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女神様(比喩)と出会って、人生変わりました

血迷ったトモ

プロローグ

 ある年、8月2日の夕方、普通の大学生である、神田悠也かんだゆうやは、大学の夏休みを利用して、近所のホームセンターでアルバイトに勤しんでいた。

「いらっしゃいませ〜。ポイントカードはお持ちでしょうか?」

「はい、持っています。」

 夕方とはいえ、暑さがまだ残っている時間帯のため、店内は空いており、従ってレジも誰も並んで居ないのだが、4本あるうちの1本に入っていた彼は運悪く、大量の商品をカートに載せた作業服を着た男性に、会計場所として選ばれてしまった。
 心の中で若干めんどくせぇと思うが顔には出さず、機械的にレジ打ちをする悠也。

「合計44点で、3万5673円頂戴致します。」

「…あ〜、ポイントってどのくらいありますか?」

「427ポイントです。ご利用になられますか?」

 「あ、そうですか…。えっと、その、ちょっと所持金が足らないので、この1mの鉄パイプを2本お返ししたいのですが…。」

「あ、はい、かしこまりました。こちらが1点348円なので、3万4977円になります。」

 悠也はレジ脇に鉄パイプを置きながら、合計金額の変更を伝える。

「すみません。ありがとうございます。じゃあ、ポイントはそのままで、3万5000円からでお願いします。」

「かしこまりました。はい、では3万5000円お預かり致します。…23円のお返しです。ありがとうございました、またお越しくださいませ。」

「御世話様でした。」

 地味に面倒だったため、男性が去ったあと、悠也は『ふぅ…』とため息をついてしまう。すると、彼の後ろのレジに入っている青年から、声がかかる。

「運が無かったな。ドンマイ。」

「まったくだよ。てか、空いてるんだから、手伝ってくれても良かっただろ?」

 声をかけてきた青年、松浦圭吾まつうらけいごに対し、悠也は文句を垂れる。悠也と圭吾は通う大学は違うが、中学の頃からの友人であるため、気心の知れた仲だ。

「え?」

 圭吾と話していると、別のレジに入っているパートの藤野ふじのが唐突に声を発した。その声が気になった悠也は、圭吾との話を中断してそちらに注意を向ける。

 「ん?どうしたんだろ?」

「何がだ?」

「いや、1番レジに入ってる藤野さんが、何か驚いたみたいな声を出しただろ?」

「そういえば、何か言ってた…な?」

 藤野に背を向けいた圭吾が振り返ると、そのままの姿勢で固まってしまう。

「おい?どうした?」

 悠也が肩を揺さぶると、固まっていた圭吾がぎこちなく身体を動かしながら、悠也を見て言う。

「あ、あそこ。み、み、店の入口。」

「は?ちょっとこの角度からだと、入口が見えないんだが?」

「え、そ、そうなのか。ならこっちに来い。とんでもない美少女が居るぞ!」

「へぇ〜。彼女を取っかえ引っ変え作りまくりの圭吾が言うなら、よっぽどの美少女なんだろうな。」

 圭吾の言葉に、やけに素っ気なく返す悠也。
 それもそのはず、イケメンでノリが良く、めちゃくちゃモテる圭吾に対し、カースト上位のノリについていけない上に、普通の容姿をしている悠也は、女っ気の無い人生を送ってきた。ほぼ、諦めの境地に達してはいるが、若干の僻みもあるため、女性関係の話になると、そんなら態度を取ってしまうのだ。

「なんかすまん。」

「いや、謝んなよ。まぁ、態々見に行くのもアホらしいし、店内に入ってきたら横目でチラッと見るよ。」

 ーあの圭吾があんなに慌てる程の美少女ねぇ…。アイドルの卵とか読モとかと付き合ってた圭吾なら、美人、美少女の類は見慣れてるはずなのにな。ー

 一体どこから引っ掛けてくるのか、圭吾はそっち関係の女性と付き合うことが多いのだ。
 そのため、その圭吾が驚くほどの美少女とはどんなものなのか、ちょっと興味が湧いた悠也は、是非そのご尊顔を拝んでやろうと、心を決めたのだった。
 ちょうどその時、圭吾から声がかかる。

「おい、入って来たぞ!」

「入口からここまで、入って来るのに随分と時間がかかった…な…。」

 圭吾の声に、悠也は喋りながら振り返るが、ほかの2人と同じように、やはり固まってしまう。
 店内の照明に照らされ、光り輝く金色の髪と、同じ色の優しげな瞳。顔立ちは若干の幼さが残るものの、非常に整っており、まるで神が自ら図面を引いて作ったかのようだ。また、身長は150cmほどに見えるが、プロポーションも良く、目が彼女を視界の外に出したくないとでも言うかのように、その姿を追ってしまう。そんな彼女は、膝丈の白いワンピースを着ており、そこから伸びる白いすらっとした脚と腕に、老若男女問わず惹かれてしまいそうな程の魅力を感じる。

ーこ、これは凄まじいな。殺風景な店内に、あの子の周りだけまるで、向日葵が満開で咲き誇っているかのような印象を覚える…!って、何を考えてるんだ!?し、心頭滅却…。お、俺は彼女いない歴年齢のダメ人間…。そんな奴が、あんまりジロジロ見るのは失礼だろ!ー

 悠也は、妙な卑屈をさを発揮させ、無理やり視線を外し、元のレジの定位置に戻る。

「た、確かに凄いな。まぁ、俺には一生縁のない、天上の人って感じだけどな。」

 動悸が上がり、顔が赤くなっているのを実感するが、何とか平静を保ちながら言葉を紡ぐ。

「またそんな事を言う。あのなぁ、万が一、億が一とかいう、凄い低い確率でも、あんな子がお前に惚れる事も、あるかもしれないだろ?」

「はっ。あんだけの子なら、男なんて選り取りみどりだろ?それなのに、俺を選ぶだなんて、正気の沙汰とは思えないね。あと、無量大数分の一でも、俺に可愛い子が惚れる確率を示すのには大き過ぎるぞ?つーか、虚しいから、この話は終わりだ終わり。」

 喋ってるうちに、冷静さを取り戻した悠也は、早々に話を切り上げる。

「ちぇっ。つまんないなぁ。あ〜、あんな子が俺の彼女になってくれないかな〜。」

 「圭吾みたいな軽薄な野郎を相手にするとは思えないけどな。」

「酷いこと言うなぁ。まぁでも流石に、高望みが過ぎるか。」

 この後、自分達にとんでもない災難が降りかかることも知らずに、2人は呑気に会話を続けるのだった。

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