極振り夫婦のVRMMO生活

峯 こうめい

極振り夫婦の誤算と奇襲

 マイが仲間になり、作戦が決まってから数日、特に何も起こらず平和な日々が続いた。そんな、安心しきっていたある日、俺たちは森を歩いていた。
 だが、平和が崩れるときはいつも一瞬だ。…………そう、この時も。

「待って、誰かいる。それも一人や二人じゃない。大人数」
 ミリアがそう言い、俺たちは立ち止まる。その瞬間、地面から俺たちを囲うようにつるが伸びてきた。何本も何本も続々と出てくる。
 相手の作戦が、違う!?……待て、動揺するな俺。こういうときは、すぐにするべき対応をするんだ!

「スペシャルスキル、忍、発動!」

「スペシャルスキル、女神の加護を受けし者、発動!」

「スペシャルスキル、格闘家・雷、発動!」

 俺たちはそれぞれ、戦闘態勢に入った。それと同時に地面から伸びたつるが、俺たちを拘束しようと向かってくる。

「ユウキさん!ここは私たちに任せて、この魔法を発動している魔法使いを倒してください!」
 マイが叫ぶ。
 恐らく、俺たちが五分間無敵なのは相手は知らないだろう。ここで俺が素早く魔法使いを倒さなければ、いつまでも三人が足止めをくらってしまう。
 俺は草むらの中に入っていく。
 …………いた!三人!

「忍法・燃刃!」
 俺は短刀を魔法使いに向かって振った。すると、鋭いナイフのような形をした火が飛んでいく。見事、命中する。俺はまた短刀を、今度は二回振った。

「よし、三人撃破」
 冷静な口調でそう言い、また走り出す。すると、木の上から大剣が降ってきた。だが、透明なバリアに守られているかのように、大剣は弾かれる。

「忍法・樹木燃やし!」
 俺は、大剣が降ってきた木に息を吹きかけた。すると、木が燃え始めた。数秒たち、さっきまで聞こえていた悲鳴が止んだ。
 すぐに俺は魔法使いを探し始める。
 二分後、大分魔法使いを倒した。

「そろそろ行くか」
 俺はそう言い、森を出て草原に向かった。もし奇襲などをされたら、草原に集まると前決めたからだ。
 草原に着くと、そこには大勢の剣士や魔法使いに囲まれた三人がいた。
 チッ、相手も対応が早いな……。

「忍法・影移動!」
 俺は影だけとなり、三人のところへ移動した。

「裕樹君!無事だったんだね!」
 莉乃がそう言うので、俺は頷いた。

「あと二分、いくよ!」
 ミリアが叫ぶ。それと同時に、俺たちはそれぞれ攻撃を始めた。

「忍法・埋もれ土!」
 俺は地面に右手をつけた。すると、目の前にいる大勢の剣士たちは地面に埋もれていく。やがて、完全にのみ込まれた。



「よいしょ!」
 女神モードを発動したことによって、金髪になり瞳がブルーになった私はそう言って、大剣を振り上げた。一気に十人ほど吹き飛ぶ。私は、スキル処刑人を持っているため、敵を倒せば倒すほどATKが強化される。私にピッタリのスキルだ。
 女神モードになったことによって背中から生えてきた羽で、飛ぶ。といっても、数センチ浮いてるだけだけど……。
 少し後ろにさがってから、群がる敵たちに向かって剣を向けながら、思い切り突っ込む。
 すると敵たちは、ドミノ倒しのように倒れていく。
 モンスターを倒すのも良いけど、人と戦うのも爽快感があって良い!



「たっ!てやぁ!」
 格闘家・雷を使い、音速になった私は敵を倒していく。私は、勿論ナックルなので手を使うが足も使う。靴のつま先には針がついており、相手に十分な致命傷を与えることができる。

「衝撃波!」
 スキル、衝撃波を使うと攻撃をした後、強力な衝撃波が飛んでいく。大分、相手の数が減ってきた。
 他の三人も、強いな……。私も、負けられない!



 死ね!裏切り者!と言いながら、片手剣の男が突っ込んでくる。 振り下ろされた剣を短刀で弾き飛ばし、思い切り顎に頭突きをする。よろけたところを自慢のジャンプ力で頭を踏みつけ、空中で逆さまになりながら背中を何度も斬りつける。そして、逆さまの状態からくるん、と体を回し着地する。
 これでも一応、ス○イリーの仮面をつけたヤバイ動きの奴がいた、とイベントの後話題になった。
 スキル、アクロバティックを持っているため、空中で一回転になったりバク転をしたりすると、AGIとMATが上昇する。このゲームを始めたばかりの頃、そういう動きを猛練習したので私にとっては、ありがたいスキルだ。

