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代打・ピッチャー、俺 (少年編)

雨城アル

12投目・電撃になった痺れ

「おーい真中ー何やってんだよー」

「す、すみません三鷹先輩!今行きます!」


真中は谷内との会話を終えると、そそくさに戻っていった。痺れるように痛い肩を回し、ピッチャープレートに足をかける。そして7割ほどの力で行うピッチングを終えて、本腰を入れて投球練習に臨んだ。

「よーし、じゃあ本気で投げてこい」

「わかりました」


大きく振りかぶって右足を踏み込み、いつものように腕を振り下ろした。


その時……



「グキッ」


「うッ……!?」


真中は咄嗟にしゃがみこみ、現実と虚偽の世界を往復して、嫌に冷えた汗を拭った。凍てつくような息を吐いた後に、恐る恐る左肩を触れると……

「グァアアッッ……!!」

案の定、投手生命をつなぎ止める細い線は、自身を蝕んでいた無数の棘と、ささくれのある刃物によって断たれていた。
近くにいたチームメイトは真中に駆け寄り、心配を混ぜた問いかけをした。真中は、その問いかけすらも尋問に思えてしまった。
完全に正気を失っていたのである。


「監督!!真中が肩を押さえて顔色を悪くしています!!」

「なっ何!?すぐに救急車を呼ぶ!!」


しばらくして、真中は病院へ連れて行かれた。



「お母さん、直紀くんは左肩を壊してしまっています、もう野球はできないでしょう……」

「そ、そんな……今後も投げるということはできないのでしょうか?」

「残念ながら腕を挙げるので精一杯でしょう」


真中の母は、取り乱しながらも冷静になろうと努力し、真中を医者と面会させた。

「非常に言いづらいんだけども……」

「壊してますよね、肩」


自ら悟っていた真中に、医者は驚いた。

「君の言うとおり肩は壊れている、今後は腕を挙げるだけで精一杯になると思うよ……」


暫しの沈黙を迎え、その場にいた誰もがうつむいた様子だった。しかし真中は少し考えた後に、前を向いて質問をした。



「右肩なら……」



「え?」


「右肩なら野球ができますか?」


この一言に、医者と母は驚愕していた。

「直紀、あんた……」


「お母さんがいる前で言うのもあれなんだけどね、右肩なら野球はできるよ」


医者は母に配慮しながらこう続けた。


「でも今まで以上に頑張らないといけないし、人生をやり直すような感覚になると思う」

「僕、プロ野球選手になりたいんです!」


医者は間を置いて言葉を紡ぎ、両手で拳を握って熱弁した。



「君が自分を信じて努力し続ければ、きっとその夢は叶う……!まだまだ若いんだから時間はあるさ、おじさんみたいな勉強尽くめで何もできなかった学生時代だったなんて後悔しないように生きていってほしい!!」



語り終えた医者は我に返り、熱くなってしまったことを母に謝罪した。


しかし、その言葉は真中を大きく前進させる火種となった。

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