)


 あっ、やっぱ妨害してくれてたんだ。
 長老もいるし、ここからは口で喋るか。


「なんでもない……わけではないけど」


 ルビアス。
 みんなもつれてきていいか?


 ─構わない─


 おっけ。
 ……ありがとな。
 色々と。


 ─どういたしまして─


 じゃあ行くか。
 あの祠の場所に。


「みんな、ついてきてくれ。」

「太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く