冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

黒いローブの人物と三度

ラウール達は時々街道沿いに出る動物を狩り、夜には野営し町に向かい進んでいた。まだ魔物が出て来ることもなく安全に移動できている。野営の時には2人で一緒には休めないので、交代で見張りをしていた。そしてお互いが起きている番になった時に、何か常時発動の結界の魔法を作れないか考えていた。今まではそこまで困っていなかったが、しばらくは2人旅。便利になるに越したことはないと。


 何日か進んでも特に襲われることもなく順調な旅路であった。時々馬車が通るくらいで、盗賊も出てこず少し拍子抜けしていた。また、ラウールは自らの事を道中話しており、転生の事は教えていないものの、この世界に生まれて来てからの事を振り返り、ラウール自身も懐かしんでいた。一方サクラはまだ聞くことが多く、自分が得意なことや好きなことなどは話してくれるものの、今までの生活と言うものを話すのをためらっている様子があった。


 ~~~~~~~~


そうこうして旅を続けているうちに、目的の町が近づいてきた。
 「もうすぐ町だね。町では一晩は宿に泊まろうか?」


 「そうね、たまには柔らかいところで寝たいね。外で寝るのもだいぶ慣れてきたけど。」
とサクラは額の汗を手で拭った。


 「お風呂もあればいいけど、泊れる宿にはあるかな? あったらいいな~。」
とラウールも服の臭いを嗅いだ。


 「ちょっとっ! 私臭う?」
サクラはあせり、自分の服の臭いを嗅ぎながらラウールに聞いた。


 「大丈夫だよ! 御免、誤解させた。たまにはお湯につかりたいなって思って。」


2人がはたから見たらじゃれあっているとき、周囲の雰囲気が変わる。


 「っ! とうとう来たか・・・。そして最悪だ・・・。黒ローブ。」


 「強い人ね?」


 「そう。サクラはここにいて・・・。ちょっと行ってくる。」


 「一緒に行くよ! これから一緒に旅をするのに、いつまでたってもラウールに任せっぱなしはできない!」


 「危険だよ! 僕1人のほうが『それ以上言わない!!』」


 「それ以上言わないで・・・。私たちは仲間、友達・・。パーティーなんだから・・・。」


ラウールはハッとした。そうだ、1人だけで何でもするなら初めから一緒に行動しなければよかったんだと。苦楽を共にするから仲間なんだと。そして・・・、何かあった時に、絶対に守ると。
 「ごめん!そうだね、僕の間違いだった。僕が危ないときはフォローを頼むよ。そしてサクラが危ないときは僕が守るよ。」


 「うん! 一緒に行こう!」


2人は向かっていく。いつもの威圧が発せられた方向へ。


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 「やあ!」
 目の前の黒ローブが軽く手を挙げた。


 「やあって・・。また威圧もくれたくせに。」


 「でも気づいたでしょ♪」


 軽い・・・そして笑った?


 「まあね。それでご用件は?」


 「別れのあいさつにね?」


ラウールは構えた。黒ローブの動きを見えなかったときがあったから。


 「大丈夫。本当に旅の無事を祈って挨拶と、ちょっと手助けもしたことを言っておこうと思って。」


ちょっとよくわからない・・。


 「えーと、サクラを捕まえようとおしている人たちの邪魔をしてあげました。だいぶ数も減ったと思うよ。そして、命令した人にも嫌がらせをしています。これで、他に気を取られていると思うよ。さらに大切なお知らせ。それは・・・・・。僕はフイエウ首相側の人間で~す。」


・・・・・・
 ・・・・・・


「首相は君たちを害する気持ちはないよ。できたらこの国の繁栄を手伝ってほしいみたいだけど。けど、自由を大切にしている人だから。敵対することはないと思うよ、この国に害を及ぼさなければ。」


・・・・・・
 ・・・・・


「えーと黒さん?どういうこと?あなたが襲ってきたことは謝罪されたけど、狙われてるのって?えっ?」


 黒ローブが微笑んだ気がした。
 「えーと、君たちを襲ってるのはブレットンの知事だよ。気を付けてね。ま~僕たちが邪魔をしてるから大丈夫だと思うけど、組織って命令が行き届かなかったり、情報ミスがあるから、襲われる可能性も少しはあるからね。」


ここでサクラが話し出した。
 「見逃してくれるの?」


 「見逃すっていうか、僕たちは敵にはならないよ。敵は知事だよ。」


 「じゃあ、私はこのまま行っていい?」


 「いいよ。ただ挨拶と、僕たちがやっていることを少しは知ってもらって、恩を売りたいだけだし。」


・・・・・


 ラウールはようやく頭が働いてきた。
 「ありがとう。恩を感じておくけど、ここで、首相の手紙に書いていた通り、首相を頼りにしたってことで、お相子で。」


また黒ローブは微笑んだ気配がした。
 「いいね。それでいいよ。伝えておくよ。私はそれを伝えておくよ首相に。じゃあね!もう行くよ。そして次からは黒って呼んでいいよ、気に入ったよ♪」


そういって消えて行った。


ラウールとサクラはキツネにつままれた気分だった。何が何だか?


しかし考えてだけもいられないので先に進んだ。
 町につき、宿に泊まり、風呂はないが夕食を食べたところでサクラが言い出した。
 「これからラウールの部屋に行ってもいい? 話したいことがあるから・・・。」
そうサクラが告げた。

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