冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

門前でもトラブル

フロックリンの門前にはあらかじめ連絡が行っていたのであろう、騎士やギルドのお偉いさんが待っていた。
騎士は顔も見たことがないが、一段立派な鎧を着ている。
冒険者ギルドもギルドマスターか副ギルドマスターだろう。こちらも見たことはないが貫禄を感じる。
荷物運び情報ギルドは名前は知らないが、僕たちにあこがれの目を向けてきているところを見ると、僕たちの姿を知る程度には偉い人物だろう。シャムルの役職もわからないが、シャムルは来なかった。

荷物運び情報ギルドでは僕たちのギルドプレートが特別なことを知っている。
そのギルドプレートが特別製だとわかるのはデーブンが認めた者だけ。
帝国との戦争で帝国民を殺した事実はあるが、その情報を聞いても自国が悪いと情報を整理できるものがギルドマスターをしている。
回りくどいが、僕たちに絶対に敵対しない人物だ。

この今回の討伐に向かった三組織の偉い人物の前にマジックボックスを置く。
そのマジックボックスと偉い三人が一緒に移動し、広いところで数の確認と分配をする。
僕たちも行きたくないが、直接回収する役割をしてしまったため、一緒に騎士の訓練場に移動した。

騎士の訓練場は領主の館ではなく、領都のはずれにあった。
広い面積が必要で、中心部には作れなかったようだ。

移動した訓練場には僕たち以外は偉い三人と冒険者ギルドのバイス。
騎士の偉そうにしていた人物がいて、周りには大勢の騎士が陣取っていた。

場所が騎士の訓練場とは、威圧感を与えてきているのか?

「それではこれより戦利品の分配を始める。この戦利品の分配は、事前に話をしたいたとおり、素材の価値を算出して分配するものである。それぞれ責任者に赴いてもらっているが、後から不満を言わぬように頼むぞ。」
偉そうな騎士、第三騎士団副団長の言葉で分配が始まった。

初めに今回の依頼のために持たされたマジックボックスの中身をすべて出す。
その中身を取り分ごとに分けていく。
黒いオークなど僕たちが倒して存在が知られていない素材は出さない。
僕たちが保管している。

荷物運び情報ギルドが二割、冒険者ギルドが三割、騎士団が五割取る。
依頼料は別で、後からギルドに報酬が届くことになっている。

関係者みんなで分けた素材を確認していると、オーク討伐で偉そうにしていた騎士が副団長に耳打ちをした。

「おほん! えー、今回の討伐で騎士団が準備した回復薬などが予定より多く消費されたそうだな。その分素材を回収したいのだがどうだ?」

それを聞いた荷物運び情報ギルド員も言い返した。

「それは依頼を出された時に条件には入っていませんでしたよね? 必要で使った物の補充は騎士団でお願いします。」

「しかしだな、予想より多いとなると、君たちが上手く依頼をこなせなかったという事じゃあないか?」

冒険者ギルド員も口を出した。
「依頼は討伐することだけだったよな? 消耗品などは騎士団で準備すると言っただろ? 何を今さら。」

「それはそれだ。君たちの不手際だったのではないかと言っているんだ。」

バイスも参戦した。

「我ら冒険者には落ち度はない。戦闘前にバカ騒ぎをしたやつらが悪いんじゃあないか?」

偉そうにしていた騎士が顔をしかめた。
「それは誰の事を言っているんだ! 荷物運び情報ギルドの若い奴の事か?」

「僕たちは騒いでいませんよ。帰りの護衛も一日は拒否されましたし、僕たちの方が約束を守ってもらっていないですよ。」
僕もさすがに参戦した。

すると騎士の中でざわめきが起きた。
更に副団長と偉そうな騎士が何かを話し出した。

ザワザワザワザワ・・・。

「うおっほん! それは君たちが護衛を拒否したそうじゃあないか。我ら騎士を侮辱し、護衛もいらないと騎士団を先に帰して素材の量を誤魔化そうとしたようだな。」

なぜそんな話になっている。
周りの騎士も不穏な空気になってきているよ・・・。

「それは違いますね。我ら冒険者も聞いていましたが、騎士を率いていたそこの人が、騎士の取り分を多くするために素材の量を誤魔化して、騎士によこすように言った事を拒否しただけでしたよ?」

