感情を覚えた令嬢

パンデミック

パーティー

パーティー会場に1歩足を踏み入れる



ドレスは私にピッタリで、歩みを進める度ゆっくりとドレスの裾がたなびき、それに沿うように彼が歩く。



彼は私にいつもと変わらない笑顔を向ける。だけど勘ぐってしまう。その笑顔は本当の笑顔なのか、と。



男爵令嬢が会場に入る。



その瞬間、横から鋭い衝撃が走り突き飛ばされた、彼に。



なぜ、なぜこんなことをするのか、彼はなぜ男爵令嬢を庇うように立っているのか。



私は、何もしていない、何もしていない。



彼が何を言っているのか聞き取れなかった。聞き取りたくなかった、堕ちていく彼を見ていたくなかった。



憎かった、ただ、私だけに見えるように薄く笑っている男爵令嬢が、そんな男爵令嬢に引っかかる彼が、憎く感じた。



好きだったのに、大好きだったのに、今はもう増悪で胸が埋め尽くされている。



婚約破棄でもなんでもいい、早くここからいなくなりたい。
  


そうしないと、殺してしまいたくなる、彼と男爵令嬢を。



私が男爵令嬢と1度も話したことが無いというのは周りの人が1番知っているはず、だけど誰も私を庇おうともしない。



私の味方は存在しない、元から味方なんて居なかったのだ。



結果私の周りには家目当てしか居ないのかと自嘲する。




初めてだった、人をこんなに憎むのも、愛すのも。



もう見たくない。

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