前世の記憶があるから天才と呼ばれる

房琉

プロローグ1『後輩』

 本編から読みたい方は「1話 才能なのか」からお読み下さい。




ある事実を、中1の秋に知った。

 中学生にあがり、弱小だったこの学校で、クラスメイトに誘われてバスケを始めた。
 同級生は9人。1個上の先輩は7人。3年生が引退すると、背の比較的高い自分が試合に出る確率も少しずつ増えていった。このまま、自分たちの代になると、たくさんの大会にでて、試合をして、楽しくバスケができるだろう。自分と同じように中学からバスケを始める後輩に、自分が先輩にしてもらったように優しく教えてあげないと。
 そんな事を漠然と、いや、結構詳細に思い描いていた。

 しかし、秋、来年の先輩ライフは訪れないかもしれない出来事が起こった。

 「○○小学校と練習試合をします。」

 顧問に言われた言葉に、ほとんどが難色を示した。だって相手は小学生。自分たちと数個しか違わないが、10代の数個差は大きいし、思春期のそれがプライドを刺激したからだ。
 相手をするのは2年生の先輩。        
 自分には歯も立たない、尊敬できる先輩達が揃っている。身長だって高いし、パワーも自分とは段違いだ。負けるはずがないし、大差で勝つだろう。

 しかし当日、そんな事一切あるわけがなく、これが小学生なのかと疑い、来年、1個下の後輩になるという事実を脳内で処理しきれないまま、約30点差で負けた。

 小学校よりも高いリング、小学校よりも大きいボール、自分たちの体育館ではなく、なれない初めての体育館。という、小学生に不利に不利を重ねた結果が自分たちの『敗北』だった。
 尊敬する先輩たちが右往左往し、ボールをスティールされ、速攻されて点を決められる。
 オールマンツーであたられ、なすすべ無く囲まれるどころかボールをうばわれ、シュートを打たれ、個人で5秒を取られ、ルーズボールになるか、8秒ルールかで相手ボールになる。
 やっとシュートを打てるかと思えば、ブロックに捕まった。

 あ、自分は下手なのか

と悟るには十分な光景が10分×4Qで繰り広げられていた。

 【上手な人】というのはこの子たちのような人のことを言うのか。
 先輩は当てはまる人がいるかもしれないが、先輩に敵わない私達1年生には誰一人【上手な人】はいない。

 自らが教える?フッ  逆だ。教えを乞う立場はこの子たちでは無く、私達だ。







  年が明けて4月、望んでいた先輩ライフは訪れず、唯一楽しみにしていた中学生からバスケを始める、自分より“下手”な後輩は1人も入ることは無かった。

  そして、公式戦メンバーはおろか、練習試合まで出れない残りの中学校生活が始まった。





この物語はこの「下手な1年生」が主人公ではありません。
続いてプロローグ2「妹」

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