契約少女の復讐譚
第13話
私はベン・ウォールに全て洗いざらい話した。
グランス家が王家の騎士団に襲われたこと。
自分以外は全員死んでしまったこと。
そしてあの夜の事を知るため、悪魔と契約した事。
ベン・ウォールは真剣にこちらの話に耳を傾け、時折うなずく。
『これで話は終わりです』
そう書いた紙を差し出す。
ベン・ウォールは「そうですか…」と小さく呟く。
「……ター、いえネル様。辛い思いをなさってきたのですね…。そうですか、フェイは本当に…」
え…ベン・ウォールはフェイン・グレイス、父様が死んだ事を知らなかったの?
「おい、ジジイ。お前は本当にあの夜の事を知ってるのか?」
彼が悪魔である事も話してあるので、素の傍若無人な態度だ。
ベン・ウォールも少し違和感を感じるのか、動揺しながら片眼鏡をかけなおす。
「…実のところ私もあまり知らないのですよ」
「ほぉ」
ん、んん?ちょっと待って知らない…って言った?
「貴様…覚悟はできてるんだろうな…」
ちょ、ちょっと待って!ゼイン!
もう殺しそうな勢いなんですけど!
「その手を離せネル。コイツはいっぺん私が殺そう」
私は必死に両手で前に進もうとするゼインを引っ張る。
「別に私は知っているとは一言も言っておりません」
「ほぉ」
ゼインのこめかみに青筋ができる。
ベン・ウォールもそんな煽るようなこと言わない!!
確かに、私達が早とちりしたのも悪かったし。
「世間でも彼は死んだことになっております。しかし私も彼の死については疑問を持っていました。だから貴女がたを騙す様な真似をしてしまった。彼が国家転覆を図ったなど信じられない」
国家転覆。世間ではそういうことになってるんだ。
「それにフェイは最後にあった時、この事が起こる事を予期していたようだった。何かあれば子供と妻を頼むと」
え、父様はこの事が起きるのを予期していたの!
「これは彼の言わば遺言です。私は彼の願いを叶えたい。ネル様…ここで一緒に暮らしませんか?」
頭にかつて慕った父の最期の姿が浮かぶ。「母さんたちと逃げなさい」きっとあれはベン・ウォールの元に逃げ込めという事だったのだろう。
しかし私はすぐに首を横に振る。
「…貴女がこんな辛い事をする必要は無いのですよ。ここで静かに暮らせば…」
彼の家はかつての私の家よりお金持ちだし、不便な暮らしではないだろう。きっと辛い事も忘れて、楽しく暮らせる。
それでも私は首を横に振る。
逃げる事はできない。全ての真実を知り、自分自身で選択をしたい、ううん、しなきゃいけない。
「意志は固いというわけですね。……それではこうしましょう。私も彼についての情報が欲しい。そこで、貴女の情報と私の情報を共有する。協力関係になるというのはどうですか?」
確かに彼とは同じ目的を持つもの同士ここは協力者がいる方がいい。しかも彼はウォール家当主。情報網には期待ができる。
今度は力強く頷く。
するとベン・ウォールは柔らかな笑みを浮かべ、しわくちゃな手を差し出す。
「ありがとうございます。私のことはベンとお呼びください」
喋れないから多分呼ぶことはないと思うけど。
そう思いながら手を握り返す。年を感じさせるしわくちゃの手は力強く私の手を握る。
「レオ様も…」
「我のことはゼイン様と呼べ」
そう不機嫌そうに返すだけだった。多分結果がつまらなくて苛ついてるんだろう。
「早速ですが、現在私が知りうること全てを話しましょう。先程申した通りグラウス家は国家転覆の容疑で爵位の強制返還、領地も王のもとに戻りました。…私が持つ情報も表側の事ばかり。本当に申し訳ありません」
いや、これだけでも知れてよかった。
これから先のことも考えたい。
そう思い紙を生成する。しかし掌に現れたのは小さなメモ用紙ほどの小さな紙。
あれ?サイズ小さくない?
