冒険者パーティー【黒猫】の気まぐれ

sazae9

サクラと治療院の依頼

今日の僕たちは治療院に向かっている。
 冒険者ギルドで依頼を確認していると、治療院の依頼がいくつか目に入ったからだ。
 『急募 回復魔法のできる方 職員が休めずに困っています。』
 『治療院でのお仕事です。建物を清潔にしていただくお手伝いをしてください。』
 『治療している人の介助ができる方を求めています。』
 『君の依頼はこれだ! 治療院での雑用 誰でもできます。』
たくさん張っている・・・。治療院の依頼の出し方は・・・、独特だ・・。


この中から4人で手分けをして依頼を受けることにした。僕は実際に治療のお手伝いをして、できたらサクラに介助の依頼が回るように冒険者ギルドで交渉した。
この話を聞いた受付のハールさんは、よほど治療院にせかされていたのか、無理を聞いてくれた。
 治療院は冒険者の行きつけ・・・。治療されるところが行きつけって嫌だけど、けがをしやすい商売だから仕方がない。


 ~~~~~~~~~~~


 治療院につき、僕たちは持ち場に分かれた。
 僕はまず実力を見せてほしいと一人のけが人の前に連れて行かれた。
 治療院の院長と言う小柄な男性。白髪頭のクラードと言う人物だ。
ラウールは一室に連れて行かれた。クラードが言うには、この人をどのくらい治せるか見て、任せる範囲を決めるようだ。
 僕は目の前の人を看てみた。


やけどをしていて広範囲。首元で、下手に治すと治療後に引っ張られる感じになる。やけど自体は治っても、生活にやや不便さを感じることになる。
それを見たラウールは皮が引っ張られないように治るイメージをして、一応魔法名を口に出した。
 「ヒール。」
すると目の前の人のやけどは、巻き戻し再生を見ているように、まるでもともとやけどなどしていないよう、きれいな状態になっていた。


・・・・・・


 クラードはその光景を見て声が出ていない。
 何かを言おうとしているようだが、口をパクパクさせて何も聞こえない。


・・・・・
 ・・・・


「素晴らしい! 魔力はまだ残っているか? もし余裕があるのなら、我々が下手に回復魔法をかけないで様子を見ていた人たちがいるのだが、その人たちも治してもらえないだろうか?」
そうクラードはラウールに聞いてきた。


 「魔力はほとんど減っていないですよ。魔法を唱える効率がいいのか、今まで魔力が枯渇したことがないので。」
そうラウールは答えた。


するとクラードは息をのみ、
 「出来たらみんなの治療をお願いしたい・・・。」
そういって深く頭を下げてきた。


 「頭を上げてください・・・。僕にできる事なら協力しますから。ただ・・・、できたらこれからのことは内密にお願いしたいのですが・・・。あまり僕の魔法を知られたくないので・・・。」
そうラウールは真剣なまなざしでクラードに話しかけた。


・・・・・・・


 できる限り内緒にする条件で、様々な人たちを治療してみることになった。さすがに出来ないこともあることを伝えて。
この治療院には、自分たちではきれいに治せないと思う人や、重症で手を出せなかった者たちが泊る設備があるそうだ。僕はサクラを連れて治療に回った。


そこには前世でも重症と思える人たちがたくさんいた。しかし今世の僕は、自分で治すことが出来る力を得た。それは前世では治療不可能な人たちをも完璧に治す方法を。
 僕は精一杯治療した。どうかこの後も幸せに生きてほしいと・・・。生きづらいと思わないように・・・。


 昼食は一応摂り、その後も大勢の人たちに魔法をかけ続けた。そして夕方にはほとんどの重症者は回復した。
あるものは驚き、ある者は泣き、ある者は言葉もなく手を合わせえてきた。
 僕はできるだけのことをした。


・・・・しかし僕が救える者は、目の前の距離にいる者だけだ・・・。
 考えてしまう・・・。みんなが幸せに生きることはできないのかと。無理なことと思っても・・・。


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クラードは感動し、何度も頭を下げてきた。そして治療された人たちにも内緒にするように説得すると言い。


サクラは目の前の出来事に、言葉を失っていた。
 軽いケガの治療を任せてみたが、自分では攻撃魔法ほどうまくできなかった。
 僕は前世で人体を学んでいた。サクラは何が得意なのかはわからないが、治療は僕ほどうまくできないようだ。


しかし、治療魔法をサクラは成功している。
これで1つ、死ににくくなる方法を手に入れたはずだ。
 次は近距離に敵が来た時に反撃できる方法を考えようとラウールは考え始め、頭を切り替えていった。


ただ、目の前の困っている人だけでも救おうと心に決めて・・・。

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