俺をとりまく彼女らからの愛が深すぎる

ろりお

第5話 学校

結局俺は、ひなに昨日の出来事を話した。

俺が話をしている間、ひなは緊迫した表情で俺を見つめ、たまに「チッ」とか「は?」とか言っていた。
怖かった。

話が終わってもひなは俺のことをにらみ続けた。
教室についても、ひなは俺をにらんでいた。
ただその瞳は俺を敵にするというよりも、失望した、という哀れそうな目だった。なぜ。

「よーう、くろっち」

「おう、つな」

俺のことを「くろっち」と呼ぶこの男は初波はつなみ 真吾しんごといい、俺のクラスメイトだ。
去年も初波、つなは同じクラスで、親しくなった。
ただ、こいつのせいで去年の俺のあだ名がくろっちになった。
別にいいのだけれどもひなが「意味わかんない」「くろはくろでしょ?」と怒っていた。やっぱあいつは怖い。

「おまえ、まーたひなちゃんのこと怒らせたのかぁ?」

ぎくっ

「やっぱ図星か」

「う、うるせぇ」

「なにしでかしたんだよ」

しでかした?

「いや何もしでかしてない。というか俺はむしろひなの命令にしたがったんだけど...」

そうだよな?なんもしてないよなぁ?

「ま、いいけどよ。でもくろっち、ひなちゃんのこと、あんま怒らせないほうがいいぜ」

「へ?」

「多分ひなちゃんには、お前しかいないんだろうよ」

「?そうだな...?」

「そうだよ」

そんなもんか。確かにあいつ友達は少ないみたいだしな。
でもかといって俺にあたってくるのはさぁ、違うとおもうんだけどな。
とにかく家に帰る前に話をつけたい。
あいつは家も近いから、最悪帰り道に、だな。

今日は全校集会だった。
集会中もひなの視線が気になった。
ひなのことと、花憐のことで頭がいっぱいになってしまい、話にに集中できなかった。
つなは寝ていた。

...つなめ。こっちの気も知らないで...。

ついでに言うと、俺が財閥の子供だということは広めていない。
知っているのはせいぜい、ひなと、つなと、あとは一人いる。
広めて変な噂が流れるのは嫌だから。
あと、変な遠慮をされるのも嫌だ。
俺は平凡に生きたい。
普通に友達はいる。
少しなら女子とも話せる。
学校でみんなとばか騒ぎする。

それでいいんだ。

集会が終わり、HRホームルームがあった。2日目なので、簡単な自己紹介、書類、教材運び、各種委員会決めなどですぐ終わった。
気が楽だし、この新学期の独特な緊張感が好きだ。
委員会決めは違う意味での緊張感だったが。
風紀委員立候補では、ひなの「わかってるわよね、クロ?」みたいな目線が怖かった。
まぁそれでもHR は平和に終わった。超楽。

だが、楽なHR も終わり、俺にとっては試練が待っていた。
帰り際、つなが俺の肩をとんっと叩き親指を立てた。
あいつさぁ...

...よし、気をとり直して

「あ、あのさ、ひな」

俺はずっと椅子に座っているひなに声をかけた。
ひなはいっしゅんびくっと震え、数秒沈黙した後、ゆっくり首を曲げ、俺の目を見た。

「...なに」

「朝は、その、ごめん」

続ける。

「俺、ひなの気も知らないでぺちゃくちゃしゃべって。ひなの気持ち考えてなかった。せっかく幼馴染みなんだからさ、仲良くしてよ!」

渾身の発言である。

俺の言葉にひなは、虚を付かれたような顔をしてから、ふんすっ、とそっぽを向きながら言った。

「もう、クロったら、やっとわかったってくれたのね!?私待ってたのよ?当然私もクロと仲良くしたいって気持ちは変わらないんだから!」

ひな、俺の気も知らないでぺちゃくちゃと...
そんなこと言ったら命ないけど。

「帰りましょ?」

ひなは、先程の態度が嘘だったかのような素振りで教室を出て、俺を催促した。
俺は言われるがままに従った。
カッコ悪いってのはわかってるんだよ。

なぜか上機嫌なひな。
へこへこする俺。

俺の精神的疲労は新学期2日目でかなり来ていた。

だが、俺のヘイトをさらに高める出来事が起こる。

「九路瀬様ぁ~!!」

なんと星ノ村女学園の生徒であり、俺の昨日のお見合い相手、宇都宮花憐が校門の前で待ち構えていたのだ。

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お疲れ様です。ろりおです。更新しました。

花憐と陽向、ついに対面。波乱の予感。

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