Bの世界

ユノテル

2.Behind world

「ここは...どこだ...?」
 俺は当たりを見渡す。明らかに都市ではあるが俺の住んでいる東京とはどこか違う。なんというか、ちょっと時代が進んでるっていうか、上手く表現はできないがここが俺の暮らしていた東京ではないってことだけは分かった。
 俺は現在地を知るためスマホを取り出し地図アプリを開くが、どうもネットに繋がらない。
 (とりあえず誰かにここがどこか聞いてみよう。人は大勢いるし、親切な人一人くらいはいるだろう。)
 そう考え俺はちょうど前を通った40歳くらいのゴツめのオジサンに話しかけた。
 「すみません...あの道に迷ってしまったんですけどここってどこかわかりますか?スマホがなんだ調子悪くて使えなくて..」
 「スマホ...?」
 オジサンは首をかしげて俺にスマホを見せるように言ってきたので、スマホを見せると。
 「何だこれ見たことねぇな..あっ!もしかして坊主日本から来たのか?」
 オジサンが俺におかしなことを言う。
「はい、そうですけど...ここは日本じゃないんですか?」
  「すまんな坊主、今ちょっと込み合っててよぉ、時間ないからあそこに見える建物で話聞いてくれんか?」
 オジサンは一際目立つ建物を指さし、この場を去った。
 俺は状況が理解出来ていなかったが、あそこに行けば何かわかるだろうと思いその建物を目指した。
 建物に入ると中にはフードコートの広さに居酒屋があるような空間が広がっており、奥の方にはいくつか受付のようなカウンターがあった。
 (あそこでいいのかな?)
 俺は少々はじめて来る場所にビビりながらもカウンターの受付のような女性に話しかける。
 「すみませんあの道に迷ってしまったんですけど、ここってどこですか?」
 「ええっと君はどこから来たの?」
 「東京から来ました。」
 そういうと女性はぱっと顔を明るくして、
 「 君が今回の子ね、じゃああそこの扉から奥に入ってね」
 そう言って俺をこのフロアの端にある扉へと誘導する。
 「一体なんなんだ?」
 俺はそうつぶやき扉を開ける。するとそこには小部屋があり、小さな机をはさみ椅子が2つ、奥側の椅子には既に誰か座っていた。俺は恐る恐る近づき、
 「ええっと貴方は?って!」
 そこに座っていたのはまぎれもないあの路地裏の少年だったのだ。
 今はフードを被っていないがフード付きのパーカーと体格からあの少年で間違いない。
 「やっと来たねキリヤ君」
 少年は俺に話しかける。
 「なぜ俺の名前を?っていうか一体ここはどこなんだ!?」
 「まあまあ落ち着いて、僕はそれを説明するためにこの場を設けたんだから、ね?」
 突然の状況に動揺している自分の気持ちを抑えて俺は少年の話を聞くことにした。
 「まず初めに自己紹介からだ、僕の名前はトビ、よろしく」
 俺はそっと頷く
 「じゃあ今から順をおって説明するね、まず君の名前をなんで知っているかについてだけど、それは依頼人から伝えられたからで、下の名前しか知らない。そしてここはどこかという質問に対してだが、ここはビハインドワールド略してBワールドと呼ばれている場所だよ。」
 「Bワールド?聞いたことがないな。」
 「当然さ、だってここは地球ではあるが君の知っている地球では無い。君が知っている言葉で言うとパラレルワールドっていうかところかな。」
 「パラレルワールド?じゃあなんで俺はここに来てしまったんだ?」
 「そう、そこが話の肝なんだ」
 そう言ってトビは緩んだ表情から少し真面目な顔になる。
 「君が選ばれし人間だからだよ。」
  一瞬部屋が沈黙に包まれる。
 「選ばれし人間?どういうことだ?」
 「このパラレルワールドではね、君の住んでいた世界との結び付きが強くて、こっちで何か災害や争いが起きると君たちの住んでいた世界に何かしらの災いが起きるんだ。同じ緯度経度の場所にね。」
 「災いって何が起きるんだ?」
 「簡単にいえば地震ってやつ?こっちでは無いからわからないけど。」
 「地震ってプレートが擦れたりはね戻ったりして起こるんじゃないのか?」
 「まあそうなんだけど、それが起こるきっかけになるのがこっちの世界なんだ。」
 「じゃあ俺が元いた世界で起きてた地震は...」
 「全部こっちでは何かしらの事件が起きたからだよ、小さい事件大きい事件と比例してね。」
 「分かった、まあ正直信じたくないけど、この見た事のないルックスの建物が何よりもの証拠だ。じゃあ俺が選ばれし人間って言うのは?」
 「君は能力に目覚めた、ただそれだけの事さ」
 「能力?そんなもの俺は知らないぞ?」
 「まあそれもしょうがない、だって今日目覚めたんだから。」 
 「ちなみにどんな能力なんだ?」
 するとトビは何やら奥の物置のようなところから双眼鏡のようなものを取り出してきて、
 「それを今からこれで調べるんだ。」
 「 それは一体?」
 「能力を調べる道具だよ。これを覗いて君を見ればなんの能力に目覚めたのかが分かる。」
 「ちなみにトビも能力とかあるのか?」
 「僕の能力は空間操作だね。僕はこの能力を使って君を迎えに行ったんだ。他にも炎操作とか電気操作とか色々あるけど共通して言えることは能力は全て何かを操作するものであり、いきなり炎を生み出したり電気を生み出したりみたいな魔法のようなことはできない。まあ火力をあげだりなど溶媒となるものを増加させたり強化することはできるんだけどね。あとこの世界に住んでいる人は大きく分けて2種類いて、君の世界から呼ばれた人と昔呼ばれた人の子孫だ。ちなみに全員何かしらの能力は持ってるよ、役に立つ立たないは別としてね。」
 そう言って双眼鏡で俺を見る。
 「ええっと君の能力は.....光操作だね。よかったじゃんあたりだよ。」
 「あー、いまいち理解出来ないけどあたりならよかった。」
 「この能力はどこでも使えるからね、この世に漆黒の場所は深海ぐらいだし、そんなとこどうせ行かないからね。」
 「具体的にどんなことが出来るんだ?」
 「例えば、特定の物体を透明にしたり、見た目を変えたり、光線を撃ったりかな?」
 「見た目を変える?」
 「見た目っていうのはあくまで脳が網膜が受けた光の信号を映し出してるだけだからその信号をいじれば可能なんだよ。」
 俺は試しに指先に意識を向けて見ると、指の先に電球のように光り輝く玉が出てきた。
 「あと能力に目覚めたからといって自由に使えるわけじゃないよ、赤ちゃんが喋れるようになってはじめて色々言葉を学ぶように、君は今能力に目覚めただけでこれから特訓を重ねないとね。」
 「で結局俺にこの能力を使ってどうしろと?」
 「話が早くて助かるねぇー、じゃあ率直に言わせてもらうね。」
  トビの顔がさらに真面目になり
「君には君が元いた世界とBワールドを救って欲しい。」
 「・・・・へ?」

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