冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

勇者召喚が・・・

勇者が召喚されたと言う話を聞かないまま、時間が過ぎていった。


ラウールはその間にキソに会うことに成功した。
キソはラウールを見るなり、サワーに「あの者を捕らえろ!」と言った。ラウールは自分がやつあたりしたことが悪かったと考えていたので、動かずにいた。
サワーはラウールを縛ると、目隠しもしてきた。そして何をされるのか、処刑だけは許してほしいと言おうとしたその時・・・、くすぐられた・・・。
それはもう長時間。
ラウールはくすぐったいのもあり涙目になって謝った。
キソは目隠しを外してくれた。そして顔をみるとキソも泣いていた。キソは悪くないのに泣かせてしまってラウールは謝ったが、キソは優しい人だった。お互いに謝罪合戦となり、最後は2人で大笑いし仲直りした。


ラウールは二度と同じことを繰り返さないと、心とキソに誓った。
そして、少し長くこの街に留まろうと思った。


~~~~~~~


勇者召喚の話が聞こえてこない。


あれから更に時間がたち、ウールとの面談もあった。
キソとも何度か会い、リバーシやチェスで対決もした。カードゲームでは意外にサワーが強かった。森に行き、一緒に野草の採取や肉を手に入れた。無事に学園行事の遠征も終わった。


それでもまだ勇者召喚が成功したと言う噂もない。


~~~~~~


ダンジョンや町の外の依頼も積極的にこなし、サクラがBランクの試験も受けた。


思った以上の時間をこの街で過ごし、サクラがBランクに確定し、もうすぐラウールが16歳になると言う辺りで、『ファンフート・テザンが勇者を召喚した。もうすぐ訓練も終わり皆の前に』と言うお触れが街に出た。


「意外に長かったねサクラ。こんなに待つとは思わなかったよ。結局は上手く隠せてたんだね。」


「本当にね。私なんて依頼をこなしすぎて、思った以上に早くBランクになっちゃったよ。」


「僕のランクにもう少しで追い付かれるよ・・・。」


「それよりも今は勇者ね。何人が召喚されたのかしら?」


「噂もないからね~。1人だけだったら、ある程度は強いと思うけど、この世界にいてもいいって本当に思ってるかな?」


「どうだろう? それでも訓練は受けたみたいだし、勇者にそんな無理も言わないと思うけど・・・。どうしたら会えるかしら?」


「それについては僕はちょっと考えてるんだけど、サクラがいいなら協力してほしい。」


「内容によるけど?」


「サクラの見た目は、完全にこの世界では浮いてるよね?」


「そうね、そのまま日本人顔だから。この街ではもうそんなに気にしている人もいなくなったけどね。」


「だから、危険もあるけど、勇者のお披露目の時に、勇者から見える位置に立って、顔もそのままさらしてほしいんだ。それでサクラが危険になったら、僕が守るから・・・。」


「危険って、私も勇者って思われるってこと?」


「そんな感じ。勇者でなくても、何かの関係があるって思われるでしょ。それは貴族にだけでなくて、街の人にも・・・。」


「そうね・・・。街の人も同じような雰囲気の顔だとね・・・。」
そうサクラは話して、不安そうな表情をした。


「だから、優先するのはサクラだ。もし危険なら、転移ででも他の街まで行って逃げるよ。」


「そうね、もし勇者が不幸なら助けになりたいし、自分も危険な目には極力会いたくないし・・・。」


2人は相談して決めた。
勇者の顔を見ること。
勇者が不幸そうな顔をしていないか確認すること。
いかにも乗り気なら、そのまま姿は見せない事。
顔を見せてから誰も接触してこなければ、こちらからは積極的に動かないこと。
情報を得ること。
これらを行い、いざとなったら全力を出すし、転移も使用することに決めた。


~~~~~~


勇者の情報を徐々に表に出してきていた。
勇者は3人。
勇者は黒髪。
勇者は様々な知識を持っている。
勇者は繁栄をもたらす。
勇者は短時間で戦闘力も飛躍的に伸びた。
勇者は召喚した者に忠誠を誓った。
勇者は敵対する者を許さない。
勇者を得た者が次の教皇に相応しいと。


キソからも貴族情報を得ることができた。
貴族には先にお披露目をしていたとようだ。
【勇者1は男:大きく体格もいい:Aランク冒険者との戦いも互角:20歳位の見た目】
【勇者2は女:160cm:痩せた体格:魔法が得意で大規模魔法を覚えた:20歳位の見た目】
【勇者3は男の子:150cm:中肉中背:目立った特徴はないが教わったことはできる:12歳位の見た目】
勇者1と2は口調こそ丁寧だが、皆を見下しているようだった。勇者3はおどおどしており、気弱な印象を受けた。
お披露目はそろそろだと。
そうキソは聞いた話をまとめてくれた。


それを聞いたラウールとサクラは2人で話し合った。


「サクラはここまでの話でどう思った?」


「ん~、よくわからないな。気弱そうに見えても悪い人もいるし、態度がでかくても、実は不安で強がっている人もいるし。やっぱり私が姿を見せるのがいいかな?」


「そうだよね・・、これくらいの情報だとね・・・。じゃあお披露目を待とうか!」


そう2人は決めた。
そしてキソには良くしてもらっているから、今後事情があり、挨拶が出来ないまま旅立つことがあるかもしれないと伝えた。付け加えて、それでもあとできちんと挨拶には行くことも伝えた。


さあ、後はどうなるかな。
ラウールとサクラは今後の展開に不安を感じていた。

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