冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

蜥蜴人間と貴族と

おおっぴらに活動を始めた僕たちは、遠慮することなく帝都の冒険者ギルドに二日間通った。

今だにダイヤ伯爵から連絡はないが、なんとなく気持ちが楽になっていて冒険者ギルドに入るのも苦ではなくなった。

冒険者の反応は様々だが、思っていた以上に敵意を向けてくる者は少なかった。

帝都内を散策していても、僕たちの事を知っている者が少ないためか、何も事件は起きない。
久しぶりに本や魔道具をのんびり眺め、購入したりした。

~~~~~

帝都について三日目。
ようやくダイヤ伯爵から連絡があり、明日ダイヤ伯爵ともう一人貴族が付き添うが蜥蜴人間と話ができるがどうする?

そんな連絡があった。

僕はクロウのお陰で吹っ切れ、貴族が相手でもどうでも良いと今は思えるので、会わせて欲しいことを冒険者ギルドの受付に伝えた。

手紙に書いていたとはいえ、受付に答えるだけで良いのか不思議に思っていると、冒険者ギルドにも話があったようだ。

僕たちの返事を聞き、明日訪ねる場所を教えてもらった。

~~~~~

蜥蜴人間に会う当日、僕たちは立派な建物の前にいた。
危険な人物を預かる、騎士が守る牢屋。
その牢屋の周りを頑丈に作っているから立派に見える。

その後も特にイベントはなくスムーズに中に入りダイヤ伯爵を待った。

ダイヤ伯爵はすぐに部屋に入ってきて、僕たちが訪れたことを喜んでくれた。

そしてすぐ蜥蜴人間のもとに連れ出された。
蜥蜴人間はまだ僕たちが提供した魔道具で拘束されている。

そばには偉そうな貴族が立ち、剣で切りつけている姿がある。

「話すんだ! 魔王はどこにいる!」

剣で切りつけても傷もついていない蜥蜴人間は痛いのかもわからない。

「おい! 防御をするな! 魔法を使うな!」

魔法も使っていないと思うけどな。
ただ皮膚が固くて、貴族が弱いだけだろう。

「おい! お前も手伝うんだ!」

貴族を守り騎士に命令もした。
騎士は僕たちと蜥蜴人間の様子を伺いながらも、命令通り蜥蜴人間に武器を向けた。

「やめてくださいね  伯爵。死なれたら困りますし、皇帝陛下にも怒られますよ。私たちもこれから尋問をするのですから、話が出来ない状態にするのは避けてくださいね。」

とダイヤ伯爵が目の前の偉そうな四十歳位の貴族に声をかけている。
引き締まった体型だが、傲慢さが顔に出ている。

「あーダイヤ伯爵か。私の方法に口を出すな! 俺が皇帝陛下に良い情報を届けるのだ!」

「だから許容できない暴力はやめていただきたい。重症では我々が何も出来ないので。」

「お前たちに出来ることはない! 私に時間を寄越せ。」

「それは出来ませんよ。私は新参者でも同じ貴族で伯爵です。」

「ちっ!」

舌打ちすると再度蜥蜴人間に切りかかり、騎士も暴力を振るっているが傷もつかない。

これでも高ランクの魔物だろう、あんな程度の攻撃は効かないな。

魔道具で拘束はしているが、防御力までは変わらない。早く諦めて僕たちに変わってほしい。

バキッ
ボキッ
ベキッ

剣も拳もボロボロだ。

「ふー、これくらいにしてやろう! さー吐くんだ!」

・・・・
・・・・

「ダイヤ伯爵・・・、交代だ!」

ようやく諦めてくれた。
交代の声を聞いて僕たちに目で合図を送ってきた。

「どうもこの前は。僕たちの聞いたことに答えてね。頼むよソフィア。」

僕がソフィアに声をかけると、ソフィアが精神に作用する魔法を唱え蜥蜴人間に問いかけた。

魔法をかけられた蜥蜴人間は虚ろな視線となり話し出した。

魔王の居場所はわからない。
四天王は存在する。
自分達の上司となる四天王の戦闘力はそこまで強くないが、知恵がある。
色々な種族が協力者としている。
作戦の全容はわからないが、色々な場所で世界に混乱を与えるために活動している。
自分の名前はシャムシャシカと言う。
シャムシャシカはダイヤ伯爵領を担当していた。
ここまで早く押さえられるとは思っていなかったが、死ぬ覚悟はあった。

そんなやりとりをして情報を得た。

「おー、やるではないか! その情報は私が皇帝陛下に伝えてやろう! そこのやつ、文句はないな! ダイヤ伯爵ではなく私の命令で口を割った、それでいいな!」

偉そうな貴族がそう言い出した。
これには流石にダイヤ伯爵も反論し、ここで起こったことは正確に伝えるよう第三者として参加していた者に命令した。

第三者の騎士もある程度の地位はあるのだろう。正確に伝えることを約束してくれた。

それを聞いた偉そうな貴族は怒りながらもこちらに何もせず帰っていった。

「悪いなラウール。あんな貴族が多いんだこの国は。あれでもまだましなんだぞ。」

「へ~、じゃああんな貴族以上にわがままな貴族はダイヤ伯爵が排除したの?」

「そうだ。成り行きだが結果的に排除できたな。皇帝陛下の依頼を受けていたらな。」

「そうですか。大変でしたね。それでですが、情報を聞き出したのは報告がいくでしょうけど、これ以上は協力しなくていいのでしょ?」

「ん~、出来たら手伝って欲しいが無理なのだろ? だが俺たちの手に終えない時は依頼をするかも知れん。いいだろ?」

ダイヤ伯爵だけであれば拒否することもないけど・・・。

「この国にいたらね。」

「それでもいい。それとだな、皇帝陛下が呼び出すかも知れないが、受けてくれるか?」

「嫌です。もし呼び出すならすぐにこの国を離れます!」

偉い人にいいようにされるのはごめんだ。
僕は頭がいい人が何かを企んでいても見抜けないから。

「そうか・・・。皇帝陛下は君たちみたいな人に会いたがるんだ。俺も婚約者となった皇帝陛下の娘を助けたというきっかけがあったが冒険者時代に呼び出されたんだ。」

「それで貴族までなったんでしょ?」

「そうなんだ。だから君たちもどうだ?」

「まっぴらごめんです。」


ダイヤ伯爵はそれ以上誘って来なかった。
報酬も冒険者ギルドに渡しておくと言った。

僕たちに皇帝陛下から呼び出しはないようにするから、もう少し帝都にいてほしいとお願いされた。

返事は曖昧にし、このあとはどうしようか考えるラウールだった。

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