冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

ミックのお手伝い

僕は今日冒険者ギルドには、行かない。
ミックと一緒に孤児院に来ている。
孤児院はミックが働いている? わずかだが給金をもらい職場としているところだ。
ミックは孤児院では力仕事と、町の外で子供の薬草採取のお手伝いをしている。
更に、今後冒険者になることが多いこともあり、戦闘訓練や依頼達成に必要な技術を教えている。
そのおかげか、この街の孤児院は経営がぎりぎりという事もなく、院から離れた者までが金銭援助をしていると言う。
その中には双子のカインとシリンも入っていた。
カインとシリンは冒険者となり、何と冒険者ランクがDランクまで上がっていると言う。


「ラウール? お前はここで何を手伝うんだ?」


「そう言えば何を手伝ったらいいんですか?」


「特にない。」


「ない?」


「院長のコリンが上手く院を回しているから、手を出すところはない。」


「じゃあ、何かの練習に付き合ったらいいかな?」


「お前が教えることが出来るのか? 一般的な人に何を教える? お前は親の俺が言うのも変だが、規格外だぞ?」


「規格外・・・。それでも、何かのコツを教えることはできないかな? サクラはどう思う?」


「私も悩むのだけど、私たちってクロースとクリスと旅をしたけど、何か教えれたかな?」


「そう言われると・・・、あまり教えることはできないかな?」


「私に教える時とも勝手が違うしね。」


「じゃあ何か料理でもする?」


「料理って、院長よりもうまくできるのか? 一時だけの贅沢はダメだぞ?」


「お手上げです・・・。」


僕は何も手伝うことがないと思ってあきらめた。
人間はあきらめが肝心だ!
そう強がって・・・。


「じゃあ僕とサクラは帰りますね。ここまで来たけど・・。」


「そうか、ん~、そうだな。じゃあ孤児院の手伝いはできないから、孤児院出身の冒険者もいると思うから、冒険者ギルドに顔を出してみてくれ。そこでSランクなら、個人の情報は聞けないだろうが、外の依頼を孤児院出身者が受けていないかは知ることが出来るだろう。だから、危険そうなやつがいたら助けてやってくれ。危ないときだけな。」


「わかったよ父様。じゃあ行ってくる!」


やっとできることを見つけた僕はサクラとクロウと一緒に冒険者ギルドに向かった。


~~~~~


冒険者ギルドのドアをラウールが開け、中に入った。


「あっ! もしかしてラウールさん?」


「お久しぶりですアリサさん!」


「やっぱり。お元気そうで何よりです。」


「元気ですよ。それで今日はお願いが。」


「なんでしょうか?」


ラウールは孤児院出身とわかる冒険者が依頼を受けている場所を聞いた。
誰が、どんな依頼を受けているかではなく、大体の場所が知りたいと。
そして危険な時だけ手助けをすることを伝えた。
アリサさんはその程度なら教えることが出来ると言い、場所を調べて教えてくれた。
念のため、手助けは危険な時だけにしてほしいと付け加えて。


そしてアリサさんはクロースから手紙を預かっていることを話してきた。
なんでもクロースは、現在地などいくつかに手紙を残しているようだ。
筆まめな男だ。


クロースの手紙には、今現在ここを拠点にしているので、もし冒険者ギルドに来たのなら、伝言が欲しいと書かれていた。
そこでラウールはこの街にいる事と、実家の場所を記してアリサさんに渡した。


さらにギルマスが兄弟そろってこの街にいることもついでに教えてくれたが、今冒険者ギルド内にはいないという事だ。


そこまで聞いてラウールは街の外に向かった。


~~~~~


門番情報は置いておいて、町の外に僕はいる。


今の僕は気配を本気で探ると、とてつもない。
情報が多すぎて頭が痛くなるよ。


それでも、生命力が少なそうな冒険者もいなそうで、僕の出番がない・・・。


僕は今日は何をしている人?


何事もないまま、日もくれて、冒険者は誰もいなくなった・・・。


ボクノオテツダイハ・・・?


落ち込みながら家に戻った。


~~~~~~


「お帰りラウール。今日は楽しかった?」


「いえ、役立たずでした・・・。」


「役立たず?」


「父様の手伝いをするために、外に出たのですが・・・。」


ラウールは説明した。


「それはしょうがないわよ。そんな日もないと。毎日何かがあるのなら、そんな世の中は嫌じゃない?」


僕ははっとした。
平和な日もあってもいいじゃないかと。
何かあると言うことは、誰かが危険な目にあっている。
しかし、今日は何もなかった。
それは体の一部が欠損する人もいなかったと言うことだ。
極端だが、なにもない。
もともとそんな生活を望んでいたはずだ。


それからはしばらく街の外を巡回する毎日だった。
何度かは手助けしたが、ほとんどの冒険者はなんとかしていた。


僕が頑張る必要はないじゃないか。


そんな普通なことを思い出していて、日にちが過ぎ去り、サクラのロマン武器が出来る日になっていた。


「じゃあ行こっか? サクラの武器を引き取りに・・・。」

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