前世の記憶があるから天才と呼ばれる

房琉

プロローグ4 『早すぎる成長』

4ヶ月前
「4年生の2人はかなり上手です。僕の妹はドリブルが上手く、カットインもロングシュートも良いですね。もう1人は何やらせてもそれなりにこなします。今は高さが足り無いのでセンターをしてもらってます。あと、3年生にも上手い子がいます。あの子はパスもドリブルもフィジカルも飛び抜けてます。しかし、まだ3年生なのでこれからですね。身長は平均よりは高いですが成長期はこれからだと思います。」
 娘と仲の良い1人と、兄と同じくしてバスケを始めた1人、あとは新体操から去年入ってきた3年生か、
「今のディフェンスの型は? 何主体でやってんだ?」
「ミニバスケのルール的に、この3人をずっと出し続けることは不可能なので、低学年の補助をメインに2・1・2、いわゆるゾーンで組んでます。」
 ミニバスケのルールはたしか、一試合に1人が出られるのは3クォーターのみで、4クォーターでることは原則禁止だったな。
 にしても、ゾーンか…
「守りだな」
「…はい。3年生以下に4年生以上が殆どの公式試合にでてもらうのは体力的に限界がありますので」
 確かにそうだろうな。
「仕方ないな。 4年生以上の体力はどうなってる」
「4年生以上はかなり体力ありますね。コーターダッシュを毎日20〜30本を24秒で帰ってくるのを悠々こなしてますし、」
 それは凄い
 コーターダッシュとはコートの端、リングの真下からダッシュでフリースロー付近まで行き、そこで切り返してコートの端に戻ってまた切り返し、次はコートの真ん中で切り返してコートの端に戻る。次は反対側のフリースローど切り返し、戻ってまた切り返し、最後に反対側のコートの端まで行って切り返して帰ってくる。
「かなりキツいだろあれ」
「はい。結構ハードです。しかし他の学校の体育館と比べて、うちの体育館は試合会場にできないほど古い体育館で、コートも小さいので、24秒は余裕がありますね。」
 にしても凄いな。低学年の体力が心配だが、
「なにか突破口の作れる型を模索しておこう」






 「センスのある子供が揃っているんですが、自分にはまだそのセンスを磨く事ができないので、監督になってほしいんです」と頼まれたのが4ヶ月前。娘が2人に、息子が1人、娘らはすでにミニバスケットボール部に所属している。このままいくと息子もバスケをやりだすだろう。
 これから立て続けにお世話になるし、コーチとして関わってきた野球部とは保護者や監督と反りが合わず離れていた為、二つ返事で引き受けた。



 初めて練習を見に行った日曜日の朝、
「小さいな…」
 もうじき卒業する6年生は別にして、次代の子供を見る。5年生がいないため、4年生が次の最終学年だ。1人は平均身長より少し高いが、他が平均身長より小さい。娘も俺の遺伝子を受け継いで身長はかなり小さい…
「高城さん、紹介します。6年生は3人、4年生は6人、後1人は後ほどきます。3年生は3人、2年生は7人、1年生は2人、計21人です。 こちらは高城さんです。これから皆の監督になります。知っている人もいるだろうけど、朱珠那すずな由珠那ゆずなのお父さんです」
「「よろしくお願いします!」」
「よろしくお願いします」




「もう1人はいつ来るんだ?」
「いつもは13時半から14時の間ですね」
「いつもこの時間なのか?」
「あ、言ってませんでしたね、その子、一家全員が敬虔なキリスト教で、毎週日曜日は礼拝に行ってるんですよ。」
「大会とかはどうしてるんだ?」
「その時は大会を優先してますね」
 これで大会も来れないなら戦力に出来ないし試合でも使えなくなる。今時柔和な判断をしてる両親だな。



「こんにちは」
 声を掛けてきたのはもう1人と言われていた子だろう。
 そういえば朝の10時から始まった練習も、お昼を終えて13時半をすぎていた。
「西崎、」
「はい! こんにちはまひろちゃん」
「こんにちは、西崎コーチ」
「紹介するね。こちら高樹さん、今日から監督になりました。 高樹さん、この子がさっき言った子です。あきら 真優まひろちゃん。まだ入部して半年くらいですが、有望株です。」
確かに有望株だな。他の子は身長が低いし、細い子ばかりだが、この子は…
「よろしくお願いします。突然なんだけど、身長は何センチ?」
「たしか二学期の身体測定の時は158センチ…だった気がします。」
小4でこれか。身長も高いし、何よりガタイがいい。

「まひろちゃんは、身長が飛び抜けて高いので、このまままセンターとして要のポジションに育てようと、別メニューになることが多いです。まだ入部したてってのもありますし、まだ同い年の4年生達に比べて体力がないので。」

いい。良いぞ。ドリブルやパスが得意な子がいて、主力になりそうな4年生たちは体力もある。高身長でゲームの要になりうる子もいる。

「突破口…西崎、ホワイトボードってないか?」
「あります! 今とってきますね!」




 2月に監督になって、今は6月。6年生は卒業し、新5年生が最終学年になった。
 あれから、やりたい事をまずは子供たちに体験させ、かなりの練習時間を取った。
「ここ、隙間開けるとドリブルで抜けられるから、閉める!」
「声掛け! マーク交換するの迷うなら声掛けてチェンジしろ!」
「真ん中に逃げられるな!」
「そう、前でプレッシャー与えろ!」
「手を下げるな! ファールになる!」
 まだまだ戸惑い、拙いが、身体に覚えさせるには繰り返し繰り返し行うしかない。


 「ポジション取りは足が重要だ。相手のどちらかの足に体重をのせて、背中全体で押す。この時、腕で押したりお尻で押すと、オフェンスファールを取られる可能性がある。」
 長身の2人には、センターとしてのポジション取りを徹底的にマスターしてもらい、確実にゴール下のシュートは決めるように練習させてきた。だが、ここ最近、真優に小さな違和感を感じている。異様に、上達のスピードが早いのだ。1度教えれば後は難なくこなすし、教えていない足捌きもしたり、フェイントもしたりする。ドリブルも手元を見ないし、シュートホームも綺麗。特に教えていないにもが変わらずだ。
 兄がいて、丁度バスケをしていたので教えて貰ったとは言っていたが、そうとはいえ、凄い成長スピードだ。

 試合に出れば届かないためにブロックに捕まることはないし、逆にタイミングさえ合えば相手のシュートをブロックする。その回数は結構多い。
 才能があるかもしれない。




 一方、チームとしたは体力と、ボール捌きが優れた人材がいるおかげで、守りのチームから、超攻撃型ディフェンスを要する攻めのチームに生まれ変わった。
 このスタンスはどうやらハマったようで、大会に出れば、優勝を果たすまでになった。
 子供の成長は早く、5年生の成績は7月後半に行われる全国大会予選と、3月の6年生さよなら大会を除いてほば無敗。

 当然、ぽっと出の新星が現れたとなると、他校は羨み、妬む。そのため少しでも競ると、会場中が敵の味方をするため完全アウェイな状態も少なくなかったが、着実に勝ちを得ていた。







 5年生だった子達が6年生になると、県では敵無しになった。全国でも、苦戦はすれども、168まで伸びた真尋の身長に苦戦し、急成長を遂げた1つ学年が下の田嶋詩織(160センチ)、この両名が才能を爆発させ、見事全国優勝の旗を持ち帰った。
 



 6年生で168センチってデカいですかね?きっとデカイですよね。いや、デカいですね。

 次でやっと本編です。
 1話 才能なのか

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