冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

サクラの告白

宿の一室に2人。沈黙が流れていた。サクラは部屋に来たものの、一言も発せずにいた。
 沈黙が続き、そろそろラウールが声を出そうとしたとき、サクラが話し出した。


 「ラウール、私が今まで何をしていたのか聞いてくれる?」
 不安げに呟いた。


 「もちろん。聞かせて。サクラがなんで狙われていたのかも気になってたし。」


そこからサクラは話し始めた。


サクラは自分のこれまでの人生を振り返りながらラウールに説明した。


サクラは気づいたら木々に囲まれたところにいた。今までいたところではない景色で戸惑った。しかしこの世界は魔物がいる世界、人の命が軽い世界。このままここにはいてはいけないと思い、聞いていた方向に歩き、人のいる場所を目指した。
 目指した方向には小さな村がある。そこに到着すると、記憶が曖昧と言う話をして村においてもらった。
 幸い優しい村長だったから、村長の家に住まわせてもらった。村長は妻と2人暮らしで、息子が村を離れて生活していると説明してくれた。
サクラは何が自分にできるかわからなかったので、食事の支度や掃除など家事を手伝っていた。
そしてなにかおいしいものを食べさせたいと思い、調味料を見ると、サクラの知るマヨネーズができるだけ物がそろっていた。だから、村長へマヨネーズをつけておかずを食べてもらった。マヨネーズは好評で、大きな街ではあるが、小さな町や村には渡ってこないと言っていた。
サクラは日持ちしないものだしと単純に考えていたが、レシピが秘匿されていたと後で知る。


 次にサクラは洗濯をしているときに、井戸から水を汲んでいた。
するとそこに来た村長の妻が、このポンプがあるから、水を汲むのも楽でいいわ~。感謝ね。と話していたため、もっと楽にできないか話をしてみた。原理が分かれば、もっと楽になる方法を考えられる。村長の妻に、ここをもっと便利にしたらもっと楽になるのでは?と言ってみたが、反応はいまいちだった。後からこれも知ったことだが、ポンプは水を楽に汲めると言ったくらいのもので、原理や作り方はこれもまた秘匿されていたみたいだ。


そうやって色々と不思議なことを言う人だと思われながらも、つい口癖のように『テンプレ』や『二ホン』と言う言葉も言っていたようだ。記憶はあいまいだが、遠くの『二ホン』という所にいたことにしていたからだ。
そうやって過ごす中で、村長の息子が帰ってきた。
 村長の息子は大きな街で学校に行き、国の役所で働いている。その息子に、村長は今までサクラが話していたことを言ったようだ。


 村長の息子が帰りしばらくして、国から来たという人物が村長の家に訪ねてきた。その男は、サクラの身柄を預かると言い出した。この娘は国の為になる。国の為に一生働くんだと。身をささげろと。
そして、共和国の歴史、繁栄をもたらした者の話しを少しし始めた。
その言葉を聞いてサクラは警戒した。
 一生ささげる?そんなの御免だ。サクラはある程度暮らしていける方法を得たら、この村を出るつもりだった。そして、世界を旅してみたいと考えていた。だから、答えをはっきりさせず時間をかけて話をした。そのあと夜になり、すぐに村を逃げ出した。


 夜だったが、村を守る男が村の周りを警戒していた。魔物に攻め込まれによう、毎日誰かが交代で行っている。その男に見つからないよう、回り道をした。


 運よく危険な目に合わず街道にでた。そして明るくなったころ一台の馬車が通った。馬車の周りには武器を持った男や女がいた。ちょっと怖かったけど話しかけてみると、馬車の持ち主も街まで一緒に連れて行ってくれると言う。その先が首都フイエウだった。フイエウにつき、馬車の持ち主にお礼を言い、門まで来ると、親切な門番さんが色々と説明してくれた。ここで何かのギルドに登録し、プレートを持っておくと、定住しない人にとっては身分証明になると。


そこで、真っすぐに冒険者ギルドに向かった。初めての冒険者ギルドで舞い上がってしまったサクラは、僕たちと出会った時の状況になったようだ。迂闊すぎた。まだ平和な世界を引きずっていた。


 冒険者ギルドに登録し、何とか宿に泊まれるようにしないといけないと考えていたところだったから、僕の申し出は嬉しかったようだ。


 心細かった時に親切にしてもらった。サクラを利用する様子もなく、戦いかたや魔法を教えてくれた。生活できるようにしてくれた。友達のようにしてくれた。一緒に行こうと言ってくれた。


 下心は全く感じさせないラウールとのやり取りに、一緒に旅ができる、信頼できると感じた。


そう考えながら、一気に話してくれたサクラは、泣いていた。


それを聞いたラウールは、
 「ありがとう教えてくれて。そんなことがあったなんて・・・。なんて言っていいかわからない。けど、僕は裏切らないよ。その人の人生はその人だけのもの、自由だから。その人の自由を奪うことは嫌いだから・・・。」


・・・・・・・
 ・・・・・・


 しばらくサクラが泣いていた。そして涙が治まってきたとき、サクラは再度語りだした。


 「ラウール・・・。私は、この世界に来る前の人生があるの。前世を持ったまま、この世界に来たの・・・。」
そう告白してきたのだった。

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