冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

オークの集落に侵入

騎士たちが夜営の準備を終え、荷物運び情報ギルド員の出番がなくなったところで、僕達は休むと告げテントに入った。

テントには僕たちの声を真似するようにゴーレムを配置して、入り口は開かないようにした。
強引にテントに侵入しようとする状況になった場合は僕達にアラームが届くようにして、転移でテントを出た。

転移で出た先は先ほど戦闘があった場所で、今は誰もいない。
ここからは気配を消し、空から侵入することにした。

空を飛びオークの集落に近づくにつれて、魔物が守りの陣形を固めている。
不意打ちや攻撃に出るであろう部隊も配置され、このまま戦闘になった場合には騎士は全滅する可能性もある。

僕たちは先に進み、ボスのいる建物の上まで到着した。
未だに誰にも見つかっていないが慎重に建物の後ろに着地すると、結界の魔法で建物を取り囲み、誰も出ることが出来ず、音も振動も漏れないようにした。外から見ても建物は今の状態が映し出されるようにして、異変を感じさせない状況を保つ。

さすがに結界で建物を囲まれたところで中にいる魔物とボスにはばれたようで、動き出している。
その動き出した魔物を倒すため、僕たちは建物の裏に穴をあけて中に侵入した。

建物の中には魔物の数は少ないが、黒いオークも二匹いた。
このオークは先に風の魔法で首をはねた。

次にオークロードが一匹、オークキングが二匹、オークジェネラルが五匹固まって何かを守っており、僕たちに武器を向けた。

体が大きいオークの壁で、守られている者の姿が見えない。
守られているボスはオークより小さいようだ。

オークたちは一気に攻めてくる様子もなく、ボスの守りを固めている。
そんな膠着状態で何をされるかわからないので、こちらも魔力を多く込めた風の魔法で一気に首をはね、クロウが死体を回収した。

・・・・
・・・・

目隠しがなくなったところで見えたボス。
僕たちが気配で予想した姿とは違った。

僕たちはボスの正体を予想して話していた。
ヤマトとソフィアはここはオークの変異種だろうと。
僕とサクラはここで人族が出て来るだろうと。
クロウはゴブリンロードの変異種だと思うと予想していた。

・・・・
・・・・

誰もの予想が外れ、それとも予想と同じなのかと思ったその姿は・・・・。

身長がゴブリン程度で低い。
体は人族の色で、小さな力士体型だ。
腰巻を付けている以外は素肌が見えている。
そして問題の顔が・・・、黒いオークだった・・。

まるで小さな筋肉質の子供が黒いオークのマスクをかぶっている、そんな姿だった。

そんな姿を見てつい言ってしまった。

「君のその姿はふざけてるの?」

・・・・
・・・・

「何を言っているんだ。私の見た目がそんなに変か? 私から見たら人族の姿に違和感があるが、それは種族の違いだろ? 見た目で判断するなんて駄目だね。」

言われてしまった・・・。
確かに、見た目の事を言うのは僕が悪かった・・・。
だけど、すごいな。そんなに知的な者が出て来るとは思わなかった。
部隊を率いることが出来る者とは思っていたが予想以上だ。

「ごめんごめん、僕の言い方が悪かった。それで君は誰?」

僕の問いにすぐには答えなかった。
腕組みをして何かを考えてから目の前のオーク顔が話し出した。

「私は魔王様の部下の四天王の内の一人、土の将軍の部下、黒の部隊の部隊長だ。」

四天王が出てきた・・・。
本当に四天王が。

「四天王って本当にいたの?! さすが名探偵サクラ、私の予想! 素晴らしい、ククククッ・・。」

サクラが・・・。

「お前たちは私たちの事を知っていたのか? 四天王の存在はまだ誰も知らないはずだが。今回私が人々を虐殺し宣言する役割を受けていたのだが。」

「誰も知らないと思うよ。これは今そこで独り言を言っているサクラが予想しただけだから。」

「フム、侮れんな。しかし、これで四天王の存在が伝えられたな。後は虐殺だが、お前たちをどうするか・・・。一人だけ生かして置いたらいいかな。」

「誰が四天王の事を伝えるの? 僕たちは生き残っても言うつもりはないよ? それに、四天王の存在を教えてどうするの? 魔王の戦力をばらしてもいいことはないんじゃないの?」

「我々は万が一にも魔王様に危害が加えられないようにする役割を持っている。我らと戦い時間をかけることで魔王様は完全体に至るのだ。それまでは誰も魔王様に近づかせるわけにいかない。我らと戦っていると、探す暇もないだろ?」

「こっそりしてた方がよかったんじゃないの? 魔王のいるところなんてわからないんだから。」

「我らがどこに攻撃を仕掛けるかわからないだろ? そうすると戦力を魔王様の捜索に回せないだろ? そちらの作戦を四天王が考えて立てたのだ。」

「へ~、四天王ってどんな魔物なの?」

「これ以上は語らん。一人だけ残し、ここで死ぬのだ!」

そう言うと名前を聞く前に殴り掛かってきた。
そのパンチはSランクの魔物位の強さはあり、素早く重い。
僕に一番に攻撃してきたから、パンチを受け止めてみた。

魔法を使う様子はなく、攻撃は力任せで、おそらくこの程度なら勇者でも倒せるだろう。
相手の戦力をもっと量りたかったが、黒い球も出ず、奥の手もなく、これ以上の情報も得られないようだったので、一思いにナイフで首を切り落とした。

名も知らぬ四天王の部下は目を見開いたが、もう口を開くことはなかった。

・・・・
・・・・

「お疲れラウール!」

「ありがとうサクラ。このくらいの魔物だったら勇者やSランクの冒険者、強い騎士なら最低でも数人の集団で戦った場合は勝てそうだよ。【春の気配】だったら、一対一でも大丈夫かな。」

「そう、それなら大丈夫ね! 本当に四天王が出て来るとは思わなかったけど、四天王はどうかな?」

「ん~、戦ってみないとわからないけど、Sランクの強い方からEXランクの魔物位は強いんじゃあないかな? もう一年くらい勇者が修行したら倒せるんじゃあない?」

「俺もそう思うぞ! 今までの魔王は俺くらいの強さを基準に少し強かったり、弱かったりする。そこが人族の言うEXランクだな。四天王とは初めて聞いたぞ!」

「じゃあ、強い冒険者でも対応できるかな? 僕たちが出なくて今回みたいな状況は防ぐことが出来るかな?」

「俺はそこまで人族を見ていなかったが、ソフィアはどう思う?」

「私はヤマトほど魔王の事は知りませんから。ただ言い伝えでは毎回被害はあったようですよ。すべてはその国の防衛力の差でしょうね。」

「そうだよね、一人が強くても世界中を守ることが出来るわけではないし・・・。」

僕たちは話を中断し、オークの集落から離れることにした。
気配は消したままだが、クロウとヤマトが暴れ足りないと強い魔物を魔法でピンポイント攻撃している。

空中から来た攻撃に魔物は何が起きたかわからず倒されていた。

中ボスらしき魔物や、僕たち以外では手に負えなそうな魔物も倒し、回収しながらテントに戻った。

テントの中でオークの集落を感じ取ると、ボスがいなくなったからか統制が乱れ、混乱している気配がした。
あとは明日、大きな被害がなく討伐が終了したらいいなと考えたラウールだった。

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