勝手口の先には夢が詰まっている。
第1話 気付いた異変、逃した楽しみ
夢を見ていた。
勿論、どんな夢だったかなんて思い出せない。
ただ、幸せな世界にいた。そんな気がする。
でも、現実はちっとも綺麗じゃない。ただの醜い物体だ。
半年程前から、綺麗な白も濁って見える。
綺麗なのは……地元の友達とのトーク画面くらいかな。
けれど、そこだって所詮スマホの中だ。
自分から東京に来たのに、何故こんな事になったのだろう。
……きっと全員が「上京する時期が悪い」と言う。
僕の自業自得だって事は否めない。
そんな事を思いながら、いつも通り弁当の準備を始める。
どうせ捨てられるけれど。
……その時。
何の理由もなく見た勝手口の先の景色に違和感を覚えた。
磨りガラスから見える町が昨日と違う気がするのは、気のせいだろうか。
今日は、勝手口から外に出るのも良いかもしれない。そんな事を思った。
着替えや歯磨きも終わり、いつも家を出る時間になった。
勝手口の方に目が行く。
あの先には、どんな町が広がっているのだろうか。
もしいつもの町だとしたら、何故違って見えるのだろうか。
考えるのは好きだ。確かめるのも好きだ。わくわくする。
だから、数学と科学はそこそこできるし、実家には推理小説が沢山ある。荷物が多くなるので此処に持っていくのは諦めたけど。
こんなに興奮したのは上京直後以来だ。
いつも通り玄関から出たら何の楽しみもないままジャージ隠されてたり暴言暴力の嵐だったりするだけだ。
……今日くらい、楽しもう。
もし勝手口の外に広がっていたのが違う世界なら、今日はそのままその世界にいよう。
その位、人権として認められている筈だから。行動の自由とかそこらへんで。
考えていたら、5分が経ってしまっていた。
僕は慌てて……
玄関から外に出た。
やばい、間違えた!!
半年で習慣が付いてしまったようだ。意識せずにちゃんとした扉から出てしまった。
もう一度家に入って、また勝手口から出よう。
そう思ったのだが……。
「あれ、開かねぇ」
まだ鍵をかけていない筈なのに、比較的軽い力で開く賃貸住宅の玄関扉は押しても引いてもびくともしない。
急いで鍵を空けようとした。
鍵穴には入ったが、回しても何の音もしない。
……詰んだ。
しかも、約10メートル先から2人の女子高生が端から見れば不可解な行動をしている僕をガン見している。しかも制服的に同じ学校だ。
もうこれ以上格闘しない方が良い。彼女らの姿を確認した瞬間悟った。
今の段階で、既にあの2人がさっきやっていた事を拡散する可能性が高い。
遅れたらまた暴言とか悪口とか言ってきそうだし、これは一旦諦めて潔く学校に行った方が良い気しかしない。
とりあえず、この件は夕方また考えよう。
僕は、いつもの道を歩き始めた。
          
勿論、どんな夢だったかなんて思い出せない。
ただ、幸せな世界にいた。そんな気がする。
でも、現実はちっとも綺麗じゃない。ただの醜い物体だ。
半年程前から、綺麗な白も濁って見える。
綺麗なのは……地元の友達とのトーク画面くらいかな。
けれど、そこだって所詮スマホの中だ。
自分から東京に来たのに、何故こんな事になったのだろう。
……きっと全員が「上京する時期が悪い」と言う。
僕の自業自得だって事は否めない。
そんな事を思いながら、いつも通り弁当の準備を始める。
どうせ捨てられるけれど。
……その時。
何の理由もなく見た勝手口の先の景色に違和感を覚えた。
磨りガラスから見える町が昨日と違う気がするのは、気のせいだろうか。
今日は、勝手口から外に出るのも良いかもしれない。そんな事を思った。
着替えや歯磨きも終わり、いつも家を出る時間になった。
勝手口の方に目が行く。
あの先には、どんな町が広がっているのだろうか。
もしいつもの町だとしたら、何故違って見えるのだろうか。
考えるのは好きだ。確かめるのも好きだ。わくわくする。
だから、数学と科学はそこそこできるし、実家には推理小説が沢山ある。荷物が多くなるので此処に持っていくのは諦めたけど。
こんなに興奮したのは上京直後以来だ。
いつも通り玄関から出たら何の楽しみもないままジャージ隠されてたり暴言暴力の嵐だったりするだけだ。
……今日くらい、楽しもう。
もし勝手口の外に広がっていたのが違う世界なら、今日はそのままその世界にいよう。
その位、人権として認められている筈だから。行動の自由とかそこらへんで。
考えていたら、5分が経ってしまっていた。
僕は慌てて……
玄関から外に出た。
やばい、間違えた!!
半年で習慣が付いてしまったようだ。意識せずにちゃんとした扉から出てしまった。
もう一度家に入って、また勝手口から出よう。
そう思ったのだが……。
「あれ、開かねぇ」
まだ鍵をかけていない筈なのに、比較的軽い力で開く賃貸住宅の玄関扉は押しても引いてもびくともしない。
急いで鍵を空けようとした。
鍵穴には入ったが、回しても何の音もしない。
……詰んだ。
しかも、約10メートル先から2人の女子高生が端から見れば不可解な行動をしている僕をガン見している。しかも制服的に同じ学校だ。
もうこれ以上格闘しない方が良い。彼女らの姿を確認した瞬間悟った。
今の段階で、既にあの2人がさっきやっていた事を拡散する可能性が高い。
遅れたらまた暴言とか悪口とか言ってきそうだし、これは一旦諦めて潔く学校に行った方が良い気しかしない。
とりあえず、この件は夕方また考えよう。
僕は、いつもの道を歩き始めた。
          
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