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女神様(比喩)と出会って、人生変わりました

血迷ったトモ

第5話 不覚をとりました

 あれから、抱き着かれたままの悠也は、呆然と死んだ顔をしながら、疲れきった身体を休めていたが、千穂が泣き止んだのに気が付き、声をかける。

「えっと、そろそろ大丈夫ですか?」

「いえ、もう少しお願い出来ますか?」

 綺麗でか細い声で言われると、流石に悠也も大人しく従うしかないため、顔を引き攣らせながら、早く離れてくれる事を願い、ポンポンと頭を撫でてみる。

「あ、あの悠也が、女の子の頭を撫でている…だと!?」

「五月蝿いほっとけ。大体、こういう役回りは、お前みたいなイケメンがやるべきで、俺には荷が重いんだっつーの。」

 わざとらしくからかってくる圭吾に対し、『ヤレヤレ』と首を振る悠也。
 と、そこに、さっきまで解放された事に喜んで居た客達が、ゾロゾロと悠也の方にやって来る。
 そして、口々に例の言葉を述べいていく。

「ありがとうございました。貴方のおかげで、私の家族は怪我なく、無事に家に帰ることが出来ます。」

「ありがとー!おにーちゃん!」

「本当にありがとねぇ。老い先短い人生だけど、死ぬまで感謝を忘れないよ。」
etc...

 一度に大量の礼を言われた悠也は、慌てて戸惑いながらも言う。

「いえいえ!とんでもないです。自分はただ、自分自身が、見てられないからやっただけですし、自身の気持ちに従っただけなので、感謝をされるような事は何も…。」

 苦笑いしながら謙遜する悠也だが、十数人が口々に彼を褒め称える。

「いやいや!謙遜しないで下さいよ!あの強盗の顎を鉄パイプで殴った瞬間、最高の気分でしたよ!まぁ、その前に、貴方が撃たれたんじゃ無いかと、ヒヤヒヤしましたが。」

「そうですね!でも、まるでアニメのバトルとかでも、見ている様な気分でした!何か武道とか嗜まれているんですか?」

「い、いえ、何も習ってないです。なので、あのような無様な動きを晒してしまったのですが…。」

 『お恥ずかしい限りです』と恐縮する悠也に、さらに追い打ちがかかる。

「ほう。素人にも関わらず、あの状況下において、あれだけ動けるとは、凄まじいですな。」

「そ、そうですか?普段からそれなりに体は動かしているので、それが功を奏したのかもしれませんね。」

 高校で部活を辞めてから、定期的に運動をして、鈍らない様にはしていたのだが、確かに、それがなければ途中で足が縺れて転んでいても、不思議ではない程の緊張下での攻防だった。
 そんな出来事の後である為、あまり人とやり取りしたくないなと思い始める。

ーおいおいおい。止めてくれよ。ちょっと疲労感がヤバいし、暫く何もしたくないんだけど。ー

 何て事を考える悠也は、抱き着いたままの千穂が、何やらモゾモゾと動き出したのに気が付いた。

「どうかしましたか?若しかして、漸く落ち着きましかぁ!?」

 本日、何度目になるか分からない、叫び声を出す悠也。
 一瞬、千穂の身体が離れたため、安堵して笑顔を浮かべる悠也だったが、次の瞬間、頭を抱えられて、彼女の胸にギュッと抱きかかえられてしまったのだ。

ーむ、胸に!?ど、どういうこっちゃ!流石にそろそろ、なすがままにされるのは、辛くなってきたし、ちょっと離れてもらうか…。ー

 この機を逃せば、もう二度とこんな事して貰えないかもしれないぞ〜っと頭の中に考えが浮かぶが、色々な意味合いで本当に辛いので、離れるように言おうとした瞬間、千穂から言葉が発せられる。

「本当にありがとうございました。お疲れ様です。ゆっくり休んで下さい。」

「ッ〜!」

 耳元で囁かれた言葉に、心が今までにないくらい、ザワつくのを感じる。鼓動も激しく打つのだが、不思議と安心感もあり、そのまま、悠也の意識は暗闇へと、消えていくのだった。


【千穂視点】

 千穂は、自身の胸の中で、目を閉じてスヤスヤと眠る悠也を見て、クスリと笑う。

ー本当に凄い人。今日会ったばっかりの私を、必死に守ろうとしてくれたばかりか、それを恩に着せようともせず、謙虚に皆を気遣って行動が出来るだなんて。自分が一番疲れてるはずなのに、私の我儘も聞いてくれて、本当に想像以上・・・・の人ね。こんな凄い人が、私の…。ー

 そこまで考えると、千穂は寝ている悠也の額に、口付けを落とす。

「あ、あの〜…。」

 そこへ、非常に申し訳なさそうに、圭吾と呼ばれた青年が、話しかけてくる。

「はい、何でしょうか?」

「その、貴方は、悠也とどういったご関係で?悠也に聞いても、『知らん』としか返って来なかったのですが。」

 心底不思議そうな表情で問う圭吾。しかし、千穂は意味ありげな笑顔で、悠也の頭を撫でながら言う。

「さて、どういった関係でしょうか?悠也さんが私の事を知らないのは、本当だと思いますよ。少なくとも、実際に会うのはこれが初めてです。」

「の、割には、お会計の時から、様子が大分おかしいようでしたが?」

「話には聞いていましたので。」

 サラッと、悠也の存在を前から知っていたと口にする千穂。

「んー?ますます分からん。」

 圭吾は首を捻るが、まったく全容が見えてこないので、眉を寄せている。
 すっかり泣き止んだ千穂の様子は、先程までとはうって違って、妖艶な笑みを浮かべるミステリアスな存在に感じられ、お手上げ降参状態の圭吾。

「じゃあ、1つだけ確認良いですか?」

「はい、何でしょうか?」

 真面目な顔で、真っ直ぐに千穂の目を見ながら、圭吾は問う。

「別に、悠也に危害を加えるつもりは無いんですよね?」

「当然です。何故なら彼は、私の―」

 千穂の言葉に目を剥き、慌てふためく圭吾。

「な、何ぃ!?ゆ、悠也が貴方の…。」

 言葉を失う圭吾が、ショックのあまり膝を床についた所で、パトカーのサイレンが遠くから聞こえてくる。

「この話はここまでにしましょう。」

「は、はい…。後日、悠也も交えて、しっかりと話して頂けるとありがたいです。」

「はい、分かりました。」

 笑顔で頷く千穂を見て、確証は無いが、何となく、『この子なら大丈夫かな?』と感じた圭吾は、これ以上の追求を止めるのだった。

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