異世界に召喚されて魔族になりました

ルルーチルニド

43.出発前夜

「誠に…「申し訳ありませんでした!!」」

誤解が解けた兵士達は私達に謝罪をし、サリアさんに連れられて少し離れたところで話し合っている
…サリアさんが居なかったら殺されていたかもしれないわね

「ふぅ…」
「ひゃ〜怖かったね〜」
「全く…勘違いも程々にして欲しいなぁ」
「ま、まぁ、あの兵士達も父にどやされてかなり切羽が詰まっていたと思うので…」
「そういえば、現クレスト国王は娘に溺愛していると言うのはよく聞いたことがあったな」
「こ、怖かったよ…蓮花…」
「そうだな。まあ、これで王国までは安全に行けるだろ」
「今一度我が兵士達の無礼を詫びます…」
「あの兵士達の気持ちも分からないでもないから、それほど気にしてないわ」
「ありがとうございます」

深々と頭を下げようとするミーリャ姫を止める
1国の姫としてはかなり礼儀の良い事なのだろうけれど、そんなに仰々しくしないで欲しいわ
どうせクレスト王国に行けば嫌でもそうしなくちゃならないんだろうし、今くらいは気楽にして欲しいし

そうこうしているうちに、話し合いをしていたサリアさん達が戻ってきた
明日の早朝より、クレスト王国へと向かうのだそうだ

「先程は失礼いたしました」
「いえいえ、勘違いなんてよくある事ですし」
「そういって頂けると嬉しいです。
それから、今からクレスト王国へと向かうのですが。あなた方の馬車にミーリャ姫が搭乗してもらい、我々の馬車でそのまわりを固めて城まで護送する形にしたいので今しばらく御付き合いお願いします」
「わかりました」「まっかせといて〜」

私達にお願いしてきた兵士は次にミーリャ姫の方へ歩いていった
私達に話した事をミーリャ姫に説明しているのだろう
王が娘に溺愛か…
心配してるんでしょうね
…うちの親はそんなことないかもだけど
まあ、とりあえず今は10数人といつも以上に騒がしい夕飯を食べて寝ましょう

「あの、兵士さん」
「はい、なんでしょう」
「ぶり返す様で悪いんですけれど。先程のミーリャ姫の救出の時に魔族という事に異常に警戒しましたよね?」

横でスープを啜っている兵士にさっき気になった事を聞いてみた

「あの時はすみませんでした。その疑問についてですが、ここ最近クレスト王国周辺だけでなくドラク・ケニル大陸にて魔物の活動が活発化していると報告されていまして。そのせいか魔王種が生まれたと噂が流れていまして大陸中が警戒しているのです。
そのせいで魔族に対して当たりが強くなってしまう王国兵士も恥ずかしながら居るのです」
「なるほど…それで魔族である私達に警戒していたんですね」
「ええ、それでもここまで人族に友好的な魔族はほとんど居ませんけどね」
「あはは…」

魔王…ね
よくある転生物語なら人類を救うべく主人公が奮闘するのよね〜…
まあ、魔族が勇者になるなんて無いでしょうし?
そんなめんどくさい事に巻き込まないで欲しいわね

「それでは夜間は我々が交代制で見張りをするので貴方達はゆっくり休んでください」
「ん?いいのか?助かるぜ!」
「リンリ〜ン、一緒に寝よっ」
「はいはい、寝袋は1人用だから隣で寝ましょうね」
「にへへ〜」
「サリアも今日は兵士達もいるしゆっくり休みなさい」
「はい、分かりました」

夜は更けて木々のざわめきと火を炊く音が周りに満ちる
風香は既に眠りに入りすやすやと寝息を立てる
嵐の前の静けさってこんな感じなのかしらね
とりあえず、明日は忙しいし私も早く寝ましょう

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