女神様(比喩)と出会って、人生変わりました
第1話 とびっきりの災難 1
「ん?何かあったのか?」
 そう呟く悠也の視線の先では、警備員の男性と、副店長が強ばった顔で何かコソコソと話している。
「圭吾。若しかしたら、万引き犯とかが店内に居るのかもしれないぞ。」
 「またか。ホント、そういう奴らって、いっぺん海の底に沈めてやりたいよな。」
 こちらが真面目に働いている中、そういう事をされるのが我慢ならないのか、怒りを顕にする圭吾。
「ほんとそうだな。にしても万引きか。こんなバカ空いてるのに、良くやるよ。」
「確かに。社員も手が空いてるし、タイミングとしては最悪だと思うんだけど。」
 背を向けながらそんな事を話していると、圭吾から息を呑む音が聞こえる。
「例のお方か。」
「そうだ。ペットボトルを持ってるから、お会計に来るぞ。」
「良かったじゃないか。ちょうど藤野さんは打ってる最中だから、お前の所に来るんじゃないか?」
「そ、そ、そうだな。う、上手く打てるか不安だぞ。てか、絶対に噛む。」
「そういう圭吾は中々見られないから、拝聴させて貰うわ。がんば〜。」
「う、五月蝿い。」
 緊張しているのか、少し上擦った声の圭吾。そんな調子では、彼女とお近付きになるだなんて、夢のまた夢だろう。と、完全に他人事のように考えていた悠也の耳に入ったのは、『え?』という圭吾の声だった。
ーはて?何を疑問に思うことがあるのだろうか?いつもの圭吾なら『この際だから、少し手を触っちゃえ!』とかいう邪な気持ちで、セクハラをはたらきそうなのに。ー
 心の中で失礼なことを考えながら首を捻っていると、彼の視界の横に、一際明るい、金色の何かが横切った。
「!?」
 驚愕のあまり、悠也は思わず目を見開いてしまう。なんと、例の美少女は、圭吾を態々通り過ぎ、悠也の居るレジに入って来たのだ。
「いらっしゃいませ。ポイントカードはお持ちでしょうか?」
 
「持っていません。」
 ギリギリではあるが、抑揚の無い声で、機械的に言い慣れた言葉を絞り出した悠也。
  ペットボトル飲料1本だけを持ってきた、彼女は、何故かまじまじと悠也を見ている。
「あ、はい、かしこまりました。カードをお作りになられますか?」
 そんな視線を受けながらも、詰まることなく機械的に言葉を紡ぐ悠也。
「お願い出来ますか?」
「かしこまりました。では、こちらにご記入をお願いします。」
「はい。」
 申込用紙と、レジに備え付けのペンを渡す悠也は、改めて彼女を間近で見て、つい見とれてしまっていた。
ー近くで見ると、ヤバいな。語彙力がパリピ並になるほどヤバい。このままの姿で彫刻とかにされてたら、女神と言われても信じるぞ?ー
「あれ?あ、すみません。ちょっと薄いので、別のペンを借りても良いですか?」
「あ、あぁ、はい、どうぞ。」
 彼女に見とれていた悠也は、突然声をかけられて驚いたものの、あまり取り乱すこと無く、バイト用のエプロンから自分のペンを取り出し、彼女に手渡す。
 その際、少し手に触れてしまった悠也は、心の中で叫ぶ。
ー何この感触!触り心地がハンパない!って違う!いや、違わないけど、こんな失礼なことを考えちゃダメだ!冷静さを保たなくては…。ー
 何とか表面上は、冷静であるかのように取り繕い、彼女が書いている最中の申込用紙に目を向ける。一応、ちゃんと書けているかを確認する必要があるため、見なくてはならないのだ。下心とかは全くない。
ー名前は…天戸千穂さんか。随分と珍しい苗字だな。住所は…って見ちゃあかん!なるべく目を逸らしとこう…。ー
 悠也は目を逸らしながら、早く会計が終わることを願う。こんな美少女との距離が近いと、緊張のあまり、呼吸がしづらいのだ。
 書いてもらう文量はそれほど多くないので、実際には1分もかからなかったのだが、悠也にとっては10分にも感じられるほどであった。
「はい、お願いします。」
「ありがとうございます。では、1点で、88円頂戴致します。」
 申し込み用紙とペンを受け取りながら、悠也は金額を告げる。
「では、こちらで一括でお願いします。」
「…はい、かしこまりました。」
 彼女、千穂から、異様に高級感溢れる、黒色のカードを受け取る悠也は、自身の頬をが引き攣るのを感じる。
ーこ、これはもしや、いわゆるブラックカードってやつか!?こんなド田舎のホームセンターじゃあ、早々見ないぞ!?つーか、美少女で大金持ちとか、超人の類かよ!ー
 緊張のあまり、小刻みに震える手でカードをリーダーに通す。
「では、カードとレシートのお返しです。」
 『ようやく終わったぁ』と心の中で安堵しながら、最後まで機械的に対応する悠也だが、唐突に、カードとレシートを持つ彼の手が、千穂によって包み込まれるかのように、その両手で握られる。
「え?お、お客様?如何致しましたか?」
 ここまでどうにか無表情を貫いていた悠也も、流石に戸惑いが隠せないでいる。そんな悠也に、千穂は真面目な顔で見つめながら、口を開く。
「あの、お名前をお伺いしても良いですか?」
「は?」
 予想だにしない言葉に、悠也は動きをフリーズさせてしまうのだった。