・・・・・
・・・・

顔を真っ赤にした偉そうな騎士が副団長に何かを話している。

・・・・

・・・・

「何か話がばらばらで分からない。責任者だけで話をしてもいいか?」

「副団長! 私の話を信用してくれないんですか!」

「信用したいが、君の話も信用ならん。我らだけで済む話なら良いが、今後も冒険者や情報ギルドには世話になる。このままでは我らとの関係が悪くなるだろ? 我ら貴族は一度戦争に加担させた負い目もあるのだ。」

「それは我らの責任じゃあないでしょ! おい! そこの荷物運び! お前らの荷物もすべて出すのだ!」

なぜ個人の物まで出さないといけなくなるんだ・・・。

「それは我ら荷物運び情報ギルドを信用しないと言う事か! さすがに穏やかにはいかないぞ。」

「黙れ! お前らのとこの奴が不正をしたんだろ!」

「どこに証拠があって言っている!」

「だから荷物をすべて出せと言っている!」

僕たちの荷物をすべて出しても今回の討伐した魔物が入っているかなんてわからないのに。

そんなことを僕は考えていたが、出せ! なぜ!の応酬だ。

「僕たちの荷物をすべて出しても、どうやって今回の魔物か確認するんですか? これまで集めた素材にまで難癖をつけられても困りますよ?」

「だからあるんだろ? それで出せないんだろ?」

「だから! 僕たちが今まで討伐した魔物とどうやって今回の魔物か区別するのか聞いているんですよ!」

「出してみたらわかる!」

話が通じない・・・。

「お前らみたいな荷物運びが魔物なんて倒せないだろ!」

は~、最低条件に身を守れるものと書いている依頼なのに・・・。
帰り道で僕たちを見ていた騎士も口を出せないんだろうな。

「早く出せ!」

「そこまでにしておくんだ。我ら騎士の誇りが傷つく。俺は見ていた、こいつらが魔物を軽々と倒していたところを。」

ん? あー、僕たちについてきた騎士か。

「お前は黙ってろ!」

「これ以上は見苦しくて見ていられない。俺から父に進言しておく。荷物運び情報ギルドは悪くないと。」

「お前の父? ・・・・はっ、あなたの父?」

それっきり偉そうな騎士は声を出さずに固まっていた。
周りの騎士も静かになり、副団長が規定通りの報酬でと最後に言い解散となった。

~~~~~

「ひどい目に合ったねラウール。やっぱり偉そうな人とは話したくないよ。偉い人だったらいいんだけど、小物は嫌ね。」

「まーまーサクラ落ち着いてください。私も長く生きているとああいった人も多く見ました。自分に自信がない人ほど声が大きくなります。自信のなさが相手を抑えて話が進むようにします。それはほとんどが上手くいきません。しかし、その声の大きさに逆らえなくなる人がいることも事実です。どうしようもないですね。」

「そうなんだよね。前世の時もだけど、自分の言う事だけが絶対だと言う人ほど古い知識をひけらかしているし、多様性がなかったんだよね。」

「そうです。だからこそ本当に偉い人は人の話をよく聞き、良く学び、相手が自分の話を聞けるように誘導します。相手もその言葉を聞いてよく考え、自分の力にします。まーそこまでできる人はほとんどいませんけどね。だから気まぐれでいいのではないでしょうか? 相手に迷惑はかけませんし。」

「だよね、相手に迷惑をかけなければ、自分だけの問題で済むしね。」

そんなことを語りながら宿に戻った。

次の日には報酬ももらった。
報酬をもらったラウールは、次からは街では長く過ごさず、転移地点を増やそうかなと考えていた。

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