神の使徒、魔王卿となり平和を求む

こにユウ

結局そう収まるよな

「お断りします」 

そう言われ、俺の思考は一旦停止した。正直ここまで来て断られるとは思ってもみなかった。
悲しみより驚きの方が大きい。
だから

「その、理由を聞いてもいいか?」

「はい。そうですね。ではまず…」

そう言ってグリムは言いづらそうに目を逸らし

「その、とても言いづらいのですが結婚指輪は式の時にほしいな、と思いまして…」

「・・・」

言われてみればそうだ。婚約指輪は百年前に渡した。そして、常識的に考えれば次に指輪を渡すのは結婚式の時の結婚指輪だ。タイミング的には間違ってはいなかった。婚約指輪であればだが…

「えっと…」

俺が気まずそうにしていると

「ぷっ…あはははははっ!!」

グリムもう堪えきれないと言わんばかりに笑いだした。俺が驚いていると

「すいません、バース。少し意地悪でしたね。でもこれは先程の仕返しです。」 

そう言って下を小さくべ〜っと出すグリムは心底楽しそうだった。

「結婚の申し出は受けさせていただきます」

その言葉だけは聞き逃さなかった。

「本当か!」

「本当ですよ。いくつか条件がありますが」

条件…だと?

「条件?」

「はい。
 一つ目は浮気をしないこと。
 二つ目に絶対に無理や無茶をしないこと
この2つを約束してください。」

「おぅ。分かった」

「即答ですか!?」

「あぁ、即答だ。浮気はしないし、無理も無茶もしない。」

グリムは嬉しそうにしていたが、少しムスッとなって

「じゃあ、この前みたいに私が攫われたときもあんな風に無茶しないでくださいね」

「あれは無茶に入らないから」

「いえ!あれはどこからどう見ても無…」

「お前が関わってることなんだ。あの程度無茶でもなんでもない。」

ボッ

とグリムは顔を赤くした。
まぁそうだよな。俺もなかなかにクサイセリフを吐いた自覚はある。少し恥ずいが

「わかりました。私の負けです。では結婚しましょうか」

「あぁ」

そうして俺とグリムはキスをした。
その瞬間…

「「「バースさん!グリムさん!ご結婚おめでとうございます!」」」

俺とグリムはバッと離れ、周りを見ると
花畑を囲んでいる森の中から師匠を始めとするウォーグ家の面々それにレイエルさんと他の使用人の人達まで出てきた。
一体これは!?

「驚きましたか?バースさん。」

そう言って出てきたのは師匠だ。

「師匠これは?」

「バースさんとグリムさんを驚かせるサプライズです。みんな、レイの転移魔法と俺のスキルで飛んできました。」

「納得です。ですが私は隠蔽魔法を解いているのですが…」

「あぁ、それはありそうな事情をでっち上げてバースさんが隠蔽魔法を使わざる得なかったことにした。使用人の人達はみんな知ってるよ。」
 
これは、うん。グリムも驚いているから二人とも嵌められたな。悪い気はしないが…

「では!みなさん!バースさんとグリムさんの結婚決定をパーッと祝いましょう!」

そう言って師匠はアイテムボックスの中から机に食べ物、飲み物、皿などなどたくさんのものを出した。

そこからはもうどんちゃん騒ぎで馴れ初めを聞かれたり、どこが好きなのかとか色々聞かれた。

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「それでは、これでお開きにします!みなさんは俺とレイが送るので並んでください!」

夜も更け、祝い事も終わった。

少し離れた場所で一息ついていると

「お疲れ様です。バース」

そう言って横にグリムが座った。

「楽しかったですね」

「そうだな。少し疲れたが…」

「ふふ、確かにそうですね。でもこんなに満足した日はいつ以来でしょう
最愛の人との結婚を確定でき、
それをたくさんの人に祝ってもらう。」

…こんな幸せな日が永遠に続けばいいのに
グリムはそう呟き、遠くの方を見ていた。

「そうだな。続くさ。俺が守る。それに頼れる人たちが沢山いる」

「そうですね。」

そういえば、言ってなかったことがあったな。

「グリム、話がある。」

「はい、なんでしょう。改まって」

「これから二人で住もう。」

「なにを言ってるんですか?もうウォーグ家でお世話になって…」

「そうじゃなくてな。
家を買ったんだ。そこに二人で暮らさないか?」

そう言うとグリムは耳まで赤くして

「もぅ!もぅ!なんでそんな大事なことを一人で進めてるんですか!」

「その、ダメだったか?」

喜ぶと思ったのだが

「いいですよ!でもこれからは一人で決めずに二人で決めていきましょうね!?」

「あぁ、そうする」

はぁ、っと疲れたようなため息をして、

「これからよろしくお願いします。あなた」

グリムはそう言った。
『あなた』かうん。改めて言われると照れるな。
だが、答えなければならないだろう

「こちらこそ、よろしく頼む。グリム」


「おーい!バース、グリムさん帰りますよ!」

と、師匠に呼ばれたので
 
「いくか」

「はい!」

俺とグリムは立ち上がり、花道を腕を組んで師匠とレイエルさんが待つ場所へとゆっくりと歩いて行った。

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