 そう呟く悠也の視線の先では、警備員の男性と、副店長が強ばった顔で何かコソコソと話している。
「圭吾。若しかしたら、万引き犯とかが店内に居るのかもしれないぞ。」
 「またか。ホント、そういう奴らって、いっぺん海の底に沈めてやりたいよな。」
 こちらが真面目に働いている中、そういう事をされるのが我慢ならないのか、怒りを顕にする圭吾。
「ほんとそうだな。にしても万引きか。こんなバカ空いてるのに、良くやるよ。」
「確かに。社員も手が空いてるし、タイミングとしては最悪だと思うんだけど。」
 背を向けながらそんな事を話していると、圭吾から息を呑む音が聞こえる。
「例のお方か。」
「そうだ。ペットボトルを持ってるから、お会計に来るぞ。」
「良かったじゃないか。ちょうど藤野さんは打ってる最中だから、お前の所に来るんじゃないか?」
「そ、そ、そうだな。う、上手く打てるか不安だぞ。てか、絶対に噛む。」
「そういう圭吾は中々見られないから、拝聴させて貰うわ。がんば〜。」
「う、五月蝿い。」
 緊張しているのか、少し上擦った声の圭吾。そんな調子では、彼女とお近付きになるだなんて、夢のまた夢だろう。と、完全に他人事のように考えていた悠也の耳に入ったのは、『え?』という圭吾の声だった。
ーはて?何を疑問に思うことがあるのだろうか?いつもの圭吾なら『この際だから、少し手を触っちゃえ!』とかいう邪な気持ちで、セクハラをはたらきそうなのに。ー
 心の中で失礼なことを考えながら首を捻っていると、彼の視界の横に、一際明るい、金色の何かが横切った。
「!?」
 驚愕のあまり、悠也は思わず目を見開いてしまう。なんと、例の美少女は、圭吾を態々通り過ぎ、悠也の居るレジに入って来たのだ。
「いらっしゃいませ。ポイントカードはお持ちでしょうか?」
 
「持っていません。」
 ギリギリではあるが、抑揚の無い声で、機械的に言い慣れた言葉を絞り出した悠也。
  ペットボトル飲料1本だけを持ってきた、彼女は、何故かまじまじと悠也を見ている。
「あ、はい、かしこまりました。カードをお作りになられますか?」
 そんな視線を受けながらも、詰まることなく機械的に言葉を紡ぐ悠也。
「お願い出来ますか?」
「かしこまりました。では、こちらにご記入をお願いします。」
「はい。」
 申込用紙と、レジに備え付けのペンを渡す悠也は、改めて彼女を間近で見て、つい見とれてしまっていた。
ー近くで見ると、ヤバいな。語彙力がパリピ並になるほどヤバい。このままの姿で彫刻とかにされてたら、女神と言われても信じるぞ?ー
「あれ?あ、すみません。ちょっと薄いので、別のペンを借りても良いですか?」
「あ、あぁ、はい、どうぞ。」
 彼女に見とれていた悠也は、突然声をかけられて驚いたものの、あまり取り乱すこと無く、バイト用のエプロンから自分のペンを取り出し、彼女に手渡す。
 その際、少し手に触れてしまった悠也は、心の中で叫ぶ。
ー何この感触!触り心地がハンパない!って違う!いや、違わないけど、こんな失礼なことを考えちゃダメだ!冷静さを保たなくては…。ー
 何とか表面上は、冷静であるかのように取り繕い、彼女が書いている最中の申込用紙に目を向ける。一応、ちゃんと書けているかを確認する必要があるため、見なくてはならないのだ。下心とかは全くない。
ー名前は…天戸千穂さんか。随分と珍しい苗字だな。住所は…って見ちゃあかん!なるべく目を逸らしとこう…。ー
 悠也は目を逸らしながら、早く会計が終わることを願う。こんな美少女との距離が近いと、緊張のあまり、呼吸がしづらいのだ。
 書いてもらう文量はそれほど多くないので、実際には1分もかからなかったのだが、悠也にとっては10分にも感じられるほどであった。
「はい、お願いします。」
「ありがとうございます。では、1点で、88円頂戴致します。」
 申し込み用紙とペンを受け取りながら、悠也は金額を告げる。
「では、こちらで一括でお願いします。」
「…はい、かしこまりました。」
 彼女、千穂から、異様に高級感溢れる、黒色のカードを受け取る悠也は、自身の頬をが引き攣るのを感じる。
ーこ、これはもしや、いわゆるブラックカードってやつか!?こんなド田舎のホームセンターじゃあ、早々見ないぞ!?つーか、美少女で大金持ちとか、超人の類かよ!ー
 緊張のあまり、小刻みに震える手でカードをリーダーに通す。
「では、カードとレシートのお返しです。」
 『ようやく終わったぁ』と心の中で安堵しながら、最後まで機械的に対応する悠也だが、唐突に、カードとレシートを持つ彼の手が、千穂によって包み込まれるかのように、その両手で握られる。
「え?お、お客様?如何致しましたか?」
 ここまでどうにか無表情を貫いていた悠也も、流石に戸惑いが隠せないでいる。そんな悠也に、千穂は真面目な顔で見つめながら、口を開く。
「あの、お名前をお伺いしても良いですか?」
「は?」
 予想だにしない言葉に、悠也は動きをフリーズさせてしまうのだった。
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