「お前のソルの使いすぎだ。周りのソルが枯渇している。物質の生成は複雑であればある程ソルの消費は激しいからな」
げ、そんな制限あったの…。早く言ってよ!
「基礎中の基礎。それぐらい調べれば分かる。ソルの回復には大体半日かかる」
じゃあベンさんとのお話もここらへんで切り上げようかな。
小さなメモ用紙に文字を書いていく。
『ありがとうございました。私達はもう帰ります』
「そうですか。この街にはまだ滞在なさるのですか?」
コクンと頷く。次の目的地はまだ決まってないし。
「それではこれを差し上げます」
そう言って渡したのは小さな木札。どこかで見た事が…
「通行許可証です。貴女がたがどの様にここまで来られたかは知りませんが、許可証がないと領主側としてもそれは許せませんので」
笑顔なのに言葉の節々にトゲがある。確かに毎回あんな犯罪紛いのことを繰り返すわけにはいかないよね。
木札を裏返すとスミレの家紋が刻まれている。
「ウォール家の家紋でございます。これがあれば他領地への行き来も大丈夫でしょう」
でもこんなの私達が使ったらウォール家が怪しまれるんじゃ…
不安そうな私を見てベンさんはまた微笑む。
「大丈夫です。ウォール家はそれなりに力はあるので。それに貴女がたが身バレしない様に頑張っていただければ良いのです」
笑顔でプレッシャーかけてきたよ。このおじさま。
「それでは話も一旦ここまでにして貴女がたのお部屋をご準備いたしましょう」
あ、ありがとうございます……って、待ってよ、そんなの聞いてないんだけど!?
「おい、じじい!」
ゼインもこのおじさんの勝手さには怒ってるよね?
「食事には必ずドーナツをつけろ」
「かしこまりました」
コイツ泊まる気満々だぁ!!
さっきまでイライラしてたくせに!
「確かにここで一緒に暮らすことは断られたましたが、ご滞在中ならばいいですよね?」
そう言って微笑む。
勿論喋れないわたしには異議をあげることも出来ず、渋々うなずいた。
グランス家が王家の騎士団に襲われたこと。
自分以外は全員死んでしまったこと。
そしてあの夜の事を知るため、悪魔と契約した事。
ベン・ウォールは真剣にこちらの話に耳を傾け、時折うなずく。
『これで話は終わりです』
そう書いた紙を差し出す。
ベン・ウォールは「そうですか…」と小さく呟く。
「……ター、いえネル様。辛い思いをなさってきたのですね…。そうですか、フェイは本当に…」
え…ベン・ウォールはフェイン・グレイス、父様が死んだ事を知らなかったの?
「おい、ジジイ。お前は本当にあの夜の事を知ってるのか?」
彼が悪魔である事も話してあるので、素の傍若無人な態度だ。
ベン・ウォールも少し違和感を感じるのか、動揺しながら片眼鏡をかけなおす。
「…実のところ私もあまり知らないのですよ」
「ほぉ」
ん、んん?ちょっと待って知らない…って言った?
「貴様…覚悟はできてるんだろうな…」
ちょ、ちょっと待って!ゼイン!
もう殺しそうな勢いなんですけど!
「その手を離せネル。コイツはいっぺん私が殺そう」
私は必死に両手で前に進もうとするゼインを引っ張る。
「別に私は知っているとは一言も言っておりません」
「ほぉ」
ゼインのこめかみに青筋ができる。
ベン・ウォールもそんな煽るようなこと言わない!!
確かに、私達が早とちりしたのも悪かったし。
「世間でも彼は死んだことになっております。しかし私も彼の死については疑問を持っていました。だから貴女がたを騙す様な真似をしてしまった。彼が国家転覆を図ったなど信じられない」
国家転覆。世間ではそういうことになってるんだ。
「それにフェイは最後にあった時、この事が起こる事を予期していたようだった。何かあれば子供と妻を頼むと」
え、父様はこの事が起きるのを予期していたの!
