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女神様(比喩)と出会って、人生変わりました

血迷ったトモ

第10話 母の様子がおかしい

 何やら、手触りが異様に良すぎる、黒の半袖シャツと、灰色のスキニーパンツに着替えた悠也は、着ていた寝間着を綺麗にたたみ、紙袋に突っ込んでから立ち上がる。

「この服、値段とか聞くのは止めよう…。」

 考えただけでも恐ろしくなってくるので、服の事は忘れる事にして、2人に声を掛ける。

「天戸さん、瀬奈さん、着替え終わりました。」

「失礼します。」

 そう言いながらドアを開け、先に千穂を中に入れる瀬奈。何とも時代錯誤な主従関係のようだが、それよりも、千穂と瀬奈のそのような振る舞いが、異様なほど堂に入っており、悠也はつい感心してしまう。

「どうかしましたか?」

「あ、いえ、何でもありません。えっと、この寝間着は、こちらで洗って返しますので。」

「いえ、それには及びません。少々特殊な生地ですので、取り扱いが難しいので、私の方で洗濯をしておきます。」

「あ〜、なるほど。それなら、お言葉に甘えさせていただきます。」

 紙袋を瀬奈に引き渡しながら、悠也は少し頭を下げて、お願いする。

「では、応接室に行きましょうか。忘れ物はありませんか?」

「はい、大丈夫です。それよりも、母が迷惑をかけてはいませんか?」

 何故か悠也は、不安そうな表情で聞く。

「はい。少々落ち着かないようですが、とても静かにお待ちになっています。」

「そうですか。なら良かったです。」

 瀬奈の返答に、悠也はホッと胸を撫で下ろす。

「何か、そんなに心配なされるような事情がおありなんですか?」

「いえ、特にはありません。何となく聞いただけですよ。」

「そうですか?…あ、もう着きますよ。」

 千穂は、小首を傾げ、疑問に思っているようだったが、ちょうど応接室に到着したので、悠也が追及されることは無くなったようだ。
 瀬奈がドアをノックし、外から声をかける。

「失礼します。悠也様をお連れしました。…では、どうぞ。」

 瀬奈によって開けられたドアから中を窺うように入ると、大きな高級そうなソファに座り、目の前のテーブルに置かれたティーカップをジッと見つめながら、カチンコチンに固まる、温和そうな小柄な女性の姿があった。

「何をそんなに緊張してるんだ母さん。」

「あ、ゆうちゃん。…え!?」

 悠也がその女性、由紀に声をかけると、顔を上げて彼の方を見るが、視線が動き、さらに奥に居る千穂の姿を目にすると、その動きは固まる。

「ど、どうしたんだ?あ、まさか、天戸さんが綺麗すぎて、固まってるんだな?まぁ、無理も無いぐぅぇ!?」

 『うんうん』と頷いていると、急に立ち上がってツカツカと悠也に歩み寄った由紀が、彼の胸ぐらを掴んで聞く。

「ゆ、ゆうちゃん!今、何て言った!?」

「え、だから、綺麗すぎて、固まってるんだなって!ちょ!苦しいから離してくれ!」

「その前から!」

「あ、天戸さんが綺麗すぎて…。」

「天戸さんですって!?」

「良いから、離してくれ〜!」

 天戸という単語に、何故か呆然とする由紀。だがそのお陰で、少し手の力が緩み、どうにか悠也は抜け出して距離をとる。

「一体どうしたんだ?昔の血が騒いだって訳でも無さそうだし。」

「「「血が騒いだ?」」」

 悠也の言葉に、首を傾げる千穂と瀬奈。

「あぁ、そうか。実は母さんはこう見えて、昔は「悠也・・?」…はい、申し訳ございませんでした。」

 悠也がその疑問に答えようとすると、急に目付きが鋭くなり、とんでもないプレッシャーを放ちながら、言葉を遮る。

「分かればよろしい。…ところで、天戸さん。」

「え、あ、はい。」

 先程の雰囲気からの変わり様に驚く千穂。そんな彼女に、由紀は妙な質問をする。

「貴方のお母さんのお名前、聞いても良いかしら?」

「はい。私の母は、沙紀さきと申します。母は、悠也さんがここに居る事を連絡すると言ってましたが、されてないんですか?」
 
 その名を聞いた途端、由紀は顔面蒼白にする。

「母さん?」

「さ、さーて、帰るわよ、ゆうちゃん!あ、天戸さん。ウチの悠也がお世話になりました。ありがとうございます。今後とも・・・・とも、よろしくね。」

「は、はい。」

 それだけ言うと、由紀は悠也の腕を掴み、足早に応接室を出る。

「ちょ、母さん!一体どうしたんだ!?」

「何でも無いわ。気にしないでちょうだい。」

「そうは思えないけど…。はぁ、しょうがないか。」

 隠し事は下手だが、絶対に口は割らないのが由紀であり、その事をよく知っている悠也は、やれやれと肩を竦めながら、大人しく着いていく。

「にしても、この屋敷はバカに広いな。メイドさんとかが居るにしても、ホントに天戸さんだけで住んでるのか。どんだけ金持ちなんだろう?」

「多分だけど、天戸家の資産は、日本でもトップレベルよ。多くの企業を経営して、毎年のように新規事業を打ち出しては、必ず成功させているわ。」

「ほへ〜。まさに、天上人みたいな感じだ。」

ーだからこその、相手に貸しを作らない、即ち、隙を作らない癖でもついてるのかね?ー

 何故お礼をする事にあれだけ熱心なのか、勝手に考察して納得する悠也。その考えは間違ってないが、この場合では、本来の理由に対して1パーセントにも満たないのだが。

「あ、母さん。」

「何かしら?」

 腕を引きながら先を急ぐ由紀に、悠也は伝える。

「多分俺、あと数回はここに来る事になりそうだから、車を借りると思う。」

「数回ね…。それで済めば良いのだけれど。」

「え?」

 憂鬱そうに呟く由紀に、一抹の不安を覚える悠也。
 この後、だだっ広い屋敷から出て、無事に家に帰れるのだが、由紀の様子は、いつまで経ってもおかしいままだった。

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