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女神様(比喩)と出会って、人生変わりました

血迷ったトモ

第17話 お出掛け(1)

 着替え終わった後、市街の中心に近い所にある悠也の家から、徒歩5分程の場所にあるショッピングモールまで来ていた。十階建てで、ここに来れば、日用品から工具など、あらゆる物が手に入る程、テナントが充実していた。

「さて、どうしますか?」

 外は暑かったので、少し汗をかいてしまった悠也は、千穂からちょっと距離を取りながら聞く。
 すると、千穂は悠也の気も知らないで、ずいっと距離を詰めながら、『どうしましょうか?』と悩んでいる。

「えっと、今、何か欲しい物とかありますか?」

 取り敢えずショッピングという事で、ここに来たが、悠也は特に今は欲しい物無かったので、千穂の希望を優先するつもりのようだ。

「…では、まずは、服を見たいです。悠也さんは、大丈夫ですか?」

「えぇ、分かりました。」

ー果たしてここに、天戸さんのお眼鏡にかなうような服は置いてあるのか?ー

 大金持ちの千穂が気に入るような、そんな高級な服があるのか些か疑問だが、彼女が見たいというのなら、それを断る理由は悠也には無い。
 流石に近所なだけあって、構造を良く知っている悠也は、千穂を先導しようと彼女の前に出ようとする。

「じゃあ、まずはこっちです…ね?」

 しかし、左手に温もりを感じて、ピタッと立ち止まってしまう。
 ギギっと壊れた機械のように首を動かして、恐る恐る左手を見ると、なんと千穂がふんわりと包み込むように、握っていた。

「…天戸さん?」

「…あの、その、はぐれたら大変ですので!だ、ダメですか?」

「いえ、問題ありません。行きましょう。」

 上目遣いでそんな事を言われてしまっては、悠也はもう諦めるしかない。全身の筋肉がカチコチに固まるのを感じながら、隣に来た千穂の手を軽く握り返しながら、ゆっくりと歩く。

ーえ〜っと、こういう時は…。そう!歩調を合わせないとだ!それと、緊張で手汗がヤバいことにならないよう、なるべく何も考えないようにしないとだ!それと…。どうすりゃ良いんだ!?ー

 表面上は、なんとか冷静さを保っているが、その実、このように、心の中ではてんやわんやであった。
 そのまま、エスカレーターに乗ろうと、店内を進んで行くと、普段は一切感じない視線を、多く感じる事に、悠也は気が付いた。

ーこ、これは…。明らかに注目の的になってるな。1人で歩いてる時とは、感じる視線の量が天と地の差ほどもあるぞ。ついでに、嫉妬とかの嫌な感じのする視線もちらほらと…。怖〜いお兄さんに絡まれなきゃ良いけど。ー

 そんな事を考えつつ、エスカレーターの手前で、一旦立ち止まる。流石にここでは、よく見るバカップルのように、手を繋いだまま塞ぐように乗る度胸は持ち合わせて無いため、一旦手を離そうとしたのだ。しかし、その瞬間、千穂から無言で笑顔を向けられる。

ーあ、離すんじゃねぇぞってか。ホントに天戸さんは謎だな。ー

 千穂と手を繋ぐのが嫌だという訳では無いので、大人しく手を繋いだまま、悠也が前に行き、彼女の方を向く形でエスカレーターへ乗る。
 突き刺さる視線を、なるべく意識外へと追いやりながら、素知らぬ顔を意識する。
 そんなこんなで、漸く目的の店の前に着いた時には、既に悠也は精神的に疲れ果てて居た。

「…ここです。着きました。」

「あれ?何か疲れていませんか?」

 悠也の声音に、少し疲れが出ていたのか、千穂が聞いてくる。

「いえ、大丈夫です。天戸さんと歩いてると、流石に突き刺さるやっかみの視線が多いですね。」

 周囲を見回しながら言う。実際に今も尚、多くの人々から、特に男性陣からの視線が突き刺ささっている。

「あ、なるほど。私の場合は既に慣れてるので、気付きませんでした。すみません。」

「いや、天戸さんが謝る事じゃ無いですよ。しっかし可愛いに越したことは無いとは思いますけど、あんまりにも可愛すぎる・・・・・のも考えものですね。あはは…。」

 突き刺さる視線の数々を、慣れているの一言で片付けた千穂に、その気苦労の一端を見たような気がした悠也は、しみじみと呟く。
 そんな悠也の言葉に、千穂は表情を固まらせて、動きを止める。

「え。」

「え?」

「あ、いえ、何でも無いです。さぁ、中に入りましょうか。」

 慌てて取り繕った千穂は、悠也を引き連れて店の中に入っていく。
 前を歩く千穂の表情は、悠也からは見えなかったが、繋いだままの手に、少し力が入っているのを感じた。

ーいきなりどうしたんだ?何か失礼な事を言ったか?ー

 千穂の様子が急に変わったのが、自身の言動が原因という事までは気付いているが、180度逆の事を考える悠也。

ーう〜ん…。女心は分からん。まぁ、直接何も言わないって事は、大したことじゃ無いって事だろ。ー

 これ以上の思考は無駄だと、考えるのを止めた悠也は、千穂に引かれるがまま、店に入っていくのだった。

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