「水龍!」
 私がそう言うと、龍の形をした水が敵に飛んでいく。そして、龍に当たった敵は消えた。
 すごい威力だ。一撃で倒せる魔法なんて、そうそうない。
 まあ、私がMATに多く振ってるからっていうのもあるんだろうけど……。



「大分、減ってきたな……」
 俺がそう言うと、他の三人は頷いた。そして、女神モードの無敵の効果が無くなった。
 すると、見覚えのある五人の男が敵の群れの中に入ってきた。前、ミリアに一対五でボロ負けした例の男たちだ。

「お久しぶりですね、ミリアさん、ユウキさん、リノさん。そして、スマイルさん」
 
「前は一対五でも余裕だったかもしれませんが、今度はそうはいきませんよ」

「今度はお互い全員で戦いましょう。進化した俺を見せてあげます」

「スペシャルスキル、勇者、発動!」
 片手剣の男がそう言う。
 あいつもスペシャルスキルを獲得したのか……。一体どんな効果があるんだ?

「効果は、ATKとMATが+100。そして、五分間パーティーメンバーのATKが+100です。…………さあ、さっさと始めましょう。あなたたちが勝ったら、もうこんなことはやめます」

「そっちから、来ていいですよ」
 片手剣の男がそういった瞬間、赤い電気が相手の魔法使いの目の前へ伸びていった。ミリアだ。
 だが、殴られた魔法使いは吹っ飛ばず、消えない。

「た、耐えた……」
 リノがそう言う。
 ミリアの攻撃に耐えられるよう、魔法使いたちの防御力を底上げしたのか!

「ミリア、一旦戻ってこい!何をしてくるか分からない!」
 俺がそう叫ぶと、ミリアが戻ってくる。
 ミリアの攻撃は耐えられても、リノの攻撃はさすがに耐えられないだろう。

「私が行く!」
 莉乃がそう言い、低空飛行で魔法使いに向かっていく。だが、大剣の男が立ちふさがる。
 大剣使いは、魔法使いの元へ俺たちを近づけさせないようAGIを底上げしたのか……。莉乃を魔法使いのところへ行かせるには、片手剣の男と大剣の男を足止めしなければならないと言うことか……。

「忍法・影つかみ!」

「忍法・影燃やし!」
 俺は、大剣の男の影をつかみ、動けなくしてから燃やす。すると、片手剣の男が俺に向かってくる。だが、マイが立ちふさがった。リノとミリアはその隙に、魔法使いの元へ行った。

「お前は、裏切り者じゃねぇか」
 ミリアの前でないと、この男は敬語を使わないらしい。

「今ならまだ、土下座して仲間に入れてくださいって謝れば許してやるぞ」

「私はミリアさんたちを守ると決めたんです!仲間になんてなりません!」

「そうか、じゃあお前も死ね」
 そう言って男は片手剣を振り下げたが、蹴りで弾かれる。だが、マイの攻撃を避けた。その後も、男とマイの攻防はしばらく続いた。
 すると、影燃やしを使って継続ダメージをくらわせていた大剣の男が消えた。
 やっとか……。
 
「こっちは片付いたよ!」
 莉乃がそう言いながら、ミリアと走ってくる。
 
「じゃあ、あとは片手剣のリーダーだけだね」
 ミリアがそう言うと、

「こいつは、私一人にやらせてください!」
 と、マイが叫んだ。

「 おそらく、こいつらが作戦を変えたのは私が情報を流したのを気付いたからです!あなたたちが不利な状況になってしまったのは私の責任なんです!」

「だから、私にやらせてください!」
 その言葉を無視して、俺が行こうとすると、ミリアに制された。

「ダメだ!あのままじゃあ、マイがやられる!ミリアなら分かるだろ!男の方が流れをつかみ始めているのを!」

「ユウキ、大丈夫だよ。仲間を、友達を信じよう」
 ミリアは笑顔でそう言った。
 俺は、分かった、と言い頷いた。
 それから、一時間ほどたった。マイがおされており、攻撃を弾くのに精一杯で反撃ができていない。

「今だ!死ね!」
 男はそう叫んで、片手剣をマイに突き刺した。だが、マイは消えない。

「な、何で!?…………まさか一時間たったのか……?」

「水流波!」
 マイはそう言って、男の顔の目の前に手を出した。すると、青い波動が男の顔を包むように半円に広がった。その直後、男は消えた。

「ここ数日間集めたステータスポイントをDEFに多く振っておいて良かったよ……。スペシャルスキルの効果が切れれば、一発で死なないかなと思ってわざと攻撃を受けたんだ。カウンター狙って」
 すると、残されたアンチたちは走って去っていった。

 俺たち、勝ったんだ……!

 その後、俺たちは抱き合って喜んだ。

 仲間と協力してつかんだ、最高の勝利だ!

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