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代打・ピッチャー、俺 (少年編)

雨城アル

9投目・曇り空の一日

耳を疑うような言葉だった。警戒的な谷内から、感謝を伝えられるとは思っていなかったのだ。

「ど、どういたしまして」

「助けてもらったら感謝しなさいってママに言われてるだけだし……!」

「そっかぁ、偉いね谷内さんは」

「こ、こんなこと当たり前のことでしょ!」


谷内はしっかりと感謝を伝えられる礼儀正しい子のようだ。


授業内のテストが終わり、今日という日に一段落がついた。合間の休憩時間に谷内は人気者になり、周りには人集りができていた。

「谷内さんって御古根からきたんだよね?」

「御古根って都会じゃーん!」

「今度話聞かせてよー!」


御古根市は県内にある都会のようなところで、有名なイベントやお店も数多くはびこっている人口密度の高い場所である。

今日の授業が終わり、練習に行こうと急いで帰ろうとした時に、谷内が少しフラついたような足取りで近づいてきた。

「真中待ってよぉ……」

「どうしたの谷内さん」

「あんなに人集りができると思ってなくてちょっと疲れた……」


長引きそうな予感がしたので、敢えてそっけなく返事をした。


「そっかぁ家でゆっくり休みなよー」

「え、ちょっとそんな急いでどこに行くのよー?」


真中は振り返ってこう言い放った。


「野球の練習」

「野球?」

「うん、野球」

「野球が好きなの?」

「うん」


短い静寂がやってきて二人が固まっていたところに、宇形がそばに近寄ってきて沈黙を切り裂いた。

「二人とも何してるの?」

「いや、特になにも」


宇形は頭にはてなを浮かべたが、深堀りせずに真中を練習に誘った。


「もしかして二人ともお友達?野球仲間ってやつ?」

谷内が問いかけてくるので、今度ははっきりと伝えることにした。


「うん、こいつは同じクラブチームの宇形だよ」

「よろしくね!谷内さん!」


しかし谷内は、表情を曇らせてこう言った。

「野球なんてバカのやることじゃん……」

「え?」


真中は冷静になって聞いてみることにした。

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