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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜

高見 燈

第4話 自由領土▷▷ケネトスの台地

ーーウルスの洞窟は静かになった。

あの妖精エルフとやらが居なくなったからだ。

トーマスくん……私の茶色の馬が、頭を下げてふんふんと、地面に黒いお鼻をくっつけている。

なにやら匂いでも嗅ぎつけたのか。

「トーマスくん。変なもの食べちゃダメだよ。」

何が落ちてるのかわからない。
私は、トーマスくんの方に近寄った。

ん? なんだかキラッとしたものが見えた。

しゃがむとそれは、地面に落ちていたのだ。

「カルデラさん。これなぁに? “金貨”みたいだけど。」

そう。一枚の“金貨”が落ちていたのだ。
それも表には“剣”。裏側には女神? だろうか。女の人の絵が描いてある。

横顔だ。額に何か……冠みたいのをつけた、髪の長い女の人……。目を閉じて微笑んでいる横顔に見えた。

ちょっとアニメチックな若い女の人だ。外国の女神とかの顔とは違う。

「おお。“落としていきよった”な。妖精エルフのヤツ。」

カルデラさんは身を屈めてそう言った。
見上げるとオレンジっぽい顎のひげを、触っていた。その顔はなんだか嬉しそうだ。

「お金……?」

と、私が言うと飛翠が近寄ってきた。
覗く。私の手元を。

「これでどんだけの“価値”になるんだ?」

と、そう聞いたのだ。

「金貨一枚で“10000コア”だ。」

カルデラさんはそう言った。

「い……一万円!? ウソ〜!? この金貨で!?」

日本で言う“万札”ってこと!?
この一枚の金貨で!?

私はまじまじと、手に持つ金貨を見つめてしまった。そんな大金を落としていってくれるなんて、なんていい人!

違った。いいエルフ!

「一万……。レートがわかんねーから何とも言えねーな。どんだけの価値なんだか。」

と、飛翠は起き上がると腕を組む。

カルデラさんは重そうな鎧を着ていても、なんだか身軽そうだ。
身体を屈めても苦しそうじゃなかったし、今も起き上がってその腕を組む。

この鎧はとても柔軟性があるのだろうか。

「そうじゃな。お主らには色々と教えんといかんな。まあ。この先で色々とわかってくるじゃろ。」

カルデラさんは、そう言うと笑った。
本当に怖そうに見える男の人だけど、こうやって話したり笑っていると、フレンドリーな近所のおじさんみたいだ。

「さて。抜けるぞ。ここにいるとまた“妖精エルフ”が、来よる。ここは奴等の棲み家じゃ。」

カルデラさんは、戦いの間。
端に避けていた馬の方に向かった。

馬も慣れてるんだなぁ。
ちゃんと危険回避してた。

蒼華そうか。コレもお前が持ってろ」

と、飛翠は“白氷石”を、私に預けた。

「え? 飛翠が倒したんだから、飛翠のでしょ? 金貨はトーマスくんのお手柄だから、私ね。」

この男にお金を渡すと、“大変”なのだ。
何に使うかわかったものじゃない!

いつも“エロ系とマンガ”を、ネットチェックしてるの知ってるんだ。私は。

あ。ここにはないのかな? パソコン。

「ああ。金貨もお前が管理しろ。買い物はお前の“特技”だろ。」

飛翠はそう言いながら白馬に向かった。

「節約って言ってくれる?? 飛翠がなんでもバカバカ買うからいけないんだ。」

私はセーラー服のスカートのポケットに、金貨と白氷石をしまった。

これを入れる袋とか欲しいな。

ついでに、ローファーじゃない靴も。
やっぱり歩きにくいよね。この地面とか。

「節約? 貧乏臭いだけだろ。」

飛翠が鼻で笑う。

私はトーマスくんを引き連れ歩く。

「あのね。節約は今や“常識”なんです。わかりますか? いつどうなるかわからないんですよ? 人の人生なんて。」

そう。わからない。
先のことなんて……。人間はいつどうなるかなんて……わからないのだ。

何が起きるかなんて……想像つかないのだ。

飛翠はふと振り返った。

「悪い。“変な事”言ったな。忘れろ。」

そう言うと前を向いた。
歩きだした。

なんだか……ちょっと、申し訳なさそうだったな。しんみりしてたな。

「べつにいいよ。飛翠がいるから」

なんだか、私まで“申し訳なくなってしまった”


▷▷▷

抜けた……。

エルフとやらにも会わなかったし!

