冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

話し過ぎた冒険者ギルド

宿屋のおかみにはサクラが事情を説明してくれ、ラウールとクロウは一緒の部屋で夜も休むことが出来た。
苦労が説明できる範囲で教えてくれたことは、
「我、魔力をもらえたら口から何も食べなくても大丈夫。」
「我、食べることもできるよ。」
「我、卵の中にいた時からラウールとサクラの魔力を感じていた。」
「我、ラウールもサクラも好き。」
「我、我の能力はまだわからない。」
「我、なんとなくこの世の中のことはわかる。」


そう言って教えてくれた。クロウはなぜこの世のことがわかるのかは説明できなかったが、頭の中には色々な知識があるようだ。そして、空ももちろん飛べるが、部屋の中ではラウールの左肩が定位置になりそうだ。


夕食を食べた後はクロウに魔力を与えると、ラウールも眠りについた。


次の日の朝は、みんなで食堂で食事をとった。クロウには魔力を上げた。
周りには冒険者らしき人もいるが、前世の鴉と同等の大きさのクロウを怖がるものはいなかった。その代わりに、物珍しそうに見たり、声をかけて来る者がいた。


クロウの事を食堂で軽く紹介し、冒険者ギルドに向かった。
もちろんクロウには話しはさせていない。


~~~~~~


冒険者ギルドにつくと珍しく男の人が受付をしていた。
その受付の人の前には誰もいなかったので、ラウールは声をかけた。


「おはようございます。今日は従魔登録をお願いします。」


目の前の男はラウールの周りを見渡してから口を開いた。


「従魔登録はいいが、従魔は外か?」


「いえいえ、この肩に乗っているのが従魔です。」


首を伸ばしラウールの肩を見た男は目を見開いた。


「この鳥が? これが魔物?」


「そうですよ。魔物の卵から産まれたので、魔物ですよ。」


なんとなく納得していない男はラウールに向かってもう一度聞いてきた。


「この鳥が? 魔物の卵から? 魔物の卵はどうやって手に入れた?」


「普通にダンジョンで手に入れましたよ。魔物の卵が出るまで大変でしたけど。」


「そう言えば冒険者プレートを見ていなかったな? 見せてくれ。」


ラウールは冒険者プレートを見せた。


「サクラも出しておこうか? 依頼をそろそろ受けてもいいだろうし。クロウがもう少し成長するまでは、この第三都市に拠点を置こう。」


「いいわよラウール。じゃあ私も。」


そう言ってサクラも冒険者プレートを男に渡した。


「おい! お前らランクがこれか! ん~、それだったらこの鳥も魔物でいいのか?」


さすがにSランクの冒険者が連れてきた魔物を、魔物ではないとは言えないようだ。


「そうですよ。きちんと魔物の卵を手に入れて、孵化させて仲間にしましたから。」


ビックリした表情になった男は、クロウと冒険者プレート、サクラとラウールにと忙しく目を動かしていた。


「このプレートを装置に入れてもいいか?従魔登録をする。それと、討伐の欄を見てもいいか?」


そう言われたラウールとサクラは同意した。
そして目の前の男は装置にプレートを入れた。


「魔物の種類と名前を教えてくれ。それと、両方の冒険者プレートに従魔として登録するか?」


そう聞かれたラウールとサクラは相談し、2人の冒険者プレートに登録してもらった。
目の前の男は従魔登録らしき動作をして、討伐履歴も見れるようにして見た。


「な”っ!! お前らこれは・・・、プレートについてるってことは本当なんだろうな・・・。お前ら何者だ?」


その言葉を聞かれたラウールは、冒険者ギルドの人を信用して軽く説明を始めた。


「僕とサクラで【黒猫】って言うパーティーです。2人ともSランクです。テザン皇国で魔物の被害からちょっと街を守ったら、Sランクになりました。それで、魔物の卵が欲しくてその討伐数です。今日からはクロウの成長を見守りながら、依頼も受けるつもりです。」


・・・・・・
・・・・・・


「ちょっと街を被害からって・・・。魔物の卵が欲しくても、この討伐数って・・・。何年かけたんだ?お前らはまだ若いだろ?」


「若いですけど、そんなに日数はかけていませんよ。魔物の卵の孵化に20日? 魔物の卵を手に入れるまでに1月くらい? もう少ししたら、またダンジョン攻略組のSランク冒険者たちが来るんじゃない?」


・・・・
・・・・


「この数をその日数でって・・・、本当に何者だよ・・・。あと、孵化に20日?魔物の卵の孵化を成功させた秘訣も教えてもらえるのか?」


「教えてもいいですけど、僕たちも聞いた話だけですよ。魔力を卵に込めることだけですから。」


「それは知っている。しかしほとんどの人は失敗するんだ。そしてもっと時間がかかる。そして、孵化した魔物もなつかない。」


「ん~、今回は2人で魔力を込めましたけど、それくらいですね。ただ、僕たちは2人とも魔力はものすごいですけどね。」


「2人でか。他の孵化に成功した人は、かなりの人数で魔力を注いだみたいだ。もしかして、人数が少ない方が孵化した後になつきやすいのか?」


「産まれたクロウは、僕を父、サクラを母と認識していましたよ。」


「ん~、やっぱりそこに秘訣があるか・・・。ありがとう貴重な情報だ。」


「どういたしまして。それで登録は終わりですか?」


「あ~終わりだ。これで従魔として登録された。後は従魔に目印をつけておいてくれ。人が付けたとわかる物なら何でもいい。」


ラウールとサクラは考えた。クロウに何が似合うか。
ラウールは思った。ダンジョンで手に入れたミスリルの腕輪をどこかに着けたらどうか?


サクラは考えた。ダンジョンで手に入れたミスリルの指輪を足にはめることが出来るのではないかと。


ラウールとサクラは目の前の男に自分の案を聞いてみた。


目の前の男はまた驚いていた。
そんなに簡単にミスリル装備を使うなと。
ミスリルは貴重なもので、従魔やペットなどに着けることは聞いたことがないと。


ラウールとサクラは考えた。
今まで手に入れた物で、目立ちすぎず、すぐに周りが従魔とわかる物がなかったかと。


目の前の男にも相談しながら決めた。
【ミスリルの指輪】
結局はサクラの案を採用した。
目の前の男も、盗まれる危険性はあるが、指輪のサイズならわかりにくいから大丈夫かもしれないと。


ラウールはクロウの足に指輪を通した。


「我うれしい!」
目の前に男がいるがクロウが声を出してしまった。


「おい! まだ何か秘密があるのか?」


聞かれてしまったからにはしょうがないと、ラウールは少し説明した。
産まれてすぐに言葉は話せたこと。
ある程度この世界の事を知っていること。
その程度の事を伝えた。


目の前の男は小さな声で、
「まだ従魔にはそんな秘密もあるのか。いい情報が聞けた。」
そう言っていた。


さすがに話し過ぎたと思ったラウールは目の前の男との会話を終えて、依頼票を確認に向かった。

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