冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

第六話 初めての決闘

訓練場に移動した僕達は武器を選んでいる。
サクラが希望した大鎌はさすがに訓練する者がいなかったのかなかった。
サクラは不満を口にしていたが、大剣を両手持ちで振るう事にしたようだ。
それを見て周りの冒険者は驚いていたが、僕はそんな声を無視し、色々な武器を確かめていた。

この世界の武器もおそらく前世と大体素材は一緒だろう。
触れた感じ、この世界でも魔法で武器などの作成はできる感触があった。

あまりにもじっくり見ていたためか、ギルドマスターから早くしろと言われてしまった。
そこで僕は無難に片手剣で戦う事にした。

Dランク冒険者を見るとすでに全員が武器を持ち、こちらを確認していた。
こちらを見る視線は五つ。
四人は前衛職のようだが、一人は杖を構えている。
もしかして初めてこの世界の魔法が見ることが出来るのか?
転移初日で運がいいな。


「両者いいか? それでは始めるぞ!」

僕達もDランク冒険者たちも頷く。
Dランク冒険者は顔が笑っているが。

「それでははじめ!」

ギルドマスターの合図でDランク冒険者たちは勢いよく僕達に向かってきた。

僕達はその動きを見てまだ動かない。

Dランク冒険者達の一番後方では杖を持った冒険者が詠唱を開始している。

「ふん、お前らなど魔法を使う必要もないが、学園を卒業したあいつの魔法を喰らいやがれ!」

僕に絡んできたDランク冒険者が大剣で切りかかってくる。
上段から振り下ろされた大剣を僕は片手剣で受ける。
大剣を力で押し込もうとしてきているが、この程度では力負けはしない。
そこに横から槍で突いてくる冒険者がいる。
それは当たりどころが悪いと大怪我だろ!

僕は大剣をはじき横から来た槍使いの懐に飛び込み剣の柄でみぞおちを打つ。

悶絶している槍使いを蹴り倒し、大剣使いに切りかかる。

そこに割って入ってくる短剣使い。
体勢を崩したところを狙うのだろうが、残念ながら万全だ。
短剣使いの短剣を片手剣で吹き飛ばし、こちらも蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた短剣使いが僕から離れた瞬間、火の玉が僕めがけて飛んできている。
先ほどから聞いていたが、詠唱を完成させた魔法使いから放たれた。
詠唱は『我が魔力を使い火を打ち出せ! ファイヤーボール!』だった。
おそらくお願いと起こしたい現象を言葉にして自らの魔力を使い魔法とするタイプの世界だな。

火の玉は僕に向かってきているが、その火の玉も魔力を武器に纏わせ切り霧散させる。
「なっ!」
と大剣使いが驚いたが無視だ。
大剣使いが驚いているうちに素早い動きで背後に回り、首トンだ。
意識をうまく絶てた。


残りはサクラに向かって行った斧使いと先ほど魔法を使ったやつだけだ。

僕はサクラを見ると目が合った。
サクラは斧使いの斧をうまくはじきながら体の動きを確かめている。
遊んでいるような動きで、僕に手を振る余裕もある。

おい、さすがに大剣を片手で振り回すのはどうかと思うよ……。


あちらは任せるとして魔法使いに向かっていく。
魔法使いは「俺の魔法が……どうやったんだ……?」と手が震え棒立ちになっていた。
少しかわいそうになり声をかける。
「どうする? 降参する?」

そう聞かれた魔法使いは我に返る。

「降参なんてしない! 俺は学園を卒業したんだぞ! ちょっとかわいそうで初球の魔法を使っただけだ! もっと大きな魔法を使っていたらあんな現象は起きてないさ!」

また感情が揺さぶられた魔法使いが杖で殴り掛かってくる。

しょうがないから倒してしまおう。
杖を躱し、こぶしで腹を殴る。

魔法使いは「ゴバ!」と声が出てから気を失った。

これで僕に向かてきた冒険者は倒したけど、サクラがまだ遊んでいるな……。

「サクラ! そろそろ終わっていいよ~!」

斧を大剣ではじき、薄皮だけを切るように攻撃しているサクラ。
斧使いは顔が青ざめているが、息が切れているからか降参とは言えていない。

「まだまだよラウール! これからが私の見せどころよ!」

これ以上何を見せるのか……。
何か夫婦になったからか吹っ切れたのか、人にちょっとだけだけど実力を見られても関係ないと思っているのかな?

あっ、この世界で結婚って言う概念はあるのかな。
僕達は正式な夫婦になるには何か手続きは必要なのかな?
ギルドマスターは知っているかな?

「ギルドマスター! ちょっと質問があります。」

冷静そうにしているが内心は驚いているのか、返事が遅れている。

「お、おう。なんだ! いつ決闘が終わるか聞きたいのか? もしお前達が終わりでいいなら俺が止めるぞ!」

ちょっとサクラの相手を気の毒そうに見るギルドマスター。

「いえ違います! 夫婦になるには何か特別しなければいけないことはありますか? 僕達のいたところは田舎で、周りに宣言するだけだったので!」

観戦している人は、何を言っているんだという表情になったがしょうがない。
気になった時に聞いておかないと忘れたら大変だ。

「お、お前、今そんなことを聞くのか……。」

「はい。あっちはいいときに終わるでしょう。だから今僕は暇なんです!」

「暇って……ちょっとは気にかけてやれよ……。」

「気にはかけてますよ常に。もしサクラが少しでも傷つくものなら、僕がどこまでも追って行きますよ!」

「はっ、おう。それは怖いな……。では質問に答えよう。この国でも宣言だけで良いぞ。貴族や金持ちなどは関係者を招いて式をしたりするが、平民は自分たちは夫婦になったと周りに広めるだけだな。敬虔な神の使いと話す教会関係者は教会で祈りをささげるがな。」

なるほど。
この国と貴族。
貴族がいるという事は、王制なのかな?

「じゃあこの国の王様が結婚する場合は、国中でお祝いするの?」

「そうだな。国王様が結婚したときは国中が祭り状態になる。俺は色々と活動していたから、三度の祭りの内一度しか参加できなかったがな。」

三度、重婚が可能か。

そんなことを話しているとようやく斧使いが動かなくなり決闘が終了した。

ギルドマスターが僕達の勝利を宣言し、この場はお開きとなった。
後はかけられたお金の受け渡しが残っており、ギルドマスターの部屋に行くことになった。

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