「これは彼の言わば遺言です。私は彼の願いを叶えたい。ネル様…ここで一緒に暮らしませんか?」
頭にかつて慕った父の最期の姿が浮かぶ。「母さんたちと逃げなさい」きっとあれはベン・ウォールの元に逃げ込めという事だったのだろう。
しかし私はすぐに首を横に振る。
「…貴女がこんな辛い事をする必要は無いのですよ。ここで静かに暮らせば…」
彼の家はかつての私の家よりお金持ちだし、不便な暮らしではないだろう。きっと辛い事も忘れて、楽しく暮らせる。
それでも私は首を横に振る。
逃げる事はできない。全ての真実を知り、自分自身で選択をしたい、ううん、しなきゃいけない。
「意志は固いというわけですね。……それではこうしましょう。私も彼についての情報が欲しい。そこで、貴女の情報と私の情報を共有する。協力関係になるというのはどうですか?」
確かに彼とは同じ目的を持つもの同士ここは協力者がいる方がいい。しかも彼はウォール家当主。情報網には期待ができる。
今度は力強く頷く。
するとベン・ウォールは柔らかな笑みを浮かべ、しわくちゃな手を差し出す。
「ありがとうございます。私のことはベンとお呼びください」
喋れないから多分呼ぶことはないと思うけど。
そう思いながら手を握り返す。年を感じさせるしわくちゃの手は力強く私の手を握る。
「レオ様も…」
「我のことはゼイン様と呼べ」
そう不機嫌そうに返すだけだった。多分結果がつまらなくて苛ついてるんだろう。
「早速ですが、現在私が知りうること全てを話しましょう。先程申した通りグラウス家は国家転覆の容疑で爵位の強制返還、領地も王のもとに戻りました。…私が持つ情報も表側の事ばかり。本当に申し訳ありません」
いや、これだけでも知れてよかった。
これから先のことも考えたい。
そう思い紙を生成する。しかし掌に現れたのは小さなメモ用紙ほどの小さな紙。
あれ?サイズ小さくない?
「お前のソルの使いすぎだ。周りのソルが枯渇している。物質の生成は複雑であればある程ソルの消費は激しいからな」
げ、そんな制限あったの…。早く言ってよ!
「基礎中の基礎。それぐらい調べれば分かる。ソルの回復には大体半日かかる」
じゃあベンさんとのお話もここらへんで切り上げようかな。
小さなメモ用紙に文字を書いていく。
『ありがとうございました。私達はもう帰ります』
「そうですか。この街にはまだ滞在なさるのですか?」
コクンと頷く。次の目的地はまだ決まってないし。
「それではこれを差し上げます」
そう言って渡したのは小さな木札。どこかで見た事が…
「通行許可証です。貴女がたがどの様にここまで来られたかは知りませんが、許可証がないと領主側としてもそれは許せませんので」
笑顔なのに言葉の節々にトゲがある。確かに毎回あんな犯罪紛いのことを繰り返すわけにはいかないよね。
木札を裏返すとスミレの家紋が刻まれている。
「ウォール家の家紋でございます。これがあれば他領地への行き来も大丈夫でしょう」
でもこんなの私達が使ったらウォール家が怪しまれるんじゃ…
不安そうな私を見てベンさんはまた微笑む。
「大丈夫です。ウォール家はそれなりに力はあるので。それに貴女がたが身バレしない様に頑張っていただければ良いのです」
笑顔でプレッシャーかけてきたよ。このおじさま。
「それでは話も一旦ここまでにして貴女がたのお部屋をご準備いたしましょう」
あ、ありがとうございます……って、待ってよ、そんなの聞いてないんだけど!?
「おい、じじい!」
ゼインもこのおじさんの勝手さには怒ってるよね?
「食事には必ずドーナツをつけろ」
「かしこまりました」
コイツ泊まる気満々だぁ!!
さっきまでイライラしてたくせに!
「確かにここで一緒に暮らすことは断られたましたが、ご滞在中ならばいいですよね?」
そう言って微笑む。
勿論喋れないわたしには異議をあげることも出来ず、渋々うなずいた。
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