異世界に召喚されて魔族になりました

ルルーチルニド

28,小さな村にて

「前方に村が見えるぞ!」

案外早かったわね
ラトルに話を聞いていると小さな村があった
とりあえずあそこで地図を買わないとね

「ケロス達は村外れで馬車と一緒に待ってて」
「うっす!」
「地図の購入はお任せ下さい」
「お願いします。あと、できれば私も連れていってください」
「リンリンだけずる〜い、私もつれていって!」
「わかりました」

サリアさんがそう言ってくれた
正直、私では相場が分からないし地図の度合いとか分からないからありがたいわ
それに、交渉術とやらを見ることができるかもしれないわ

「あ、でも、ラトルさんとレンカさんとリカさんサトミさんは村に入らない方が良いかと思います」
「んあ?なんでだ?」
「あぁ、人族のみの村か」
「はい、そういうことです」
「あ、おい待てよ!」
「俺が説明してやるから待っとこうな」
「ちぇっ、しかたねえな」

人族のみ…
それに隣国からもそこそこの距離がある村…
そういうことか

「どういうことなの?」

風香が聞いてきた
声でも漏れていたのかしら?
まあいいわ

「おそらく、獣人系や魔族系がはっきり分かってしまうと村の人が怖がるからじゃないかしら?」
「えぇーそんなことないのに」
「中身を知っていればそう言う事もできるのよ。人は弱いから身を守るために、得体の知れない者とは関わり会いたくないものなのよ」
「むぅ…」
「防衛本能ってところかしらね。風香も自分の何倍ものゴ○ブリが居たらこわいでしょ?」
「確かに…」

警戒されるとものを買うことすら出来なくなる可能性がある
その点私と風香はほぼ人族と同じ姿になれるから同行を許されたのかしらね…

「他を見た目だけで判断するなんて全く心が狭いのね!」
「姫、これも仕方ないのです。見た目が違えばどうしても恐ろしいことなのです。
そしてそれが突然襲ってきたり…なんて考えたりしたら」
「そ、それは怖いわね。身を守るために…か。私はサリア達が居るからそう思うのね」

少女にしては物分りが良いわね
これが王家だと言うことかしら?
普通に頭が回る子ってことかしらね

この村は本当に小さい村で店が立ち並ぶ大通りなど存在しなかった
そして、なんとも言えない排他的な視線が凄いわ…
村を練り歩くと露店みたいなのが1つあり、そこへ立ち寄ることにした

「いらっしゃい」

冷たく突き放すような感情のこもらない声…
全く歓迎されてないのね

「この店には地図などおいてありますか?」
「それならそこだよ、50ブリンズだ」
「王国では3ブリンズが相場です、手数料を差し引いても高すぎます」
「嫌なら他を当たんな」

この人元々売る気なんて無いんだわ…
言い値で買ってくれれば儲けもんって言うやつかしら

「10ブリンズではダメですか?」
「お断りだね」
「それなら…」
「50ブリンズで買う気が無いなら帰ってくれ」

隠れてはいるけれど他の村人達が武器(農具)を持って殺気立っている
侵略者でもなんでもないんだけど…?

「サリアさん」
「分かっています、帰りましょう」


追い返されたわ
取り付く島もないとはこの事かしらね
とりあえずどうしようもないのでみんなの所へ帰ることにした

「よう、どうだった?」
「まったく!何なのよあの方々は!!」
「全く取り合って貰えませんでした」
「まじかよ!これからどーすんだ?」
「だいたいの方角へ進みながら村や町を見ていくしか…」
「それしかないわね」
「それじゃあケアラが沈むまでに野宿の場所を探さないとな」
「早く乗りな!もう一走は余裕だぜ!」

そうして収穫0のままその村を立ち去る
この世界も人間同士でいざこざがあるのね…
まあ、当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけれど

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