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女神様(比喩)と出会って、人生変わりました

血迷ったトモ

第12話 贈り物をしよう

 千穂の待つ部屋の前で、悠也は大きく深呼吸をする。

「すぅ〜、はぁ〜。…ふぅ。よし、入るか。」

 呼吸が整ったところで、ノックして呼びかける。

「神田悠也です。」

「どうぞ、お入りください。」

 返事を待ってから、ドアを開く悠也。
 ゆっくりと落ち着いて中に入ると、そこには、優雅に紅茶を飲む、千穂の姿があった。

「こんにちは。突然お邪魔してしまい、すみません。」

「いえ、悠也さんであれば、いつでも大歓迎ですので、お気になさらないで下さい。」

「ありがとうございます。」

 微笑みながら言う千穂を、直視出来なくなったため、悠也は少し目線を逸らしながら、礼を言う。千穂ほどの美少女に『大歓迎』と言われてしまい、更には微笑みまで向けてもらい、気恥しさが臨界点まで達しそうになったのだ。

「どうぞ、お掛け下さい。」

「はい。」

 悠也は、緊張した面持ちで、千穂の対面に腰掛ける。
 丁度そこに、ドアをノックしながら、瀬奈が入ってくる。

「失礼します。紅茶をお持ちしました。」

「あ、ありがとうございます。」

 まるでタイミングを図ったかのように入ってきた瀬奈に、驚きながらも礼を言う。

「メイドですから。」

「え。」

 またしても心を読まれた悠也は、思わず聞き返してしまう。
 だが、そんな悠也の言葉が聞こえなかったのか、そのまま華麗に一礼してから部屋から出てゆく。
 口を半開きにしながら、悠也はその背中を見送る事しか出来なかった。

「さ、さて、では、本日はどういったご用件でしょうか?」

 千穂は苦笑しながら、話を切り出す。

「あ、はい。えっと、まずは、先日は、大変お世話になりました。これ、この間借りた服ですが、お返しします。」

 言いながら、持ってきた紙袋を差し出す。

「え?」

「はい?」

 だが、千穂は全く予想していなかったのか、首を傾げ、心底不思議そうな表情を浮かべる。

「えっと、ですから、この間借りた服を、そのまま自分の物にする訳にもいきませんから、お返しします。」

 自分の言葉がよく聞こえなかったのかと思った悠也は、繰り返し同じ事を言いながら、紙袋を差し出す。

「あ、服ですか。えっと、その服を着れる者が、この家には居ませんので、出来れば悠也さんに持っていてもらいたいのですが…。」

「いえ、しかし…。」

 考えただけでも身震いしてしまいそうなレベルの高級感が滲み出ている服を、おいそれと貰う訳にもいかず、食い下がろうとする悠也。
 だが、千穂の方が、一枚上手だったようだ。

「では、処分する他ありませんね…。男性物の服がこの屋敷にあったら、お父様やお母様に、小一時間は問い詰められてしまいますから…。」

 悲しそうな表情と、暗いトーンの千穂に、降参する他無くなった悠也。

「…分かりました。有難く頂戴致します。」

「はい、助かります!」

 先程の悲しそうな表情は何処に行ったのか、満面の笑みの千穂に、悠也は心の中でため息をつく。

ーくそぅ。年下でも、女性は女性か…。まったく、良い性格してるよ。ー

 取り敢えずは、大人しく服を貰う事にした悠也は、ガサゴソと音を立てながら、紙袋からとある物を取り出す。

「よいしょっと。これ、どうぞ。」

「これは…?」

 悠也が取り出したのは、まだビニールに包まれたままの、気だるげな表情をしたクマのぬいぐるみだった。

「これは、服を借りたお礼にと、用意した物なので、大した物ではありませんが、自分が持っていても意味無いので、受けとって頂けると助かります。」

 顔を赤らめながら、手にしたぬいぐるみを千穂に差し出す。想像していた以上に、女性に贈り物をするのが、気恥しかったのだろう。

「ありがとうございます!い、いただいても、本当に良いんですか!?」

「え、えぇ。どうぞ。」

 目をキラッキラに輝かせながら、悠也からぬいぐるみを受け取る千穂。

「これは…『だるっクマ』?A賞?」

 ぬいぐるみに付けられた、紙のタグを見て、呟く千穂。

「あ〜、それはですね、コンビニでクジがあったので、丁度良いと思って、引いてきたんですよ。」

「クジですか?こういう物って、かなり引かないと出ないのではないですか?」

「いえ、自分は結構運が良い方なので、2、3回引けば、上位賞、えっと、分かりやすくいえば、フィギュアとかぬいぐるみとかの、いわゆる当たりが、大体出ます。今日は1発でしたね。」

 悠也には、特筆すべき目立った特技は無いものの、くじ運がかなり良かった。具体例を挙げれば、上位賞がA〜Eまであれば、5回も引けば、そのうち3つは手に入るというレベルだ。

「凄いですね!ありがとうございます!」

 ぬいぐるみを抱き締めながら、満面の笑みでお礼を言われ、悠也は顔を赤くしながらも、本題に移ろうと、口を開く。

「えっと、では、次の話に移っても良いですか?」

 悠也は、紅茶を1口飲み、気分を落ち着かせるのだった。

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