冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

カシマスさんへのお土産

一晩休んだラウール達は、宿を引き払い【希望の家】に向かった。


ラウールはお土産を迷っていた。
どんなお土産がいいのか?
希望の家のメンバーは僕を以前も受け入れてくれていたから、気心の知れた人も残っていると思う。
何か買っていくか?
それとも手持ちの物を渡すか・・・。
道中はサクラと相談しながら進んだが、結局何も買わずに希望の家に到着してしまった。


「おはようございます! カシマスさんに会いに来たラウールです。ナダルから伝言が言っていると思いますけど、会えますか?」


門のところで掃除をしていた男の子は、見たことがない人物だった。
その子はちょっと待ってくださいと言って家に向かって走っていった。
そして少し待つと、サブリーダーのフラロが現れ、案内してくれた。
フラロとも軽く旅の話をして、Sランクに昇格したことも伝えた。
フラロもSランクに昇格したと言っていて、お互いにおめでとうと言いあった。
そしてカシマスの部屋の前まで来て、フラロはラウール達だけでいいだろうと立ち去った。


ノックをして
「カシマスさん! お久しぶりです。入ってもいいですか?」


「いいよ。入ってラウール。」


返事を聞いてからカシマスの部屋に入った。
カシマスは笑顔で出迎えてくれ、固い握手を交わした。
ラウールはサクラを紹介し、クロウにも話していいと言って挨拶させた。
カシマスはさすがにクロウが話すことには驚いていたが、ひとまず椅子に座り話し始めた。


「ラウール達は元気だったみたいだね。ナダルに聞いたよ。」


「はい。ナダルには冒険者ギルドであったので、少し話していました。」


「私も会えてうれしいよ。それで、どんな旅だったんだい?」


そう聞かれて、転生や能力以外のことはカシマスに話をした。
ラウールは楽しそうに話をした。
サクラも楽しそうに話しているラウールを見て微笑んでいた。
カシマスも、頷いたり相槌を打ったりと、楽しそうに返事をしていた。
クロウは眠そうだった。


「それで今回は、これをお土産にと思ったんですが、断るのはなしでお願いします。」
そういってラウールはアースドラゴンの肉を大量に取り出した。
アースドラゴンの肉は、買うとなると高い。
Sランク冒険者なら買うか、手に入れることが出来る。
しかし、希望の家にいるメンバーは、みんなが高ランク者ではない。
だから、ドラゴンの肉のうまさを感じて、今後頑張ると言う意欲を持ってほしいとラウールは考えた、今。


「ラウールの好意だから受け取るよ! ありがとう!」


「そう言ってもらえてうれしいです。カシマスさんは、僕が勝手に親の次にお世話になった人物と思っていますから。」


「ラウールにそう言ってもらえるのは嬉しいよ。あの時一緒に体験した出来事は、僕の中でも大きいことだからね。だから、いつでも遊びに来てよ、ちょっと大きい兄と思って!」


ラウールは嬉しかった。自分だけが大切にしている思いだと思っていた。しかしカシマスさんも僕のことを気にしてくれていると感じたから。カシマスさんがいなければ、僕は今どうなっていたか・・・。今は転移もあるから、今まで来れなかった分、恩を返そうと思った。


昼食をごちそうになり、ラウール達は希望の家から街の門の方へ移動した。


~~~~~~


門で移動馬車に乗ったラウール達は、首都サーシンに向けて出発した。


「サクラ、クロースからの手紙によると、クロースとクリスは今は首都サーシンにいるみたいだよ。それで、クロースは父親に言われて、今も色々な所に出向き、その土地の状況を確認しているみたい。それで、もし時期があったなら、帝国に行きたいから、一緒に行かないかと手紙には書かれていたよ。今までの手紙も、行く土地を書いて、旅立っていたみたい。」


「へ~、懐かしいね。一緒に旅をするにも、気心は知れてるからいいけどね。今回はどうだろうね?」


「うん。手紙だと、今いる首都サーシンの次が帝国のようだよ。書いていることがそのままだと、一度クロースの父に会ってほしいそうだ。なんでも、せかされているみたい。」


「え~! 貴族って言ったら貴族。クロースの父親でも、抵抗はあるね?」


「そうだね。それも手紙によると今は首都サーシンにいるから、そこから南に戻り、スタスデの街による。そこから更に南に行くと、サラシトと言う街がある。そこから帝国へ移動できるみたい。そしてそこにカーシンの実家?になるのかな、家があるみたい。」


「そっか。ん~、どうしようかな?」


「今回の手紙もその前も、必ず付け加えている文章みたいだし、いつ戻ってくるかわからない僕宛にこんなことを書くのだからね。一度は寄る必要があるかな。クロースのためにもね。」


「そっか、友達のためね。」


ラウール達は移動中、妄想した。
貴族の家に行くことになった場合にどう立ち振る舞うか。
そしてクロースとクリスは色々なところを見ているみたいだけど、今は何をしているのか気になった。


移動馬車は順調に進んでいる。
途中で魔物も出てきたが、護衛を兼ねて安く乗っている冒険者の仕事をとることのないように、警戒だけしてはしていた。それでも魔物は護衛の冒険者だけでどうにかできており、ラウール達の出番はなかった。


この世界で旅をしていても、魔物より盗賊の方が厄介だねとサクラと話していると、目的の首都サーシンに到着した。




やっと、久しぶりに、ようやく父様、母様に会える。
そろそろ呼び方も変える年かな?
そう考えていたラウールだった。

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