なんだかやっと清々しい気分になった。
これで太陽が出ていたらもっとこー……スカッとしたんだろうけど。

紅いフルムーンが出迎えてくれた。

森が目の前に広がっていた。
なんだかとても深そう。
それにしても……明るい。

真っ暗かと思ったけど、森の姿を見る事の出来る月の明かりだ。
これなら懐中電灯とかいらなそう。

森の手前だからかな?

「さて。この“シェーンの森”を抜けるぞ。この森を抜けると、村がある。そこで今夜は泊まる。」

カルデラさんはそう言うと、私をトーマスくんに乗せてくれた。

トーマスくんも身を少し屈めてくれるが、どうにも一人では乗れない。

「ありがと。カルデラさん。」

私はロッドを握りそう言った。

「もうちょっとだ。お腹もすいたろ?」

カルデラさんはそう笑った。

「うん」

確かに……。私達、ここに来てから何にも食べてないよね。宿でも部屋に何も無かったし。

あ。黒崎さん……“ゼクセンさん”か。
あの家でハニーミルクみたいな飲み物を、戴いただけだ。

「飛翠も食べてないの? 部屋行ったよね?」
「あー。悪い。食った。なんかパンみてーの。」

飛翠は白馬にひょい。と、飛び乗った。
この白馬も乱暴な乗り方されても、怒らないんだな。偉い。

「え? なにそれ? なんで?」
「寝てただろ? だから悪い。って言ってる」

パカパカと馬……三頭。
森の中へいざ。かん!

の如く、走り出した。

「わ! トーマスくん! 走るときは走るって言って! お願いだから!」

私は慌てて手綱を掴む。

ブヒ……

と、なんだか笑われた気もしたが、鳴いた。

森ーー、シェーンの森とやらはちゃんと歩道……と言うか、道が開けていた。

周りを木々が囲んでいるけど、私達が走っている所は、短く草刈りされた草地だ。

そこを三頭は駆け抜ける。

「これ……道になってるの? 森ってなんか……道無き道を行く。っていうイメージあるんだけど。」

“始まりの森”と言ってた……私達が、最初に訪れた森では、木々に囲まれていた草むらを歩いた。

でも、ここはこの広い道の両脇を木々が、囲む。そう、まるで道路みたいだ。
真ん中に車線引いたら、簡単な1車線道路になりそうだ。

トラックやバスまで走れそうだ。

それぐらい広い。

「ここは“戦士たちの通り道”。馬が駆け抜ける。その為、こうして森を切り開き道を作ったのだ。」

と、カルデラさんは爽快に黒馬を走らせながら、そう言ったのだ。

馬達は、洞窟で窮屈だったのか……意気揚々としている。この広い道を疾走の如く走っていた。

なので、喋ると声が揺れるし、怒鳴るみたいに大声になってしまう。

「“大軍”でも通れそうだな。」

またもや暴れ馬の発想が、お隣さんから飛び出した。なんでしょうか。この人の頭の中は。

お姫様が乗る馬車とか、牛乳引く荷馬車とか、もっとこう優しいイメージが、飛び出して来ないんですかね?

「通るぞよ。それは。その為の“道”だ。」

えっ!? それって……“戦争”!? とか言わないよね!?

「やっぱりな。」

と、飛翠はなんだか勝ち誇った様な顔をした。

「やっぱり?」

私はーー聞きたくはないが、聞いてみた。

「領土と国。国王。それがいれば“戦争”なんて幾らでも起きるだろ。戦士に兵士……。面白そーじゃねーか。」

いやいや。なにをまた!
嬉しそうな顔をして言う事か!?

あーもう! アンタに似合うのはファンタジーな世界じゃなくて、戦国時代じゃ!

タイムスリップでもしてしまえ!
良きに計らって時代の波にのまれてしまえ!

飛翠ひすいくんは……“勇敢な戦士”になりそうじゃな。」

ハッハッハ!

と、カルデラさんのバカ高い笑い声が響いた。
月夜で明るい森の中に。

私はーー、なんだかとんでもない所に“迷い”こんでしまった気がした。

この“悪い予感”は、後に……本当のことになる。私と飛翠は……のみ込まれることになるのだ。

と言うか、巻き込まれるのだ。
もう少しーー、先の事だけど。この時の私には、想像もついていない。

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