美醜の君

メリノ

❄Ⅰ

ある国がありました。
その国の王家はとても美しく、誰もが見とれて、しまう程でした。
城には毎日新鮮な花や野菜等国民からの贈り物が絶えませんでした。
しかし、王家の血を引くものが民に優しくすることはありませんでした。
だけれど、民はそれを疑問に思いません。産まれてからこの国を出たことの無い民は、これが当然の事だとおもっているからです。民は、国を愛し、王家を愛する。王家は民に愛され、国をまた今日もまわす。
愛し、愛されることは無いけれど、民は、愛することの大切さと、幸せを知っていました。
だから、この国は今日も噴水の周りには花が咲き誇り、森は樹木1本1本に日が当たるよう、計算され、森の動物は弱肉強食の世界で、人間に邪魔されることなく、今日も必死に生きていました。まるで、理想郷。足りないものがあれば補い合い、余れば譲り合い、民は声を掛け合い笑い合う。ですが、この国には足りない物がありました。

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