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女神様(比喩)と出会って、人生変わりました

血迷ったトモ

第19話 お出掛け(3)

 カフェに入り、注文したコーヒーとケーキがテーブルに並べられた頃合になり、揶揄われ過ぎて、少し拗ねていた千穂の機嫌が直ってきたようだ。

「実は、ちょっと前から気になってたお店なんですけど、ご覧の通りの雰囲気と客層でして、1人で入れなかったんですよ。」

 そう言って、悠也が周囲を見渡すと、落ち着いた雰囲気の老齢の夫婦と思しき男女、20代後半くらいの大人な雰囲気のカップルなどがちらほら見受けられ、彼が1人で入店する事のハードルの高さを如実に物語っていた。

「そうなんですか。では、お役に立てたようで何よりです。」

 やけに楽しそうな笑顔を浮かべる千穂に、一瞬ドキリとしてしまう悠也。それを誤魔化すように、コーヒーに口をつける。

「…美味しいですね。」

 少し驚いた表情で呟く。

「はい。」

 悠也に倣ってコーヒーを飲んだ千穂も、思った以上に美味しかったようで、同様に驚いた表情で頷く。

 コーヒーの味わいが、店内に流れるクラシックとよくマッチしていて、癖になってしまいそうである。
 続いて、それぞれが頼んだケーキを食べる。
 少々欲張った悠也は、フルーツケーキとベイクドチーズケーキを、千穂はシンプルなイチゴのショートケーキを頼んでいた。

「おぉ…。あんまり癖が強くなくて、尚且つさっぱりしてて美味しいです。」

 まず、チーズケーキを一切れ口に運んだ悠也は、コーヒーに引き続き、その味に舌鼓を打つ。そして、フルーツケーキも切り分け、そちらも美味しく食べ始める。

「いや〜、本当に来て良かったです。」

 ニコニコと美味しそうに食べる悠也。その向かい側で、千穂はショートケーキを切り分け、1口大に切ったケーキ、上品さ仕草で食べる。

「本当ですね。とっても美味しいです。」

「あ、ショートケーキも美味しいんですか。じゃあ次回は、俺も頼もうと思います。」

「…ではその前に、少し味見をしますか?」

「へ?あ、どうも。」

 別にねだった訳では無いので、千穂の言葉の理解が一瞬遅れたが、直ぐに、分けてくれるのだと勘違い・・・をした悠也は、3分の2ほど食べ進めていたチーズケーキが乗っている小皿を手に取り、載っけてもらおうと差し出そうとした。
 しかし千穂のフォークは、綺麗に切り分けられたショートケーキを刺したまま、何故か悠也の口元・・へと運ばれていった。

「どうぞ。」

「はい?」

 少し頬を赤く染めながら、ケーキを差し出してくる千穂を見て、悠也は唖然としてしまう。

ーな、何これ!?もしかしてこれは、あの、伝説の、『あ〜ん』とかいうやつか!?まさか実在しただなんて!!って、じゃなくて!これ、食えって事だよな!?マジか…。ー

「…で、では、いただきます。」

 緊張のあまり、唾が沢山出てきてしまい、慌ててそれをゴクリと飲み込む悠也。

ーど、どうする!?なるべくフォークは咥えないよう、軽くケーキのみを食べるか?しかしクリームとかが沢山フォークに残ったままになっちまう…。だからと言って、フォークが綺麗になるように、ガッツリ咥えるか?ー

 そんな事を考えてしまい、口を開いたまま少しの間、躊躇していると、あろうことか、千穂が自ら悠也の口の中にケーキを押し込んできた。

「あ、あ〜ん。」

「え! …モグモグ。」

 驚いてしまった悠也は、ついフォークの根元まで口の中に入れてしまう。

「どう、ですか?」

「…と、とても美味しいです。…ふむ。」

 
 羞恥のあまり、味など碌に感じる事など出来なかったのだが、取り敢えず無難に答えておく悠也。
 顔を赤くしながら咀嚼する悠也は、ここでふと、『俺も同じ事をやったらどうなるのだろう?』と思いついてしまった。

ー俺ばっかりがあたふたしてるのも、何か不公平だよな?てな事で、レッツトライ!ー

 などと、巫山戯たノリで実行に移す。

「貰うだけ貰うってのも悪いので、天戸さんにも俺の分を分けますね。俺のはチーズケーキとフルーツケーキなんですけど、食べられない物とかありますか?あ、もちろんフルーツケーキに乗ってるメロンはあげますよ。」

 言っている最中に、千穂がメロンが好きだと言っていたのを思い出し、最後に付け加える。

「え?あ、はい。ありがとうございます。頂いてもよろしいでしょうか?」

 おずおずといった表情で、悠也の狙い通り小皿を差し出してくる千穂。
 思わず笑みが零れそうになるのを耐えながら、悠也は千穂でも楽々食べられるよう、まず、チーズケーキを少し小さめに切り分け、フォークに刺してから、彼女の口元に持っていく。

「え?」

「はい、あ〜ん。」

 戸惑う千穂に対して、ニッコリと笑顔を浮かべて、悠也は更にその口許に近づける。

「な、何やら悠也さんの笑顔が怖いです。」

「はて?何のことでしょう?怖くありませんよ?さぁ、どうぞ。あ〜ん。」

「あ、あ〜ん…。モグモグ…。ごくん。…コホン。えと、とても気恥しいですね。」

「はい。そうですね。」

「すみません。ちょっと調子に乗りすぎてしまったようです。」

「いえいえ。分かってくれたのなら良いんですよ。特にここは人の目が多いですからね。バカップルのような真似をして、周囲から注目を浴びるのは、恥ずかしいですから。」

「そうですね。考えが足らなかったようです。」

 千穂は悠也と同じ立場に立たされ、その気持ちを知り、少し項垂れてしまっている。そんな彼女に対して、悠也は笑顔で語りかける。

「という訳で、こちらもどうぞ。」

「え?」

 その言葉に、顔を上げて悠也の方を見た千穂の目には、笑顔でフルーツケーキをフォークに刺して、自分の口元へと運んでいる姿が写った。

「はい、あ〜ん。ささ、どうぞ。遠慮せずに。天戸さんの大好きな、メロンですよ。」

「うぅ…。あ、あ〜ん…。」

 こうして、悠也の2倍、辱められた千穂は、顔を真っ赤に染めて、今更、悠也に遊ばれている事に気付くのであった。

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