前世の記憶があるから天才と呼ばれる

房琉

プロローグ3 『前世』

 前世と現世に、差はない。それどころか多分同じ世界で、多分同じ国、多分同じ時間軸にいる。違いと言えば前世の私と、現世の私が全く違う人物だという事。
 多分…

 多分が続くのは強く覚えているわけではないからだ。靄ががかったかのように曖昧で、覚えてる記憶もばらばら。自分のことすら曖昧だと、人となると更にわからない。顔も、声も、男か女かもわからない。身長で大人か子供か把握しようにも、自分の背丈もその時々でちがう為に、咄嗟に流れていく記憶からは直ぐに判断することは出来ない。
 唯一鮮明なのが、バスケットボールを操る自分の手と何故か上から見た試合風景の記憶。それを思い出したのが最近のこと。
 
 小学5年の春の出来事。


 きっかけはなんと無くの違和感。この光景見たことあると最初に見学した時に思い、この台詞前も言われた気がすると初めてのシュート練習の時に思い、センターって楽しいと思い始めると同時にセンターよりドリブルとパス練をしなきゃと思った。

 なんで?

 疑問を持った瞬間から直ぐに途切れ途切れの記憶が思考を回した。
 靄がかかっている為、誰かはわからないが随分高いところから2人の人物が覗くようにこちらを見ているとこ、誰かが自分の手を引くように走っているとこ、制服を着た自分の身体を見下ろすとこ、虫を追いかけ回しているとこ、大きさからして幼児を抱くとこ、スーツを着てメイクをするとこ…
 そのなかに、適当にバスケをする自分とその事を後悔してため息を吐く自分。それらだけは、何故か鮮明に映った。

 記憶だけじゃなく、思考も少し流れてきていた。最後に思ったのは強く嘆き、悔い、嫉妬する醜い思考。

  『今度こそ悔いなくやり遂げたい』

 死ぬ直前にふんわりと思ったこと。
 すとんと、胸の奥に何かが落ちてきて、悔いがないように今を頑張ろうとそう思えた。
 






 次もまだ本編じゃありません。
 すみません。
 次は真優の小学校のミニバスケの監督視点で、プロローグ4   『早すぎる成長』

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